電車の中のテレビ局『TRAIN TV』、4月1日開局
自社で番組制作を行うjekiの試みとは?

jekiが描く交通広告の未来 VOL.16

(写真左より)
jekiコミュニケーション・プランニング局プランニング第四部長 兼 交通媒体局 TRAIN TV事業部ブランドマネージャー 中里 栄悠
jeki交通媒体局 TRAIN TV事業部長 兼 メディアソリューション推進センター プラットフォーム開発部 佐藤 雄太
jeki交通媒体局 TRAIN TV事業部 兼 メディアソリューション推進センター プラットフォーム開発部 中村 真

ジェイアール東日本企画は2024年4月1日、「TRAIN TV(トレインティーヴィー)」を開局。これは首都圏JR主要10路線とゆりかもめの車両サイネージ約5万面を対象とする新たな番組配信プラットフォームだ。「TRAIN TV」登場による、車内広告の価値や今後の展望について、jeki TRAIN TV事業部のメンバーに話を聞いた。

※本稿は、「宣伝会議」2024年5月号に掲載の原稿を、一部加筆修正したものです。

OOHの弱点「コンテンツ」を増強
電車だけのオリジナル番組を提供

ジェイアール東日本企画の推計によると、首都圏の生活者は生涯で約1万時間以上を電車の中で過ごしている。コロナ禍で敬遠された時期もあったが、通勤・通学やレジャーにと、電車は公共交通機関の要として絶対的な地位を築いている。
それだけ身近な「電車に乗っている時間」に着目したのが“電車の中のテレビ局“として4月に開局する「TRAIN TV」だ。ドア上や窓上部分など車内デジタルサイネージを介し、多様な番組コンテンツを発信する。jeki交通媒体局TRAIN TV事業部の中村真は、「これまでトレインチャンネルやまど上チャンネル、サイドチャンネルとして展開してきたJR首都圏約5万面のデジタルサイネージを統合し、WebやSNSと連携した総合的な番組配信プラットフォームを構築します」と述べる。

最大の変更点はそこで流されるコンテンツ。TRAIN TVでは編成を大幅に見直し、全体尺の6割強を番組コンテンツに充てる。「いまだけ ここだけ 電車だけ」をスローガンに、オリジナル番組を配信、思わず視聴してしまう空間をつくり出す。
「メディアによるリーチに質が求められる中で、OOHの弱点だったコンテンツを大幅に増強した。スマホの普及で場所や時間に関係なくコンテンツに触れられるようになったが、だからこそ『電車でしか視聴できない』限定性はTRAIN TVならではの売りになるのでは」(中村)。

目指すは「令和の街頭テレビ」
若年層の貴重なタッチポイントへ

ではTRAIN TVが提供する番組はどのようなものか。TRAIN TVブランドマネージャーの中里栄悠は、「『発見』と『ときめき』をキーワードに、人気芸人を起用したお笑いやグルメ、情報番組やドキュメンタリーまで、バラエティ豊かな番組を用意しています」と語る。テレビの番組制作に精通するパートナーとの協力体制のもと、「テレビライク、テレビクオリティ」の番組を制作するという。TRAIN TVはその公共性から老若男女すべてをオーディエンスとして想定しているが、中でも若者世代は特に意識している。メディアが若者世代を捕捉することが難しくなった昨今、通学や通勤で多くの若者が1日2回利用する電車特有の強みを生かす狙いだ。

「若年層とOOHとの相性が良いことは前から言われていた。問題は彼らを振り向かせるコンテンツがなかったこと。そこで若年層を中心に幅広い層から支持を受けるアットコスメやTikTokなどのパートナーともコラボして番組を制作しています。また、スマホによるデジマで視聴前後をしっかりつなぎ、アテンションと口コミ拡散を同時に狙っていきます」(中村)。
「TRAIN TVは『ひとつの動画を皆で見る』という同時視聴体験を強力に生み出せるメディア。視聴後に学校や会社に行き、『今日のアレ見た?』と話題にしていただけたら良いなと。いわば『令和の街頭テレビ』のような存在になれたらいいですね」(中里)。

PDCAを回しながら全国展開も視野

「コロナ前の水準に戻りつつあるOOHは、TRAIN TVを通じて新時代を迎える。これまで出稿を控えていた広告主さまに、これを機に改めてご検討いただければ」と交通媒体局TRAIN TV事業部長の佐藤雄太は力強く語る。「私たちがはじめに確認したのは我々の顧客は誰か、ということです。他のメディアは生活者と即答するでしょうが、OOHは必ずしもそうではないことに違和感があった。今回のTRAIN TVはオーディエンスファーストを徹底し、真のコミュニケーションメディアに生まれ変わる。電車という公共性や、音が出せないことなど、テレビとは勝手が違う部分もあるが、むしろそれを個性にして生活者に愛されるメディアを目指していきたい」(佐藤)。
首都圏でスタートするTRAIN TV。既に彼らはその先を見据えている。
「TRAIN TVは、OOHの中でも特殊なポジションにある車内サイネージの生存戦略だと考えています。私たちと同じ課題感を持つ鉄道事業社さまと是非意見交換をさせていただきたいです。ネットワーク化なども一緒に考えられたらと思っています」(中里)。
「TRAIN TVは4月1日に開局し、生活者、広告主さま、広告会社さまの声に耳を傾け、クール単位でPDCAを回していきます。番組改編はもちろん、これまでのOOHでは考えられなかった広告商品も生み出したい。大きく生まれ変わるこのメディアに、期待と同時に意見を寄せていただけたらと思います」(佐藤)。

中里 栄悠
jekiコミュニケーション・プランニング局プランニング第四部長 兼 交通媒体局 TRAIN TV事業部ブランドマネージャー
2004年jeki入社。営業局、駅消費研究センター、アカウントプロデュース局を経て、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。シニア・ストラテジック・プランナーとして、メーカー、サービス、小売など幅広い企業のコミュニケーション戦略立案に携わる。2023年よりTRAIN TV事業部を兼務、TRAIN TV事業の立ち上げに携わる。

佐藤 雄太
jeki交通媒体局 TRAIN TV事業部長 兼 メディアソリューション推進センター プラットフォーム開発部
2002年jeki入社。営業局、メディア局(テレビ局担・業推)を経て、2015年より交通媒体局にて主に駅媒体開発やデータ活用ビジネス等に従事。2023年よりMASTRUMプラットフォームの開発、TRAIN TV事業の立ち上げに携わる。

中村 真
jeki交通媒体局 TRAIN TV事業部 兼 メディアソリューション推進センター プラットフォーム開発部
2013年jeki入社。営業局を経て、2018年より交通媒体局に所属。2023年よりMASTRUMプラットフォームの開発、TRAIN TV事業の立ち上げに携わる。

上記ライター中里 栄悠
(Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー/TRAIN TV ブランドマネージャー)の記事

ポストコロナ時代のOOH戦略 〜サントリーのOOH展開事例とjeki×NRI共同研究〜 ポストコロナ時代の「トリプルペイドメディア戦略」

jeki × 宣伝会議 共同取材シリーズ VOL.20

中里栄悠(Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー/TRAIN TV ブランドマネージャー)

ポストコロナ時代のOOH戦略〜サントリーのOOH展開事例とjeki×NRI共同研究〜ポストコロナ時代の「トリプルペイドメディア戦略」

jekiが描く交通広告の未来

生活者の行動やメディア環境が激変するなか、jekiが描く交通広告の未来とは。調査で見えてきた交通広告の今や、新たな価値創出の取り組みを紹介します。

>記事一覧はこちら

>記事一覧はこちら