人気アニメをきっかけに、北海道の新たな魅力を伝えるTVアニメ「ゴールデンカムイ」スタンプラリー

エンターテインメント VOL.6

中央右:公益社団法人 北海道観光振興機構 誘客推進本部 国内誘客部 次長 伊藤 真 氏
中央左:株式会社ジェイアール東日本企画 札幌営業所 藤田 順之
左:株式会社ジェイアール東日本企画 コンテンツビジネス局 第二部 向山 ひとみ
右:株式会社ジェイアール東日本企画 ソーシャルビジネス局 専任部長 永久保 善隆

10月から第三期の放映が開始されたTVアニメ「ゴールデンカムイ」。アニメと合わせて話題となっているのが、作品の舞台である北海道を巡るスタンプラリーだ。延べ移動距離2400kmという壮大なスケールで企画されたスタンプラリーの背景や、今年度のコロナ禍に対応した取り組みなどについて、公益社団法人 北海道観光振興機構の伊藤次長と、アニメの製作委員会に参画し、スタンプラリーを企画・運営するjekiソーシャルビジネス開発局、札幌営業所、コンテンツビジネス局のメンバーが語り合った。

人気アニメをきっかけに、北海道の新たな魅力を知っていただく

永久保:人気アニメ「ゴールデンカムイ」の第三期が始まりましたね。明治時代後期の北海道を舞台にした、アイヌの埋蔵金を巡るスペクタクルな物語で、私も大変楽しみにしています。

©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
2020年10月よりTOKYO MX・讀賣テレビ、札幌テレビ、BS11ほかにて放送中!

永久保:北海道と北海道観光振興機構では「北海道はゴールデンカムイを応援しています。」と題したスタンプラリーを実施し、本年度で3回目となりました。まずはこのスタンプラリーの始まった背景についてお話しいただけますか。

伊藤:北海道は大変人気の高い観光地で、特に「雄大な自然」とその恵みを受けた「食」を目的に訪れるという方が多いようです。しかし、多くの方が札幌市とその周辺をご覧になられただけで帰られてしまう。もちろん札幌もいい街ですが、「まだまだ北海道には魅力的なモノや場所がたくさんあるのに」とちょっと残念に感じていたんです。
その1つが、北海道独特の文化や歴史にまつわるものです。もともとアイヌ民族が暮らし、そこに江戸・明治にかけて開拓が始まったわけですが、おそらく皆さんが想像する以上に豊かで奥深い文化があり、負の側面も含めて本州以南とは全く異なる歴史があります。まさにその世界観が「ゴールデンカムイ」でも描かれており、多くの人を惹きつけた要因の1つになったのだと思います。そこで、このアニメを通じて興味を持たれた方にリアルに“物語の舞台”に来ていただき、北海道の様々な魅力に触れてほしいと考えました。

永久保:その手法としてのスタンプラリーなのですね。それにしても、総距離2400kmとは大胆な企画ですが、向山さんはどう思われましたか。

向山:アニメツーリズムでは、市や町など比較的小さなエリアが対象になることが多いですが、「ゴールデンカムイ」は、札幌や小樽、網走、果ては樺太まで、様々な場所を巡りながらストーリーが展開していくので、機構さんの行う壮大なスケール感のスタンプラリーは、作品内容とも合っていて「アリ」だと思いました。また、この作品はバトルやギャグなどの要素もありつつ、明治時代後期の北海道の歴史やアイヌ文化なども丁寧に描いているのが特徴なので、伊藤さんがおっしゃっていた「食」以外の観光資源をPRする・札幌以外の場所にも来ていただくようにするという北海道観光の課題にも、お応えできるのではないかとも思いました。

永久保:観光誘致キャンペーンにモデルコースはつきものですが、それがないのもユニークですよね。

伊藤:そうですね。初めて来られる方を中心にモデルコースのニーズはあると思うのですが、今回は旅をする人が自由に組み立てられるよう、あえて設けませんでした。その代わり、博物館や記念館など北海道の歴史や文化を紹介する施設をスタンプラリーのチェックインポイントとすることで、展示を見たり職員と交流したりする機会を増やし、地域の魅力を知ってもらいたいと考えたのです。興味が湧いたらじっくり見学してもいいし、周辺を散策してもいい。その時々で行程が変わっても、1回で回り終わらなくても、その土地の旅を楽しんでいただければと思いました。

