イマドキファミリー研究所では、約10年にわたって子育て家族についてさまざまな調査研究を行ってきました。今回は総務省が行っている「労働力調査」より、この10年間における共働きママの就業状況の変化に着目してみました。
※なお、イマドキファミリー研究所では、育児・介護休業法による短時間勤務制度を利用している雇用者も含めて、女性の場合は週30時間以上の勤務者をフルタイム勤務、30時間未満勤務者をパートタイム勤務と定義しています。
末子17歳以下の世帯では、妻がフルタイムの世帯が一番多い
夫婦と子供(末子17歳以下)からなる世帯の妻の就業状況の内訳は、2018年~2021年ころまでは、妻が専業主婦、パートタイム勤務、フルタイム勤務の構成比が約3割ずつでしたが、2019年にフルタイム勤務が専業主婦世帯を抜き、2020年にはパートタイム世帯も上回り、最多となりました。2022年においてはフルタイムが専業主婦を8pt以上も上回り、さらに増加傾向です。
2013年と比較すると、この10年間でフルタイムの共働き世帯が8.4ptも増加していることが分かります。対して専業主婦世帯は15.5ptの減少でした。
末子3歳以下の世帯では、妻が専業主婦の世帯が一番多いが、 減少率大
さて、より小さい子供がいる世帯に絞った場合はどうでしょう。結果は、2022年においてもフルタイム・パートタイムよりも、専業主婦が多く、構成比は34.0%となりました。ただし、この10年間で55.5%から21.5ptも減少しているというのは、驚きです。
フルタイムは8.0ptの増加となりますが、注目したいのは育休を含む休業者の増加です。全体の約2割近くが休業者であり、それは育児休業を取得できる雇用者の数が急増しているからではないかと考えます。
家事は時短化、細切れ化が当たり前の時代。
“誰でもいつでもやれる家事“という視点が商品開発時に求められる。
いわゆる「年収の壁(106万円の壁・130万円の壁)※」問題の解消が話題になっています。今回は、「週1時間~29時間」のパートタイム勤務の割合についてもご紹介しましたが、年収106万円の壁や130万円の壁が無くなると、今までそのボーダーラインの中で勤務するように調整していた人たちも、勤務時間が長くなっていくと予想されます。それに伴いより多くの人にとって、家事の時短ニーズは高まってくるはずです。
また、イマドキファミリー研究所では妻がフルタイム勤務の夫の家事・育児実施率が比較的高いことをご紹介してきましたが、妻がフルタイムの共働き家庭に限らず、妻がパートタイムの夫にも求められてくるでしょう。そうなった場合、いかに家事に慣れていない夫であっても分担してシームレスに家事が行えるということがカギになってきます。家事用品も、「妻一人が時短で乗り切る」ではなく「夫や家族全体でスムーズに分担できる家事」という視点がより重視されてくると考えます。
※「年収の壁(106万円の壁・130万円の壁)」とは、会社員の配偶者など被扶養者となっている人が、パートやアルバイトで働いて一定の収入額を超えると社会保険料の負担が発生し、結果として手取りの収入が減少してしまうという年収のボーダーラインのこと。
<備考>
フルタイム:夫が就業者で妻がフルタイム勤務(週30時間以上)の世帯
パートタイム:夫が就業者で妻がパートタイム勤務(週1~29時間)の世帯
休業(育休等):夫が就業者で妻が休業中(育休等)の世帯
雇用者以外の就業:夫が就業者で妻が雇用者以外の就業者(農林業・自営・家族従業者)である世帯
専業主婦:夫が就業者で妻が非就業(失業者・非労働力人口)の世帯
夫が未就業者:夫が非就業者(失業者・非労働力人口)の世帯
高野 裕美 イマドキファミリー研究所リーダー/エグゼクティブ ストラテジック ディレクター
調査会社やインターネットビジネス企業でのマーケティング業務を経て、2008年jeki入社。JRのエキナカや商品などのコンセプト開発等に従事した後、2016年より現職。現在は商業施設の顧客データ分析や戦略立案などを中心に、食品メーカーや、子育て家族をターゲットとする企業のプランニング業務に取り組む。イマドキファミリー研究プロジェクト プロジェクトリーダー。