シリーズ 地域ビジネスを「ひらこう。」⑨
「お金の支援だけじゃない」地元銀行だからできる群馬経済の活性化
〜東和銀行×ジェイアール東日本企画 連携協定〜

地域創生NOW VOL.19

写真右:東和銀行 リレーションシップバンキング推進部 お客様応援室長 服部政博氏
写真左: jeki高崎支店 営業第二部 部長代理 伊藤茂夫

地域活性化の事例記事を読むと、その多くが地域に新たな風を吹き込んだ、あるいは特産品を生み出したといった「人」を中心としたストーリーで語られています。しかし、地域を活性化する上で避けては通れないはずの「お金」の話となると、なかなか表に出てこないものです。

2021年6月にジェイアール東日本企画(以下、jeki)は、群馬県前橋市に本店を置く東和銀行と連携協定を結び、「地域や地域事業者、生産者様を笑顔にすること」を合言葉に地域経済を盛り上げる活動をはじめています。地域を支える金融機関はどのようなサポートを行い、地域を元気にしようとしているのでしょうか。jeki高崎支店の伊藤茂夫が、東和銀行リレーションシップバンキング推進部でお客様応援室長を務める服部政博氏を迎えて、地域のこれからについて語りました。

“産官学金”で生んだ「上州 焼きまんじゅうバウム」

伊藤:2021年6月18日、jekiと東和銀行で連携協定を結びましたが、服部さんとは協定を結ぶ前からビジネスマッチングなどで協力しあう間柄でしたね。

服部:そうですね。伊藤さんと初めてお会いしてから10年近くたちます。きっかけは、当行が2012年から地域経済、地域社会の持続的な発展のためにはじめた「TOWAお客様応援活動」でした。その立ち上げ時から伊藤さんをはじめJR東日本グループの方々とご縁をいただき、以来、ずっと協力していただいていました。

現在は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、厳しい環境にある中小企業が増えていることから、これまで以上に地域経済の発展に向けた取り組みを行っていかねばなりません。地域には優れた技術を持つ企業や知られざる特産品がまだまだあります。当行では、そうした地域情報の提供と金融面での支援は行えるのですが、残念なことに、発信するツールやネットワークが不足しています。

そこでjekiさんの持つ企画力や発信力が加わることで地域経済の活性化につながると、連携協定を結ばせていただきました。この連携は、私にとっても新たなスタートになったのですが、同時に伊藤さんと初めて組んだ時のことを思い出しました。

伊藤:最初の案件はこんにゃく農家さん、研究所、化粧品会社さんをつないでこんにゃくに含まれる保湿成分のセラミドをつかった化粧品づくりでしたね。大変でしたが初めてだらけで面白かったです。その後も、商品化には至りませんでしたが鳩の忌避剤も一緒に進めましたし、お酒のプロジェクトでもご一緒しました。

そう考えると、東和銀行さんと組んで生まれた商品は既に結構ありますね。もっぱら私が行うのは、JR東日本グループをはじめとする販路開拓が多かったですけどね。
あとは、当初から東和銀行の商談会に参加させていただいていたことでいろんなご縁が生まれましたね。

服部:弊行のお取引先で構成された東和新生会が行う「ビジネス交流会」には、「TOWAお客様応援活動」が開始された頃からJR東日本グループさんには参加していただいています。現在は、新型コロナの影響で2019年11月に行われた第16回を最後に開催できていないのですが、毎年、お取引先企業200社がブースを出展する活発な商談から、多種多様な商品やサービスを生んでいました。JR東日本グループさんとも先ほどの化粧品だけでなく、ビール醸造所とのコラボなど成功例も多く生まれました。

伊藤:最近だと「上州 焼きまんじゅうバウム」が人気で話題になっていますね。

写真提供:スイートバウム株式会社

服部:バウムクーヘンを群馬県民のソウルフードである焼きまんじゅう味にした「上州 焼きまんじゅうバウム」は、高校生のアイデアで商品づくりを行う、当行と群馬県の共同事業による産官学金連携で誕生した商品です。製造したお取引先企業の熱意で、こだわり抜いた味噌を塗って2度焼き、串にも刺すというユニークさも加味して、ようやく2021年6月に発売開始しました。販路は群馬県内のファミリーマートさんと、伊藤さんたちにつないでいただいた高崎駅構内にある群馬の魅力発信ショップ「群馬いろは」に置いていただけたので、当初想定していた数の10倍くらいの売れ行きになっています。
マスコミも、地元新聞はもとより、NHKや地元テレビ局も取材にきてくださったので、いろんなところに波及効果が表れています。これを機に第2、第3の商品が生まれることを期待しています。今は県内販売のみですが、いずれは県外、とくに首都圏に広げていきたいので、jekiさんのお力を借りながら進めていきたいと考えています。

伊藤:私もいただきましたが、焼きまんじゅうのあまじょっぱい味がよく出ていて、まさに群馬県を感じさせる商品です(笑)。企画した高校生にとっても、自分たちで考えた商品が形になるのですから、やりがいもありますし、故郷への愛着にもつながりますね。東和銀行さんというのは、服部さんがその代表だと思うのですが取引先に親身なんですね。新たな事業を興すにしても、融資する、しないでなく、まずは一緒に知恵を出してやっていきましょう、そういう姿勢です。だから、みな本音で話しますし、こういった商品もうまくいくのではないかと思っています。

