シリーズ 地域ビジネスを「ひらこう。」⑦
札幌駅前にできた地域事業インキュベーション施設『×Station01』から地域創生は生まれる

地域創生NOW VOL.17

写真右より
株式会社CultureStudioTokyo 代表取締役CEO / Founder 田中 勝基氏
jekiソーシャルビジネス・地域創生本部 ソーシャルビジネスデザイナー 藤田 順之
jekiソーシャルビジネス・地域創生本部 地域プロデューサー 小林 素直
jekiソーシャルビジネス・地域創生本部 地域プロデューサー 中島 智史

ジェイアール東日本企画(以下、jeki)では2021年の6月15日に、ソーシャルビジネスの創出を行う拠点、「HOKKAIDO ×Station01 -Social Good Birth Hub– (ホッカイドウ コネクテッドステーションゼロワン ソーシャル グッド バース ハブ)、以下×Station01」をオープンしました。

地域創生の拠点を目指す施設が札幌駅前の好立地に誕生したことで何が起こるのか。立ち上げの中心を担ったjekiソーシャルビジネス・地域創生本部の中島智史と藤田順之、小林素直が、×Station01とパートナーシップを組む旅行・おでかけメディア「RETRIP(リトリップ)」の運営会社、株式会社trippieceの田中勝基代表取締役CEOを迎え、×Station01からはじまる北海道の未来について語りました。

※HOKKAIDOxStation01-SocialGoodBirthHub-:https://xstation.jp/

北海道に必要なスタートアップのコミュニティ

中島:RETRIPさんがいち早く×Station01への入居を決め、パートナーとなった理由をお聞かせください。

田中:いくつかありますが、いちばんの理由は「地域toグローバルを見据えた検証環境を地域に構築していきたい」という私たちの構想をここで実現できると思ったからです。当社はコンシューマー向けには「RETRIP」というメディアを、法人向けにはデジタルマーケティングソリューションを事業にしています。スタートアップですから、これまで経営資源を首都圏に絞ることで合理的に進めてきましたが、観光事業を営むほとんどの方が地域におられます。そういった方のインサイトを正しく掴み、事業の仮説検証を行っていくためには、地域の生の声をもっと吸い上げる必要性を感じていました。加えて、近い将来、インバウンド展開も計画していく中で、必ずしも首都圏を介さないソリューションの提供モデルを構築したいという思惑もありました。

そうした時にjekiさんからお声がけがあり、「地域発のイノベーションエコシステムを創造したい」というビジョンに共感したことも加わって入居を決めました。私が北海道出身だったこともありますし、なにより、新型コロナの影響で当社のワークスタイルが変わったことも大きな後押しになりました。中島さんもまた、このプロジェクトに関わる経緯がユニークですよね。

※RETRIP:https://retrip.jp/

中島:私のほうは、北海道出身でもなく、札幌という街に縁もゆかりもないのですが、この×Station01のプロジェクトがはじまるということで、2021年の2月にjekiに転職してきました。もともと地域創生の仕事に携わっていたことと、×Station01の構想、そして「コロナ禍だからこそ、こうしたチャレンジングなことを行う」というjekiの姿勢に感銘を受けたことで、私もチャレンジしたいと思ったのです。

しかし、いざプロジェクトがはじまると、2月、3月はコンセプトの具現化など、東京と札幌を行き来しながら進められたものの、オープンした後に、どうやって地域に還元していくのか、地域の拠点となるためには、ということを考えた時、一緒になって盛り上げてくださる方が必要だと思ったのです。そして、すぐに浮かんだのがリトリップさんでした。さっそく相談に行きますとご快諾いただいたのです。観光、そしてデジタルに強いリトリップさんが入居することで地元のお客さまにも良いシナジーが生まれると感じています。実際、オープンしてから1か月ほどですが地元・北海道の反応はどうですか。

藤田:jekiのこれまでの事業で関係する自治体や企業が道内に多くありますので、案内させていただいたところ、とても興味を持ってくださいました。実際に足を運んでくださった方もいらして、札幌駅前の立地とデジタルに強い施設であること、そして、本格的なキッチン設備があるということで、観光や食のイベント、お酒の試飲会ができるのではと、期待してくださっています。

