【Advertising Week Asia 2023セッションレポート】
シン・OOH〜グローバルOOHのトレンドとjekiが考えるOOHの未来〜

jekiが描く交通広告の未来 VOL.11

(写真左より)
jeki メディアソリューション本部 メディアソリューションセンター プラットフォーム開発部 部長 向山 忍
jeki メディアソリューション本部 メディアソリューションセンター プラットフォーム開発部 四條 浩紀
Moving Walls 共同創設者兼LMX(SSP)統括責任者 ネギ・マンダキニ
Moving Walls 共同創設者兼プラットフォーム責任者 マンダリア・メフル
エス・エッチ・ジャパン 代表取締役 キルパラニ・ハレシュ(通訳)

2023年6月6日から8日まで、六本木の東京ミッドタウン ホール&カンファレンスにて、Advertising Week Asia 2023が開催された。AWAは広告、アドテック、マーケティング、メディアなど、広告業界でグローバルに活躍する専門家たちが集まる世界最大級のイベントだ。6日には「シン・OOH〜グローバルOOHのトレンドとjekiが考えるOOHの未来〜」と題し、シンガポールやマレーシアを拠点としているMoving Wallsの共同創設者兼LMX(SSP)統括責任者のネギ・マンダキニ氏と共同創設者兼プラットフォーム責任者のマンダリア・メフル氏、ジェイアール東日本企画(jeki)からはメディアソリューション本部 メディアソリューション推進センター プラットフォーム開発部の四條浩紀が登壇、同部の向山忍を進行役に、グローバルOOHのトレンドと、jekiが考えるこれからのOOHのあり方、そしてjekiが立ち上げたマーケットプレイス「MASTRUM」について語った。

場所中心からオーディエンス中心へ、デジタル化で変わるOOH

デジタル化を含むテクノロジーの発達を受け、現代のOOHはかつての“屋外に設置される看板”という存在を超えた役割を果たすようになってきている。シンガポール・マレーシア発のMoving Wallsは、OOHのデータ面の課題を解消すべく、特許を取得した測定システムを開発。広告主やメディアオーナーのためのエンタープライズソフトウェアを提供している。現在ではグローバルに活用されているほか、現地企業とのコラボレーションも進めている。日本においては2022年にjekiとパートナー契約を締結し、マーケットプレイス「MASTRUM」を立ち上げた。

jeki Market Place MASTRUM:https://www.jeki.co.jp/mastrum/

同社のネギ・マンダキニ氏は、OOHのデジタル化によって、トラッキングやメジャメント、広告配信の自動化が可能になり、オンラインとオフラインを融合したオムニチャネルキャンペーンができるようになったことをポイントとして挙げた。また、「これまでは場所を軸にしたキャンペーンプランニングだったが、今はオーディエンスを軸にしたキャンペーンプランニングができるようになった」と、その変化を表現した。

こうした変化はこれまでOOHを検討していなかった広告主の開拓にもつながっている。マンダキニ氏は最新のトレンドとして「ダイナミックコンテンツの使用」に触れ、インドでソニー・ピクチャーズ エンターテインメントが駅のデジタルサイネージに、公開までのカウントダウンや、最寄りの上映館の上映時間をリアルタイムで配信した例なども紹介した。

また、メフル氏は「今日のOOHは、従来の道路沿いの看板をはるかに超えるものであり、デジタルサイネージの普及により、ブランドと消費者とのコミュニケーションが容易になった。OOHのプランニングとバイイングは手作業で行われ、データも乏しいことが課題だったが、テクノロジーと関係者のコラボレーションがこれを変えつつある」と語った。

jekiが仕掛けるマーケットプレイス「MASTRUM」

グローバルで事業を展開し、最新事例への知見と実績を持つMoving Wallsとのパートナーシップ、「MASTRUM」の立ち上げはjekiに何をもたらすのか。jekiの四條は、コロナ禍後、人流は回復傾向にあるもののOOHの活用に関してはその回復スピードが鈍いというデータを紹介。その一因を「テクノロジーの進化によってさまざまなデータ取得が可能になっている。オンライン広告も含めて費用対効果を意識する広告主が増えているにも関わらず、OOHではその可視化ができていなかったことが影響しているのではないか」と分析した。