永久保:スタンプラリーといいつつも、スタンプを集めるだけが目的ではないというわけですね。

伊藤:はい、自由に道内を回って楽しみながら、それぞれの土地の魅力を発見していただけると嬉しいですね。また、施設は天候に左右されずに楽しめるので、冬場の観光の拠点としても期待しています。

アニメとリアルの融合から生まれる「交流」が地域を元気にする

永久保:現在進行中の企画も含め、これまで3回にわたってキャンペーンを行ってきましたが、札幌営業所の藤田さんは今回初めての担当ですよね。出身が北海道ですが、どんな印象をもちましたか。

藤田:まさに新発見の連続でした。子どもの頃ならともかく、大人になると北海道の歴史や文化などを知る機会がほとんどありませんでしたから。なので、この企画を担当して改めて地元の良さや知らなかったことを知ることができて、本当に良かったと思います。特に自分の知らなかったエリア…、私は札幌出身なので道東などの歴史や風土も興味深く、改めて知ったアイヌ文化についても、もっと知りたいと興味が湧きました。

伊藤:確かに、北海道の人にとっても、他のエリアを訪れるいいきっかけになっていると思います。チェックインポイントの施設に行き、ARキャラクターを得て、「ゴールデンカムイ」の話をしながら景色を見たり、地場のものを食べたり…。北海道は道内の人にとっても広いですからね(笑)。何度にも分けて全体を回ったり、季節ごとに訪れたり…、3年目になりますが、連続して参加されている方も本当に多いんですよ。

永久保:それは嬉しいですね。参加者からは、どのような反応がありましたか。

藤田:「『ゴールデンカムイ』が好きだ!」という熱い思いが、「『ゴールデンカムイ』の舞台に行きたい!」という気持ちにつながったという方も多数いらっしゃったようです。実際、北海道への旅行は経験されている方が多いのですが、そうした人が「普通なら行かないところに行った」と回答していたのが印象的でした。

伊藤:ぜひとも、今まで気づかなかったことに興味を持っていただき、それが次の興味に繋がって…と、興味の連鎖が起きるようになってほしいですね。こうした観光客の反応は、施設側も実感しているようです。たとえば、旭川の「北鎮記念館」には屯田兵や旧陸軍第七師団の貴重な資料が収められているのですが、若い方、特に女性の来館者が増えたと聞いています。それも「ゴールデンカムイ」で様々な知識を得て来られるので、展示物が持つ“実物”の迫力に感動されてじっくりご覧になるとか。施設の職員も「ゴールデンカムイ」について勉強している人が多いので、双方から話が盛り上がって様々な交流が生まれ、職員にとっても大きな刺激になっているようです。

向山:実は、今回の施策で一番私が「ステキだな」と感じたのは、まさにそこです。SNS上でアニメファン同士がつながり、オフ会などリアルでも交流していく様子は他の作品でもよく見受けられるのですが、アニメファンではない施設の方と、現地を訪れたアニメファンの間で交流が生まれるのは、観光キャンペーンならではの出来事だと思いますね。

永久保:アニメで描かれた世界が博物館にリアルに存在し、それでまたアニメの世界を再認識するという相乗効果が生まれているんですね。

回を重ねるごとに充実を図り、コロナ禍対応ではファンの期待に応える

永久保:キャンペーンは今回が3回目となり、来年の3月まで継続します。3年間の変化や効果、施策としての工夫などについてどのように評価されていますか。

伊藤:参加人数は年々増えています。また「北海道の様々な地域に人を回遊させたい」という目的についても、かなり効果があったと考えています。たとえばスタンプラリーの参加者だけでいえば、観光客の絶対数が多い札幌の北海道博物館と比べて、交通の便があまりよくない夕張にも同じくらいの人が行っており、網走刑務所に至ってはむしろ多いくらいなんです。そんなふうに「ゴールデンカムイ」の世界に触れたいという方が実際に訪れていて、先程お話ししたように地域への刺激を与えていることも、定性的な成果として捉えています。

基本的には連続企画ということで大きなシステム変更はしていませんが、リピーターも楽しめるように施設やスポットの数は回を追うごとに増やしてきました。2020年度については、北は稚内、南は函館を追加して13エリアとなり、さらに北海道初の国立博物館であり、アイヌ文化に関連した展示を行う「ウポポイ」などを増やして29施設に充実させています。