服部:ありがとうございます。そういう意味では金融機関の本来の業務でも、コロナ禍の今だからこそ、お客様が本業に専念できる環境づくりをしようと、一緒に年間の資金繰り表を作成しています。そうするとお客様は資金繰りを心配せず、本業に専念できますし、次の融資の時期も明らかになります。同時にお客様の持つ強みや弱みを事業性評価シートにまとめることで、企業価値の向上につなげています。さらに今は、国の施策で大型の補助金がありますから、従来ビジネスの見直しや新事業の構築をjekiさんと一緒に進めていくことが考えられます。

不要だった梅のタネが新事業のタネに

伊藤:東和銀行さんはこれから、地元経済に対しどのような取り組みを行っていきますか。

服部:まずは地域金融機関として、先ほど申し上げたお客様応援活動で企業の基礎体力をサポートしながら、補助金などを利用した新たなチャレンジの後押しをしていこうと考えています。

東和銀行ではコロナ禍を受け、顧客の売上回復や販路確保の支援を目的とした「TOWAお客様応援サイト」を開設

また、現在はSDGsへの取り組みは避けて通れません。大手企業は既にSDGsに注力していますが、中小企業にとっても大手から仕事を受注する場合、SDGsやESG(環境、社会、ガバナンス)を遵守していなければ仕事の受注ができなくなっています。人ごとではありませんから、SDGsにつながるこのお客様応援活動をこれまで以上に推進していこうと考えています。その上で現在、注力しているのはヘルスケアの分野です。

伊藤:例の靴の中敷きであるインソールと梅の話ですね。

服部:そうです。インソールは自分にあうものにするだけで姿勢がよくなり、怪我の防止にもなるとも言われています。群馬県にはインソールを専門に扱う企業があり、今回のオリンピックでもパフォーマンスの向上のために多くのアスリートが使用していました。しかし、非常に高価なものなので、これをもっと安価で誰もが使えるようにしたいと現在、県内のスポーツ強豪校の協力を得て耐久性や機能性の実験を行い、商品化を図っています。さらに、先ほど伊藤さんもおっしゃった梅がそこに加わるのです。知られていませんが群馬県は全国2位の梅の産地なのです。

ただ、梅のタネは不要で、これまではお金を払って処分していました。このタネを利用しようと、梅の持つ消臭効果や除菌効果に着目し、パウダー状にしてインソールに練り込むことになったのです。現在、メーカー、梅の加工業者、そして地元の大学と組んで商品化に向けて進めています。商品化のめどがつきましたら、今度は伊藤さんたちの出番だと考えているのです(笑)。

伊藤:次は販路ということで、宣伝広告、情報発信を我々が後押しするわけですね(笑)。群馬県の地産地消の商品を売り出すことですから、私たちもやりがいがあります。それから、DX(デジタルトランスフォーメーション)も一緒にと言われていますので、まずは、初歩的なものからセミナーを行うことが決まっています。

いずれにせよ、地元経済のためにjekiがこれまで蓄積してきた知見を投入していき、こうした活動のゴールが、誰もがずっと笑顔でいられるような場所づくり、人づくり、信頼関係づくりになればと願い動いています。当然、想いだけではダメで、仲間内だけでもダメ、お金も必要になるわけです。そこを東和銀行さんたちと連携しながらビジネスとして成り立つようにしていければと思っています。
服部さんはどうですか。

服部:私もこの地域で生まれ、育ったので、この地域を盛り上げたい、地域に恩返しがしたいという一心です。そのためにもまだ知られていない技術や商品、例えば食品分野はとくにポテンシャルが高いと感じていますから、積極的に発信して、もっと地元を知ってもらいたいと思っています。そのために、jekiさんの知恵をお借りして地元を盛り上げていきたいと思っています。そもそもお客様である企業に元気になってもらわなければ、銀行も元気になれません。

伊藤:そうですよ(笑)。本日はありがとうございました。

東和銀行

群馬県前橋市に本店を置く第二地方銀行。1917年の設立以降、群馬県、埼玉県を中心に93の店舗網を持つ(2021年9月現在)。「靴底を減らす活動」「雨でも傘をさし続ける銀行」「謙虚さのDNAを忘れない銀行」の3つをモットーに地域経済を支えている。

伊藤 茂夫
jeki高崎支店 営業第二部
JR東日本時代に地域活性化に携わる。2018年5月よりjekiにて、駅からはじまる地域づくり、まちなか飲食店、農業課題などの解決を中心に施策を進める。
飲食店グループ、マルシェ団体、農業団体などの相談役、世話役も務めており、最近では金融機関との連携契約をかわきりに、一般企業の課題解決、行政と企業の調整などにも取り組んでいる。

服部 政博
東和銀行 リレーションシップバンキング推進部 副部長兼お客様応援室 室長
大学卒業後、東和銀行に入行後、江東区の深川支店に配属。その後、本店営業部法人渉外係や熊谷支店などを経て、12年7月より現職。
現在は、ビジネスマッチングや、国や県などの補助金活用を通じて、顧客企業の価値向上、本業支援に取組んでいる。

地域創生NOW

日本各地で様々な地域創生プロジェクトが立ち上がっている昨今。
そのプロジェクトに携わっているエキスパートが、“NOW(今)”の地域創生に必要な視点を語ります。

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