映画でリアルな「キングダム」の世界を描ききる。
観客が入っていけるような映画にしないと楽しんでもらえない

エンターテインメント VOL.2

写真左:株式会社集英社 ライツ事業部 ライツ企画課 副課長 森 亮介氏
写真左:株式会社集英社 ライツ事業部 ライツ企画課 副課長 森 亮介氏
写真右:ジェイアール東日本企画(jeki) コンテンツビジネス局 コンテンツ第二部 部長代理 鈴木 寿広

累計発行部数3,800万部を記録し、世代を超えて多くのファンを持つ漫画「キングダム」。実写化不可能ともいわれたこの作品がついに実写映画化され、いよいよ4月19日に公開の日を迎えます。
jekiは、この映画「キングダム」製作委員会に参画。多くのファンから期待を受けている本作品を盛り上げるべく、さまざまな企画を行っていく予定です。今回は「キングダム」の原作元であり、また映画の主幹事でもある株式会社集英社ライツ事業部の森亮介氏に、jekiコンテンツビジネス局コンテンツ第二部の鈴木寿広が、原作の持つ魅力や、映画化への思いについてお話を伺いました。

連載10周年記念PVで実写映画化への思いが強まる

鈴木:このような映画を製作する場合、中心となる幹事会社はテレビ局だったり、配給会社だったりするのが通常ですが、この「キングダム」では、集英社さんは原作の立場だけでなく、映画の幹事会社ということで、大変重要な立場でもいらっしゃいます。私自身も「キングダム」の一ファンとして、映像化はすごく期待していたのですが、話の壮大さではNHKの大河ドラマくらい、1年かけてやるくらいのものになるだろうと思っていました。それが今回映画、しかも実写でやろうとお決めになった経緯についてお聞かせいただけますか。

森:そうですね、決めたというより、個人的な感覚では“できてしまった”というか、そんな感じに近いですね(笑)。弊社で決めてできるようなプロジェクトではありません。さまざまな方の力が積み重なって実現しました。
原作の舞台が古代中国ですし、大軍勢の合戦もあり、巨大な城が登場するなど、実写映画化するのであれば、非常に大きな規模のものになるだろうと予想していました。それに2006年に連載がスタートして今年で13年になりますし、非常に長い話になっていましたので、そういった部分も高いハードルになっていました。

ただ、原作の連載10周年の時に、弊社の宣伝施策として動画を作らせていただいたのですが、その時に非常に大きな反響がありまして、マンガを宣伝するためのPVだったんですけど「ついに実写映画化か!?」と多くの方に思われたんです。こうした反響をいただくと、我々としてもこれはPVではなく、きちんと映画にしたいなという思いが非常に強くなりました。

森:映画化実現に向けて製作委員会を組み立てていくなかで、原作と併せての旗振り役として、弊社が主幹事に立たせていただくことになりました。

女性でも楽しめる作品。映画をきっかけに幅広い世代にも原作に触れてほしい

鈴木:ここまでの作品となると、それぞれの「キングダム」への思い入れがあると思います。実写化にあたって、原作ファンの方々の反応はいかがでしたか。

森:昨年、映画化の発表をした際は、期待する声もあれば、大丈夫かなという声も正直ありました。ただ、弊社もいろいろな原作を映像化していますが、その時には必ず出る声ですので、そこは覚悟の上でした。良いものをつくる、原作ファンの方々も納得するものをつくって観てもらう、ただそれだけの思いでした。2月に予告編が流れ始めて、だんだんと「いいんじゃない?」という声が強くなってきたので、自信を持って公開できます!

鈴木:一足先に試写を観させていただいたのですが、スケールの大きい「キングダム」の世界観を本当にそのまま実写化していて、すごくよくできているなと思いました。
集英社さんとしては今後、この「キングダム」をどのようにプロモーションしていきたいとお考えですか。

森:「キングダム」は『週刊ヤングジャンプ』という青年マンガ誌に連載されている作品なので、やはり20代~40代の男性ファンが多いんですね。でも女性が読んでもおもしろい、楽しんでもらえる作品だと思いますし、中学生や高校生でも楽しめる作品です。そうした層を意識して、まだ「キングダム」のおもしろさに触れていただいてない方々に魅力を伝えていきたいですね。

今回、実写映画になって全国公開され、大きな話題になると思います。当然原作を知らない方や女性、若い方も関心を持っていただけ、観に来ていただけるでしょうし、さらには中国の歴史という題材がフックとなって、もっと上の年齢層の方も観ていただけるのではないか。そういう方々に映画がきっかけとなって、原作のコミックスにも触れていただきたいです。

