シリーズ  地域ビジネスを「ひらこう。」②
「なぜ、いまjekiは地域創生に力を入れるのか」

地域創生NOW VOL.12

写真右:jeki 常務取締役CDO デジタル本部長 ソーシャルビジネス・地域創生本部長 高橋 敦司
写真左:jeki 執行役員 ソーシャルビジネス・地域創生本部副本部長 藤本 裕之

新型コロナウイルスの感染拡大によって移動が制限され、地域経済復活の原動力とされた観光産業も大きな打撃を受けている。さらに今年は、東日本大震災から10年という節目の年でもあり、地域創生の在り方について改めて考える機会でもある。そうした状況の中で、ジェイアール東日本企画(以下、jeki)は、4月よりソーシャルビジネス部門の組織体制を刷新し、ソーシャルビジネス・地域創生本部として新たな一歩を踏み出した。jekiは、なぜいま地域創生事業を拡大していくのか、その強みやゴールはどこにあるのか。その背景について本部長の高橋敦司と副本部長の藤本裕之に、ソーシャルビジネスプロデュース局長の田邉敬詞が迫る。

地域づくりは人づくり

田邉:4月1日にソーシャルビジネス・地域創生本部となったjekiのソーシャルビジネスは、すでに10年以上の歴史があります。その当初から藤本さんは携わっていらっしゃいますね。

藤本:私は31年前に転職でjekiに入ったのですが、当時からこの会社は地域との信頼関係があると感じていました。しかしJR東日本の観光キャンペーンを通じての観光振興による地域貢献にとどまっていました。その後、SP開発事業局を立ち上げ、ソーシャルビジネスとして初の事業となったのが2009年の愛媛銀行との連携です。

「メイド・イン愛媛」で新たなビジネスマッチングにチャレンジしたいという依頼から、いままでのバイヤーを愛媛に招致しての商談会から、池袋のエキナカでBtoBとBtoCを融合した初のビジネスマッチングを実施することになりました。これがテレビのニュース番組で特集を組まれるなど話題となり、全国の地銀からご相談が殺到して新たな地域ビジネスの可能性を確信させる出来事になったのです。

田邉:東日本大震災も大きな転機でしたね。 

藤本:そうですね。経済産業省の事業で福島の風評被害対策事業を行いましたが、それは福島の事業者の意識を変えることでもありました。事業のいちばんの原動力になったのは、「僕らも福島のために働きたい。でも、働く場所がない」という地元中学生の言葉でした。この事業は2012年から続いており、この時に、いまの我々の根幹である「地域の自立・自走を目指す」伴走型支援が生まれています。そのためには5年、10年と長いスパンで事業を考えなければなりませんが、地方自治体や各省庁のご理解があり今日につながっています。

高橋:私は、2011年の東日本大震災の当時、JR東日本グループの旅行会社の社長を務めていました。当時の東北地方は大変悲惨な状況で、果たしてこれまでどおり送客できるのか、他にできることは無いかと、悶々としておりました。

一方で、国の予算だけでなく、多くの人の想いも含めて復興のエネルギーというか、民間の支援の輪が東北に向けられていい流れが生まれる場にも立ち会うことができました。その後、JR東日本本社で観光や地域を包括的に見るような立場になり、復興や支援に必要な国や自治体の予算をきちんと設計して地域の役に立つことを行うのがJR東日本グループは苦手だな、と感じていまして、もしグループ内で行うならばjekiだろうと考えるようになりました。私自身、仕事を通じて地域の方たちとの関係が生まれ、その期待と要望に応えてきましたが、根本的な問題である人口が減少する街を持続させてほしい、というオーダーには、必ずしも応えられなかったわけです。でも、jekiが地域創生の仕事を積み重ね、ようやくその声に応えられるようになっています。かつて応えられなかった思いを遂げることが、いまの私にとって地域創生の仕事をする原動力になっています。

田邉:組織が本部へと昇格したわけですが、その意図はどのようなところにあるのでしょうか。

高橋:組織改正というのは経営の意思表明です。これからはデジタルだ、地域創生だと言っているのに、その組織が何も変わっていないのは、きちんと意思表示できていないということです。そこで、この1月にデジタル本部を設置し、4月にソーシャルビジネス・地域創生本部を立ち上げました。
この2つの領域は将来のjekiの基幹分野。今後、我々が独自性や他社との差別化を図るときに表現できる唯一無二のものになると、確信しています。意思表明したのですから、組織を変えても変化が何も起こらなければマイナスでしかありません。組織を変えて、「なるほどすごいな」と思ってもらわなければならないのですから短期決戦であり、スタートが大事だと思っています。

その政策は地域の身の丈に合っているのか?