小林:私は、札幌の若い人、とくに私と同世代の20代、30代くらいの方たちから、×Station01を活用して、一緒に北海道をもっと盛り上げていきたい、という声をいただいています。地域創生に興味を持っても、どこに行けばよいのかわからないようで、オープンして気づいたのは地域創生に興味を持つ若い方がこんなにも多いのかという驚きです。同時にjekiや道内各地をどんどん巻き込んでいくことで、大きな流れがここから生まれるのではないかと期待は膨らんでいます。

中島:×Station01と札幌の他のコワーキングスペースの違いはどうでしょう。

小林:札幌でもコワーキングスペースは増えているのですが、その多くがフリーランスの方をターゲットに、入居者の交流を促そうとされています。×Station01も交流を図りますが、地域創生という明確なテーマがあるところが違います。地域創生というテーマを持つことで通常のコワーキングスペースのようなフリーランスやビジネスの方だけでなく、北海道の地域創生に関わりたいといった思いを持った方がもっと気軽に、誰でも来ていただけるような場所にしていきたいです。もちろん、地域創生とは関係なくコワーキングスペースを利用する方もいらっしゃいますが、その方たちにとっても設備が整っていることもあり、快適でユニークな施設だと映っているようです。田中さんにお聞きしたいのですが、この×Station01にあるといいなと思う機能はありますか。

田中:「地域発のイノベーションエコシステム」という文脈においては、やはり強固なコミュニティの存在が不可欠だと感じています。私は19歳の時に起業して、数年後には東京に軸足を移したのですが、最も大きな理由はスタートアップコミュニティが未成熟だったことにあります。今はずいぶん変わったと思いますが、コミュニティやエコシステムの発達には、起点となるハブの存在が重要です。jekiさんは、JRグループというブランド力もさることながら、首都圏と地方間を結ぶネットワーク力が強い。また運営チームもネットワーク力が強く、頼りになる方が多くいらっしゃいます。私も先達として×Station01でjekiさんのコミュニティ創造を支援していければと考えています。

観光の未来は中小事業者のDXにかかっている

中島:我々もそうした課題に取り組むため、本州から企業や人を送り込むような動きが重要だと考えています。jekiのソーシャルビジネス・地域創生本部のテーマが「ひらこう」ですから、×Station01をひらかれた場所にして、さまざまな化学反応を起こしていきたいと考えています。札幌側は、どんな可能性を感じていますか。

藤田:コワーキングスペースの機能と、先ほど申し上げたオンラインシステムやキッチンといった強みを活かしてセミナーや貸し切りのイベントを行い、そこからコミュニティを生み出していくことで、×Station01らしさを出していきたいですね。

小林:私のほうは、日本各地でいろいろな事例を持っているjekiのノウハウ、札幌に多いとされるデジタル人材、その両方をうまく合わせて地域のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていき、×Station01を日本全国からの情報が集まる場にしていきたいと思っています。その上で北海道の地域創生の一大拠点となればと考えています。先ほど田中CEOからインキュベーションについて話がでましたが、DXについてはどう考えていらっしゃいますか。

田中:DXについてはSMB(注:スモールビジネス、中小事業者)の意識をもっとグローバルに向けるためにも欠かせないものだと感じています。とりわけ、私たちが関わる日本の地域観光産業は、海外との都市間競争です。グローバル競争はデジタルがスタンダードになってくるため、日本のSMBでもデジタルドリブンな近代的経営の推進は待ったなしだと考えています。今年は、東京五輪で世界から注目され、コロナ禍で、産業全体が大きな変革期を迎える歴史的な時期でもあるため、ここからの1〜2年は、各社DXの舵取り次第なのではと感じています。コロナの波に呑まれるか、あるいは追い風にするか、優勝劣敗がより顕著になるのではないでしょうか。