原作の忠実な再現ではなく、おもしろさ、ファンに響いている部分を大切にしてもらう

鈴木:森さんのいらっしゃるライツ事業部は主に版権管理を行っている部署ですが、原作コミックスを実写映画化されるにあたって、集英社として、またライツ事業部として意識されていることはなんでしょうか。

森:弊社は先生方から作品をお預かりしている身ですし、先生方に良い作品を弊社で描いていただくことが目標でもあるので、製作側にとにかく原作を大切にしていただくことを意識しています。
ただ、あくまで「大切にしていただく」のであって、「原作通りにしてもらう」ということではないんです。漫画から実写やアニメにする際、メディアが違うので、やはり変えていかなきゃいけないところが出てくる。必ずしもお客様のターゲットも一致するとは限りません。そういったことは重々承知しています。ですから、忠実な原作再現という意味ではなく、原作の持っている芯、おもしろさやファンに響いているところ、それは「小さな一コマだけど、これは捨てちゃダメ」みたいなことだったりもするのですが、そういったところをきちんと大切にしていただくことを、常に製作側に求めています。バランスがなかなか難しいのですが。

鈴木:映像で観せることも大事ですが、たしかに原作のファンの方を失うようなことはしてはいけないですしね。

森:例えば、「ここに先生のこだわりがあるんですよ」とか、「原作ファンにはこういったところが響いてるんですよ」とか、製作側にそういう材料をお渡ししていく。それはたぶん先生と読者に触れている原作元である弊社にしかできない役割なんです。

一方で、原作元・集英社の人間ですから先生方に寄り添うのは当たり前なんですけど、皆さま方と一緒にものをつくってもいますので、そちらの意見に寄り添っていく必要もあります。そのための相談を編集部にしますし、場合によっては先生に「このプロジェクトの成功のためにはこういうことをさせて欲しいんです、していただきたいんです」とお願いに行くこともあります。

鈴木:『キングダム』はコミックスの巻数も非常に多いので、最初にこのお話を聞いた時に、映画ではどこまでやるんだろうとも思いました。

森:最初からやりたい、という思いはありました。切り取るようなつくりにすると、つじつまの合わないこともありますし、真ん中だけ描いても、キャラクターが生きないんじゃないかと。なにより主人公・信の原点が1巻にありますから、登場人物に感情移入できて一番わかりやすいということでは、やはり最初からが良いです。
それに大ヒットさせて、次もやりましょう!という続編への欲もあったり(笑)。

キーワードは「夢を持つことの大切さ」。その大事さに気付かされるのでは

鈴木:今回の映画化にあたっては製作側だけでなく、原作の原先生も思いを込めてつくられていらっしゃいますよね。森さんご自身はこの映画化に際してどんな思いを込められたんでしょうか。

森:本物をつくるということですね。
古代中国が舞台でもありますし、決して身近な世界ではありません。だからこそリアルな世界が描かれないと、おもしろさも伝わらない。画だけでなく、キャラクターも物語も含めてしっかりと「キングダム」の世界へ皆さんが入っていけるように描ききらないと楽しんでもらえないのではないか。これはプロデューサー陣が皆、同じように考えていたと思います。

森:また、この作品は「夢を持つことの大切さ」ということがキーワードになっています。
今は“世の中バラ色”みたいな世界ともいえないですし、先行きに対して日々思うところがいろいろある中で、逆にこういったシンプルなところに立ち返るというか、強さを感じるのは大切かなと思うんです。
「キングダム」に登場する主要な少年たちは何も持っていない、持っているのは夢だけ。その夢に向かってまっすぐに行くという、ちょっと気恥ずかしいと感じられてしまうかもしれませんが、むしろそれが大事なんだということに、気付かされるのではないかと思います。

鈴木:おっしゃるように、「キングダム」は一つの信念を持って突き進む話なので、メッセージ性が強いですよね。そういうところで企業の経営層の方も愛読書にしているとか。

森:組織の話でもあるからでしょうか。主人公の信がたった1人だったところから仲間が増え、信の成長とともに彼の飛信隊というチームも強くなっていく。ライバルや敵にも同じようにチームがあり、そうした組織同士がぶつかりあって勝っていく。そういうところが会社経営者に響くところがあるのかもしれませんね。
それから言葉の魅力もでしょうか。信が飛信隊を鼓舞させる言葉や、嬴政(秦の国王)が民衆に向かって語る言葉などに、「これは使える!」ってものがあるのでは(笑)。