田邊:新たなスタートを切ったわけですが、世界ではSDGsが、日本でも「まち・ひと・しごと創生総合戦略」など大きな流れがあります。地域創生もその文脈に沿って進んでいくのでしょうか。

高橋:大きな流れが我々の事業にも影響するのは当然の話です。ただ、その実行の仕方が大事で、地域創生はそこがうまくいっていないのだと考えています。地域DXひとつとっても、DXだといえば、そのはやり言葉に反応して、市町村や県のいずれもが同じデジタルツールを導入したのに、3年くらい経つと誰も使っていないといった話になるのです。まずはITリテラシーを高めましょう、ウェブサイトを見直して、観光に来られた方をデータで分析しましょうといったレベルで済む地域・自治体がまだまだ多いはず。大きな方針としては合っているが、身の丈に合っていない。そういったことを誰もひもとかないまま、ミスマッチが起こっているのが実態です。

大事なのは、地域・自治体の身の丈に合ったプランニング、具体的な提案を相談しながらできる人です。そこに我々の商機があると思っています。当然、仕事の仕方も変わります。東京ですべてができるという考え方は捨て、地域と近いところで仕事をしていくことになるでしょう。地域に対しては、課題や実情の吸い上げ、インプットの役割を担う一方で、国に対しては施策を浸透させるアウトプットの機能を提供できるはずです。JR東日本グループのネットワーク、サービスというアウトプットもあります。そう考えれば、jekiは唯一無二の存在になり得るのではないでしょうか。

田邊:地域の身の丈に合ったプランニングといった言葉も出ましたが、実際どのような活動を行っているか、具体的な例などありますか。

藤本:例えば、地域課題を踏まえながら独自の産業を生み出していく「経済産業省 地域のちからプロジェクト」という事業があります。国の事業なので、一年ごとに予算がつくのですが、地域の課題解決は長期的な視点に立たなければできません。それは我々が人づくりこそが重要課題だととらえているからで、こうした実情を主催する経済産業省の方に理解していただきスタートしました。

人づくりを行う理由は、地域の人たち自身が未来に向けて動き出さなければならないからに他なりません。自立自走という意味もありますが、自分たちで動けば政策とのミスマッチもないからです。そのなかで、北海道の泊村周辺の岩宇地域は、事業がスタートした当初は進みの遅い地域でした。

しかし、「井戸端会議」という、地域の若い人たちが中心になって集まり夢を語る場所が生まれてからは、この地域を先導する意欲的な人材が出てきて、彼らが地域商社を起こしました。人は人を呼びますから、賛同する人が周囲に集まってきて、事業も地域もいまでは良い方向に進んでいます。業種も違う、立場も違うなか、地域にいま必要なものは何かという議論を常に行うことで、化学反応が起き未来に向かう地域となった好例です。

田邉:最後になりますが、新本部のスタートを切る上でそれぞれ意気込みをお聞かせください。

藤本:地域創生に必要なことは地域で活躍する熱意をもった人づくりです。われわれが全国で1700以上の市町村の自立自走を伴走していくのは無理な話です。ただ、地域で活躍したいと思う人材を育て、そうした方々と思いを一つにして連携していけば、多くの地域での地域創生事業に関わっていけると考えます。そのためにもまずはJR東日本グループと連携したオリジナルのプラットフォームを構築して、他とは異なるjeki地域創生の事業ブランドを創り上げたいと考えています。

高橋:何らかの方法で日本のそれぞれの地域が存続するモデルを設計する人がいなければ、本当にこの国がダメになってしまうという危機感があります。先ほどスタートが大事だと言いましたが、それは、変革に残された時間が少ないからでもあります。今後、10年ほどの間に、jekiが将来の礎を築いたという地域をどれだけ増やせるか、そこにかかっています。我々がその役割を担っているのだ、そうした気概を持って取り組んでいきたいと思います。

上記ライター高橋 敦司
(常務取締役CDO デジタル本部長 ソーシャルビジネス・地域創生本部長)の記事

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