未来の商業施設は「買い物の場」から
「生活者とウェルビーイングを共創する地域拠点」に

未来の商業施設ラボ VOL.26

「未来の商業施設ラボ」は、商業施設の「買い物の場」としての価値が揺らぐ中で、これからの商業施設の理想像を“生活者視点”で考えてきました。私たちの考え方は、商業施設が「買い物の場」ではなく「生活の場」として、生活のあらゆる時間に寄り添い「生活の質の向上」そのものを目指していくというものです。このたび、これまでの研究成果をまとめ、未来の商業施設のコンセプトを「生活者とウェルビーイングを共創する地域拠点」としました。未来の商業施設についてはさまざまな考え方がある中で、モノからコトへという時代の変化の先を見据えた、ひとつの考え方です。コンセプトの詳しい内容は<こちら>からご覧いただけます。

商業施設の「買い物の場」としての価値が揺らいでいる

社会の環境変化やデジタルシフトを背景に、商業施設の「買い物の場」としての価値が揺らいでいます。Z世代からは、「商業施設へは“わざわざ出掛ける”のでなく“ついでに立ち寄る”」 「遊びに行くときの目的として買い物という発想がない」といった声が聞かれます。買い物がかつてのように、それ自体を楽しむレジャーではなくなってきています。ECの進化も著しく、必要なモノは毎回注文しなくても自動的に宅配される「補充型経済」の到来が言われます。好きなモノもブランド直営のEC・D2C・P2Cなどで直接購入されます。最寄品・買回品ともに、リアルを経ずに買い物できる時代に入りつつあります。

商業施設で暮らす?
「生活の場」として「生活のあらゆる時間」に寄り添う

「買い物の場」に代わる新たな価値とはどのようなものでしょうか? モノからコトへという時代の変化の中で「時間消費」が注目されてきましたが、私たちは、商業施設が「生活者のあらゆる時間」、極論すれば、24時間に寄り添えないかと考えています。これまでのように「買い物の時間」だけでなく、仕事や家事や趣味など「生活のあらゆる時間」に寄り添っていく。すでに生活者は商業施設の〈芝生広場で子どもと外遊びを満喫する〉 〈カフェでリラックスしながら働く〉 〈フードホールで家のダイニングのようにくつろいで食事をする〉といった過ごし方をしています。商業施設が「買い物の場」ではなく、商業施設で暮らすように、「生活の場」になる未来を発想してみました。

未来の商業施設は「生活者とウェルビーイングを共創する地域拠点」に

未来の商業施設は「生活の場」として、「生活の質の向上」そのものを買い物に代わる本質的な価値として提供していきます。コンセプトは「生活者とウェルビーイングを共創する地域拠点」です。これからの生活者にとって価値が高まるウェルビーイングを、商業施設が生活者と地域一体となって共創していきます。

コンセプトを実現するポイントは3つあります。

1つめは「商業施設と顧客による生活価値の共創」です。商業施設が顧客に買い物の価値を一方的に提供するのでなく、顧客も自分の生活価値向上のために能動的に関与します。“生活の場”となる商業施設として、顧客の生活価値を高めたい気持ちを受け止め、伴走して実現します。

2つめは「一人ひとりの顧客の潜在ニーズの充足」です。共通した顧客の顕在ニーズに対応するのではなく、顧客自身も自覚できていない潜在ニーズまでも充足します。リアルな商業施設として、“人との対話”や“実際の体験”を通して、新たな気付き・発見・出会いを提供します。

3つめは「テナント&地域連携によるリソースの統合・編集」です。施設のテナントだけでなく、地域のリソースも統合・編集してソリューションを提供します。地域と共生する商業施設として、地域活性も視野に入れ、テナント&地域連携によるトータルサービスを提供します。

このような商業施設で、生活者はどのようにウェルビーイングを実現するのでしょうか。生活者の利用ストーリーも考案したので、詳しくは<こちら>をご覧ください。

商業施設が顧客と主体的に、直接関わることで、収益を上げるモデルへ

生活者のウェルビーイングに向き合うことは、ビジネスモデルを変革することにもつながります。私たちは、これまでのテナントの賃料収入だけでなく、生活者のサービス利用料でマネタイズできないかと考えています。顧客のウェルビーイング実現のために、商業施設が顧客と主体的に関わり、テナントや地域リソースを連携させた魅力あるサービスを提供し、それを実感して納得した顧客から直接収益を得ていきます。企業にとってのライフタイムバリューの重要性が高まる中、優良顧客向けのサブスクリプションモデルなどが想定されます。

以上のように、未来の商業施設のコンセプトを考えました。次回は、その実現に向けたヒントを探るべく、ディー・フォー・ディー・アール株式会社代表取締役社長の藤元健太郎さんと、パートナーコンサルタントを務める坂野泰士さんをゲストに迎えて、お話を伺う予定です。どうぞご期待ください。

上記ライター村井 吉昭
(未来の商業施設ラボ プロジェクトリーダー / シニア ストラテジック プランナー)の記事

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未来の商業施設ラボ VOL.25

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未来の商業施設ラボ VOL.24

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未来の商業施設ラボ VOL.22

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未来の商業施設ラボ

社会の環境変化やデジタルシフトを背景に、商業施設の存在価値が問われる現在、未来の商業施設ラボでは、「買い物の場」に代わる商業施設の新たな存在価値を考えていきます。生活者の立場に立ち、未来の暮らしまで俯瞰する。識者へのインタビューや調査の結果などをお届けします。

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  • 村井 吉昭
    村井 吉昭 未来の商業施設ラボ プロジェクトリーダー / シニア ストラテジック プランナー

    2008年jeki入社。家庭用品や人材サービスなどのプランニングに従事した後、2010年より商業施設を担当。幅広い業態・施設のコミュニケーション戦略に携わる。ブランド戦略立案、顧客データ分析、新規開業・リニューアル戦略立案など、様々な業務に取り組んでいる。

  • 安川 由紀
    安川 由紀 駅消費研究センター研究員/未来の商業施設ラボ メンバー

    2007年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局で鉄道や商業施設関連のプランニングに従事した後、2014年より駅消費研究センターに所属。現在は、駅利用者を中心とした生活者のインサイトや消費行動の研究に取り組んでいる。

  • 松本 阿礼
    松本 阿礼 駅消費研究センター研究員/Move Design Lab・未来の商業施設ラボ メンバー

    2009年jeki入社。プランニング局で駅の商業開発調査、営業局で駅ビルのコミュニケーションプランニングなどに従事した後、2015年より駅消費研究センターに所属。現在は、駅利用者を中心とした行動実態、インサイトに関する調査研究や、駅商業のコンセプト提案に取り組んでいる。

  • 篠原 りな
    篠原 りな 未来の商業施設ラボ メンバー / コミュニケーション プランナー

    2017年jeki入社。営業局で商業施設のプロモーションに従事した後、2年間出向。 若年向けファッションビルでの販促業務や、顧客分析やアプリ運営などのオムニサービス推進を担当した。 現在はコミュニケーション・プランニング局で化粧品などのプランニングに取り込んでいる。

  • 石田 真理子
    石田 真理子 未来の商業施設ラボ メンバー / コミュニケーション プランナー

    2019年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。 食品、飲料などの生活関連商材、ホテル、住宅のプロモーション、コンセプトメイキングに携わるなど、プランニング業務に従事。