また、都市レベルで戦っていくには、デジタルを使いこなせる経営層の厚みも重要ですが、この数年デジタルネイティブなミレニアル世代が経営者として台頭してきており、数年後にはスマホネイティブなZ世代も頭角を現わしてくるはずですので、悲観はしていません。中長期で見れば、デジタルを駆使したSMBの力で、日本は観光大国になっていくと確信しています。私も今後の日本の観光産業を盛り上げる一プレイヤーとなれるように努力していくつもりです。

中島:新型コロナの感染拡大はネガティブなことですが、こうしてリモートで取材が行えるのですから、ネガティブな中にも気づきはあります。そう考えると、現在、ワーケーションが増えていますが、長期滞在することで観光の可能性はもっと広がると思うのです。とくに北海道のような豊かな自然を楽しむ場合は天候に左右されますが、長期滞在であれば、日を変えることで楽しめますよね。環境が良ければ仕事もはかどりますから、働き方も含めた提案をRETRIPさんと一緒に発信し、地域とも連携できる仕組みをつくっていきたいと思います。改めて、田中さんよろしくお願いいたします。

田中:こちらこそ(笑)、jekiさんのスピード感や、一朝一夕ではつくれない地域のネットワークといった強いアセットは魅力ですし、私どものコンシューマー向けメディアが連携していけば、おもしろいことができると感じています。今後も連携をしっかり深めながら、さまざまなゼロワンを生み出し、地域創生に貢献できるようにしていきましょう。

中島:地元目線ってよく言いますが、私は外からの目線をもっと活用した方がより良いものが生まれると信じていますので、我々が北海道の方々にどんどん提案していって、地域の皆さんを巻き込みながら、新しいものを生み出していきたいと思っています。本日はありがとうございました。

中島 智史
ソーシャルビジネス・地域創生本部 地域プロデューサー
大学卒業後、大手旅行会社グループの広告会社に入社。金沢勤務、名古屋勤務を経て東京本社で勤務となる。金沢勤務では営業担当として、主に観光分野における誘客プロモーションや地域観光ブランディングのプロデュース等を手掛ける。2021年(株)ジェイアール東日本企画に入社し、札幌営業所の新規事業となる地域事業インキュベーション施設「HOKKAIDO×Station01 -Social Good Birth Hub-」のプロジェクトマネージャーとして立上げを担当。

小林 素直
ソーシャルビジネス・地域創生本部 地域プロデューサー
HOKKAIDO ×Station01 運営マネージャー
札幌のホテル系不動産ベンチャーでマーケティングを担当。2021年jeki入社。
jeki運営の地域事業インキュベーション施設「HOKKAIDO ×Station01 –Social Good Birth Hub-」で運営マネージャーとして北海道の地域創生に従事。

藤田 順之
ソーシャルビジネス・地域創生本部 ソーシャルビジネスデザイナー
大手広告会社で不動産会社や飲料メーカーなどのプロモーションを担当、2020年1月jeki入社。 現在は、北海道の観光振興、地域創生、北海道内交通活性化事業など社会課題の解決に取り組んでいる。

田中 勝基
株式会社CultureStudioTokyo 代表取締役CEO / Founder
1990年生まれ。2009年、当社前身企業を設立し代表取締役就任。DX Platform事業などを展開。
2014年にリリースした旅行おでかけCGMサービス「RETRIP」は2年で月間2,600万ユーザー、2億PVを達成。国内最大規模の旅行おでかけプラットフォームに。
2020年、株式会社trippieceをM&Aで子会社化。同社代表を兼任。

上記ライター藤田 順之
(ソーシャルビジネス開発局 札幌営業所 ソーシャルビジネスデザイナー)の記事

人気アニメをきっかけに、北海道の新たな魅力を伝えるTVアニメ「ゴールデンカムイ」スタンプラリー

エンターテインメント VOL.6

永久保善隆(ソーシャルビジネス開発局 専任部長)

藤田順之(ソーシャルビジネス開発局 札幌営業所 ソーシャルビジネスデザイナー)

向山ひとみ(コンテンツ プロデューサー)

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地域創生NOW

日本各地で様々な地域創生プロジェクトが立ち上がっている昨今。
そのプロジェクトに携わっているエキスパートが、“NOW(今)”の地域創生に必要な視点を語ります。

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