
新年あけましておめでとうございます。
移動の視点から生活者を研究するMove Design Labの活動に今年もどうぞご期待ください。
2023年は世の中がウィズコロナへ向かうスピードをさらに加速させていく年になると考えられますが、そのような年の生活者の移動はどうなっていくのでしょうか。
昨年末のアンケート調査の結果から、今年の移動を占います。
昨年のお出かけと、今年のお出かけ
まず、2022年の移動を振り返ります。全国の生活者に、2022年にお出かけが思うようにできたか尋ねてみたところ、4割は「お出かけができなかった」、3割は「どちらともいえない」と回答されました。
振り返れば昨年は世界的な情勢の悪化や、物価高騰など社会の変化がとても大きかった年でしたが、移動という面で言えばやはり新型コロナウイルスの影響が少なくなかった一年だったと言えます。その結果、多くの人にとって2022年のお出かけは依然フラストレーションあるものだったのではないかと推察します。
しかしその傾向は世代間でやや異なります。18~29歳から30代までの若い層では「(まあ)お出かけできた」が4割と高く、「(あまり)お出かけできなかった」と同水準いることが分かります。2022年の若者のお出かけ事情が上の世代のそれとはやや異なり、比較的ポジティブだったものと推測されます。この傾向は、昨年の私たちのあらゆる研究活動で一貫して見られた傾向でした。

さて本題です。今年のお出かけについてきいたものが次のグラフです。
2023年のお出かけが「活発になると思う」と回答したのは6.4%。「やや活発になると思う」の21.9%と合わせて生活者の3割近くは、今年、外出を活性化させる意欲があることが分かります。このスコアがネガを上回っていることから、移動にポジティブな心境の人のほうが多数派であることが読み取れます。もっとも、ボリューム層は5割を占める「変わらないと思う」と回答した層。世の中の様子を見ながら外出行動を取捨選択していくと予想されるこの層が半数を占めているということは、2023年の移動がポジにもネガにも反転し得る可能性を示唆しているものと言えます。
世代別に見ると18~29歳のポジ比率が抜きん出て高く、3分の1は今年更に移動を活性化させていくものと思われます。ただし他の世代と比べネガ比率も高いことから、若年世代は移動する者としない者とで大きな分断が起きているものと推察されます。
加えて注目したいのはシニア層です。60代と70代はポジティブとネガティブの差が他の世代よりも大きくなっていました。このことから2023年はシニア層においても外出に対するネガな意識がポジに徐々に転換されていくことが予想され、コロナで大きく萎んだシニア層のお出かけがいよいよ本格的に活性化していくものと考えられます。

“イケイケな移動”と、“雪解けの移動”
上述した昨年と今年のお出かけ意識を掛け合わせたものが次のグラフです。
このグラフで分かるのは、昨年お出かけできていた人はますますお出かけを加速させていく一方で、外出を控えてきた人の多くは現状維持が続く、ということです。これは移動する人としない人の格差がますます広がっていくことを意味しています。世の中のデジタルシフトに起因し、しなければならない移動、言わば“生活必需移動”が減っていくことにより移動の格差が拡大していくと私たちは見ていますが、その傾向が2023年も続くものと思われます。

上のグラフで、昨年も「お出かけできた」「まあお出かけできた」と回答し今年も「活発になると思う」「やや活発になると思う」と答えた層を「イケイケ層」、一方で昨年は「お出かけできなかった」「あまりお出かけできなかった」「どちらとも言えない」と回答したものの今年のお出かけは活発になると答えた層を「雪解け層」とここで仮に呼び、この両層の含有率を見たのが次のグラフです。
生活者の28.4%がこの両層のいずれかに該当していましたが、この分析でも「18~29歳」と、「60代」「70代」という両極の年齢層において含有率が高くなっていることが分かります。Z世代に代表されるような新たな価値観を持つ若年層が切り拓く“イケイケな移動”と、本来、時間的にも経済的にも余裕のあるシニア層がコロナ前に回帰していく“雪解けの移動”が、2023年のお出かけの主役と言ってもいいかもしれません。

今年増える移動は?
では、今年はどのような移動が活性化するのでしょうか。
「2023年に絶対増やしたいお出かけ」としてトップだったのは「旅行」で約3割でした。旅行は昨年より明確に復調の兆しがありましたが、今年はコロナ前は非常に活発だったシニア層の旅行が一気に盛り返していく可能性があります。また、コロナで実施が控えられていたさまざまな会合やイベントが今年より再開されていくことで、「外食」や「友人・知人と会う」お出かけ機会が増えていくことになりそうです。
さらに今年は「ストレス発散」や「好きなモノやコトのため」、あるいは「癒(いや)し」といった精神的な充足のためのお出かけも増えていくと予想されます。コロナ禍で“不要不急”とされてきたこうした移動は消費を生み出し経済を活性化させ、同時に生活者の幸福を生み出していくものと私たちは考えます。2023年はウィズコロナの中で「自分にとっては大切な移動」を取り戻し、生み出していく年になるのではないでしょうか。

商業・エンタメ施設の開業や大きなイベントが目白押しの2023年。卯年癸卯は時代の区切りの年、飛躍の年とも言われます。新型コロナウイルスの感染拡大は世界的に見てもまだ予断を許さない状況ですが、今年はウィズコロナはもちろんアフターコロナを切り拓いてゆく年になっていくはずです。そのフロンティアには生活者が自らの意思で選択し実行していく移動行動がある、と私たちは見ています。
どうする今年の移動。
今年もMove Design Labは新しい移動の兆しをつぶさに見てまいります。
<調査概要>
- 調査手法 : インターネット調査
- 調査対象 : 全国18~79歳の男女 1200人に実施
- 調査期間 : 2022年12月3日~4日
五明 泉 Move Design Lab代表/恵比寿発、編集長
1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。