作者の原先生も脚本に参加し、映画ならではのアレンジも

鈴木:先ほど、原作を大切にしているけれども変えないといけないこともある、というお話がありましたが、今回の映画でも変えた部分があったんでしょうか。

森:いくつかありますが、一番大きなところだと、王宮内での決戦で、信が戦う敵の順番と設定を撮影の都合で変えています。
映画での信は、ランカイ(言葉が話せない異形の巨人)、左慈(元将軍の剣の達人)という順番で戦います。原作では逆で、左慈の設定も違います。

森:「キングダム」の魅力の一つに言葉があるという話をしましたが、左慈を最後にすることで、最強の敵との戦いで、剣だけでなく、お互いの信念を言葉でぶつけ合う、心情をたたきつけ合うことができるようになりました。また左慈の設定が原作の「武人」から「元将軍」に変わったことで、信の夢である「将軍」だった男が夢をバカにする敵として信と対峙することになり、ドラマ性が高まると共に、映画に夢という軸がより貫かれることになりました。
脚本を1ページ目から精査した最後の最後の脚本会議があったのですが、この入れ替え部分も、その場で原先生にアイデアやセリフをいただき、作っていきました。その脚本会議は、弊社の会議室でほぼ12時間ぶっ通しでした。

鈴木:原作者がそこまで関わられるというのは、なかなかないですね。

森:先生方は原稿執筆でお忙しいですから、珍しいかもしれませんね。今回は、先生にご自身の原作が映画になるにあたってしっかり関わりたいというご意思がありました。これも、原作元として映像化に関わる時に意識することなんですけど、先生のご希望はできるだけかなえたい。ですので、ご参加いただくようお願いしました。なにより、先生に加わっていただけること以上に、この映画にとって良いことはありませんから!

鈴木:「キングダム」は単にバトルの話ではなく、夢を持つ人間が人生をかけて戦う壮大なストーリーというのが大変魅力でもあります。今回お話を伺って、森さんを含め、原先生や制作陣の思いがものすごく詰まっている、とても熱い映画になっているなと感じました。
我々も今回、その一端に携わらせていただき、この先さらにシリーズとして続くためにも、ぜひ多くの方に観ていただきたいと思います。
本日はありがとうございました。

『キングダム』2019年4月19日(金)全国東宝系にてロードショー

これは、天下の大将軍を目指す戦災孤児の少年と
後に始皇帝と呼ばれる若き王の途方もなき戦いの物語――

紀元前、中国。時代は春秋戦国時代。
西方の国・秦で、戦災孤児として暮らしていたふたりの少年・信と漂の夢は、
日々鍛錬を積み、いつか戦で武功を立てて天下の大将軍になること。
そんなふたりにある転機が訪れる。
王宮に仕える大臣・昌文君の目に留まった漂が王宮に召し上げられたのだ。
だがほどなくして王宮の勢力争いに巻き込まれ大けがを負った漂が、命からがら故郷へと戻ってくる。
そして漂から託された地図を頼りに訪れた村で信は、漂と瓜二つの少年嬴政と出会う。
この少年こそ秦王嬴政―――後の始皇帝であった。

週刊ヤングジャンプ人気NO.1を誇る大人気コミックスにして、その壮大な世界観から“実写化不可能”と言われてきた「キングダム」が、豪華なキャスト陣と実力派の制作陣、原作者の全面協力によりついに実写化!!元号が変わりまさに「時代が動く」この春に、平成最後の歴史超大作エンターテインメントが誕生します!


Ⓒ原泰久/集英社
Ⓒ2019映画「キングダム」製作委員会


<作品概要>


公開日:2019年4月19日(金)
原作:原泰久 『キングダム』 (集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
監督:佐藤信介 『GANTZ』(2011) 『アイアムアヒーロー』(2016)
脚本:黒岩勉 佐藤信介 原泰久
出演:山﨑賢人 吉沢亮 長澤まさみ 橋本環奈 本郷奏多
満島真之介 高嶋政宏 要潤 大沢たかお 他

エンターテインメント

jekiが取り組むコンテンツビジネスの開発背景や裏話など、表には見えてこない舞台裏をキーマンへのインタビューを中心に紹介します。

>記事一覧はこちら

>記事一覧はこちら