藤田:新しい仕掛けとしては、2020年度はチェックインポイントでARキャラクター26体がゲットできるのに加え、さらにメインキャラクターである杉元とアシパのオリジナルボイスがダウンロードできるようになっています。アニメファンは声優ファンであることも多いので、これはかなり反響がありましたね。また細かいところではアプリの使い方を紹介する動画を作成したり、パンフレットの地図に車での移動時間を入れたり、快適に旅行を楽しんでもらうために試行錯誤しています。

永久保:いろいろと準備してきましたが、2020年度はコロナ禍で予定通りに開催できず残念でした。しかし、協議を重ねた結果、約2カ月遅れの6月スタートとなりました。

伊藤:始まるまでは本当に心配でしたね。ファンの皆さんのスタンプラリーへの期待感は大きく、それに応えるにはどうしたらいいかを考えて、スタンプラリーが始まる前より開催したのが、クイズ形式での「おうちで巡るプチ・ラリー」です。パソコンやスマートフォンでアクセスするとメインキャラクターのARが2体もらえて、さらに各チェックインポイントの施設に関するクイズに答えると壁紙がもらえるというもので、非常にたくさんの方にダウンロードいただいています。家から出られない状況下でも期待をもってお待ちいただこうという気持ちからでしたが、皆さんに喜んでいただけて本当に嬉しかったです。

永久保:クイズで用いた各施設の紹介ページは、実際に行く前の参考になればと思って作成したのですが、施設の方々にも高い評価をいただきました。また開催直前に各施設の方とコロナ対策を相談した際に、「こちらは万全です。ぜひやりましょう」と声をかけていただいたことも嬉しかったですね。

向山:3年を経て、結束がまた強まりましたよね。非常に良い形でチームとしてご一緒できていると思っています。ファンだけでなく、北海道観光振興機構様の仲立ちで地域や施設の方とも良好な関係が築けていますし、作品の世界観を地域・施設に押し付け過ぎず、うまくバランスが取れているのではないかと思っています。

伊藤:ええ、私もそう思います。「ゴールデンカムイ」と北海道という2つの魅力あるコンテンツがお互いの価値を高めあっていますよね。アニメファンが増え、北海道への誘致が増える。アニメがまた面白くなる。そのサイクルを力強く回していくためにも、「良かったね」「ぜひ、また行きたい」と言ってもらえるスタンプラリーにしていきたいと思います。引き続き、皆さんと協力していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

永久保:こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。まだ半年ありますし、まずは「どこでも入手可能なARキャラクターのダウンロード数100万人」を目標としましょうか。引き続き、がんばってまいります。

上記ライター向山 ひとみ
(コンテンツ プロデューサー)の記事

エンターテインメント

jekiが取り組むアニメ・キャラクターコンテンツの開発背景や裏話など、表には見えてこない舞台裏をキーマンへのインタビューを中心に紹介します。

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  • 永久保 善隆
    永久保 善隆 ソーシャルビジネス開発局 専任部長

    一般クライアントや大型商業施設のプロモーションを担当。2012年よりソーシャルビジネス開発局に在籍し、地方の観光誘客プロモーションを多数手がける。 また、地域創世事業の一環として地域産品のアンテナショップを企画・運営。北海道事業としては北海道新幹線開業前プロモーションから4年間継続事業として担当。

  • 藤田 順之
    藤田 順之 ソーシャルビジネス開発局 札幌営業所 ソーシャルビジネスデザイナー

    大手広告会社で不動産会社や飲料メーカーなどのプロモーションを担当、2020年1月jeki入社。 現在は、北海道の観光振興、地域創生、北海道内交通活性化事業など社会課題の解決に取り組んでいる。

  • 向山 ひとみ
    向山 ひとみ コンテンツビジネス局 コンテンツ プロデューサー

    2013年入社。営業局にて人材、消費材、飲料、ゲーム等の幅広い企業のプロモーションを担当。 2017年よりコンテンツビジネス局にて映画・アニメへの事業参画・宣伝等に従事。

6月15日公開 PICK UP 駅消費研究センター VOL.39 について

2021年6月15日公開のPICK UP 駅消費研究センター VOL.39「地域や自然とつながる循環型レストラン「Maruta」(調布市)―社会問題に応える、生産緑地の開発モデルへ」について、6月17日より公開を中止しておりましたが、一部内容を修正のうえ、7月9日に再公開致しました。