「MASTRUM」は、こうした課題を受けて立ち上げられた。これまでjekiではJR東日本の媒体を中心に扱ってきたが、今後は「MASTRUM」を通じて他社も含めたありとあらゆるOOHメディアを統合的にプランニングできる環境の実現と、そのデータの活用による広告効果の可視化にも着手する。
四條は「めざす世界は、ターゲットにふさわしい時間・場所・体験で、効率的に配信できる環境。私たちはOOHの価値を信じている。取り組みを進めることで、広告主の課題解決に寄与できるソリューションに育てていきたい」と話した。

日本のOOH飛躍のカギはデジタル化の推進

マンダキニ氏は日本のOOHに寄せる期待として、日本のOOHが世界第3位の市場規模といわれていること、グローバルの傾向として、いま伸長している広告メディアがデジタルOOHであるといわれていることを指摘。一方で課題は「海外からの広告主が日本でOOHを活用する場合、バイイングに関する多くの規制がある。言葉の壁や文化的な適合も課題」と話した。
課題はあるものの、日本のOOHはポテンシャルを秘めている。メフル氏も「日本はすでにリーダーシップを発揮しており、海外の鉄道会社は日本の交通広告やjekiの取り組みに注目している。カギとなるのはデジタル化の推進。デジタル化が進んだ技術大国である日本において、MASTRUMをベースにイノベーションを起こすことを楽しみにしている」と期待を口にした。

四條は「MASTRUM」の今後について「現在、配信環境やデータ取得の進め方を議論している。配信環境をプログラマティックなものに変えていく動きが必要だと考えている。また、データ関連についても法規制と調整しながらクライアントの要望に応えられる環境を作りたい。まずはインプレッションから、将来的には広告効果まで可視化できるように取り組んでいきたい」と展望を話し、セッションを締めくくった。

向山 忍
メディアソリューション本部 メディアソリューションセンター プラットフォーム開発部 部長
広告会社を経て2001年にjeki入社。
主にプランニングプロデュース業務、コミュニケーション全体計画の策定、ブランディングに関するコンサルティング、各種プロモーションのトータルプランニング及びプロデュースを手掛ける。最近ではデジタルサイネージ事業の立上げ、jeki独自のメディアマーケットプレイスブランド「MASTRUM」構築に向けた取組み、メディア事業構想策定 など事業計画に参画。営業、プロモーション、メディア、マーケティング部門、経営企画等の領域を歴任、現在に至る。

四條 浩紀
メディアソリューション本部 メディアソリューションセンター プラットフォーム開発部
2009年、jekiに新卒入社後、交通メディア等のバイイング業務に従事。その後、JR東日本に出向し、公式Facebook、Twitterの中の人を担当。帰任後は、2017年より経営企画局。社内デジタル関連会議事務局や子会社設立業務、マレーシアにおけるデジタルサイネージ事業運営を手掛ける。2019年ごろより、メディア領域の新規事業開発に従事し、OOHの計測ダッシュボード開発やjeki Market Place立ち上げに参画。

ネギ・マンダキニ
Mandakini Negi
Moving Walls 共同創設者兼LMX(SSP)統括責任者
Moving Walls Groupの共同設立者であり、事業のグローバル責任者。メディアオーナーとの新たなパートナーシップを構築し、ビジネスプロセスの自動化と収益の拡大を支援。LMXのグローバルなフットプリントを拡大するグループのサプライサイド部門を統括している。

マンダリア・メフル
Mehul Mandalia
Moving Walls 共同創設者兼プラットフォーム責任者
Moving Walls Groupの共同設立者であり、プラットフォームソリューションの責任者。OOHメディアの企画、購入、販売、測定のためのエンタープライズソフトウェアを提供している。また、10年近くOOH広告のエコシステムに携わっており、Moving Wallsの製品戦略全般を統括。業界のワーキンググループに定期的に参加し、世界的な広告・マーケティング会議で講演を行っている。

jekiが描く交通広告の未来

生活者の行動やメディア環境が激変するなか、jekiが描く交通広告の未来とは。調査で見えてきた交通広告の今や、新たな価値創出の取り組みを紹介します。

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