【今月のMOVE】いつもの旅じゃないけれど、これはこれでいい感じ。

Move Design Lab VOL.81

「制約がアイデアを生む」とよくいわれる。身近な事例でいえば夕飯の献立決め。なかなか献立が決まらないときに、ふと冷蔵庫の中をのぞくことで「肉とジャガイモと人参がある。今日はカレーにしよう」と考えがまとまる。これも制約(冷蔵庫にあるもの)とアイデア(カレー)の一例だ。

行動制限という制約が生んだ新しい旅

私たちMove Design Lab(MDL)の研究テーマである「移動」は、この2年間続くコロナ禍によって「行動制限」という大きな制約を受けました。調査を実施した8月初旬も「3年ぶりの行動制限がない夏休み」と報道される一方で、コロナ第7波に関する情報も散見され、まだ自由気ままに旅行を楽しむ夏休みとはいえない次元でした。

しかしこの行動制限という制約があったことで生まれた新しい旅の形もあります。たとえばマイクロツーリズム。移動や密をできる限り避けながら旅を楽しむ手段として注目されました。かくいう筆者も好きな鉄道旅ができない期間は、電車からレンタルサイクルに乗り換えて近隣地域の周遊へ。普段とは違う経路、視点、スピードで見て回ることで、今まで知らなかった店や場所に気付かされる良い機会となりました。

調査では「行動制限を意識したあなたならではの旅行スタイル」をヒアリング。観光主体の人がアウトドアにチャレンジする機会になったり、普段は話題の場所を選びがちな旅先を、あえて避ける選択をしてみたり…生活者一人ひとりが工夫して、行動制限を意識しながらも新しい旅を楽しんでいたようです。

いつもの旅もいいけれど、これはこれであり

調査ではコロナ禍の行動制限を意識した人に「コロナ禍以前の旅行と比べて、どちらが楽しかったか」という質問をしてみました。結果は「コロナ禍以前の旅」を評価する声が多数派。そんな中でも注目したのは3割の人が行動制限を意識しながら行った新しい旅のスタイルをアリと評価した点です。

評価した理由は「ゆっくりする旅の良さを知れたから」「ちょっと良いホテルで上質な空間やおもてなしを受けるのも楽しかった」「流行ってなさそうな場所にあえて行くのも楽しい」など。これはこれであり。そんな新しい楽しみに気付けたことが評価につながったようです。

「これがいい」ではなく「これはこれであり」。制約下だからこそ断定ではなく、選択肢を拡げる思考で、私も新しい旅にチャレンジしていきたい。

<調査概要>

  • 調査手法 : インターネット調査
  • 調査対象 : 全国18~79歳の男女 1,200人に実施
  • 調査期間 : 2022年8月6日~7日

上記ライター市川 祥史
(Move Design Lab リサーチプランナー/ データアナリスト)の記事

Move Design Lab

Move Design Labは生活者の「移動行動」を探求し、”新しい移動“を創発していくことをミッションに始動したプロジェクトチーム。その取り組みをシリーズで紹介していきます。

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  • 五明 泉
    五明 泉 Move Design Lab代表/恵比寿発、編集長

    1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。

  • 中里 栄悠
    中里 栄悠 Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー/TRAIN TV ブランドマネージャー

    2004年jeki入社。営業局、駅消費研究センター、アカウントプロデュース局を経て、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。シニア・ストラテジック・プランナーとして、メーカー、サービス、小売など幅広い企業のコミュニケーション戦略立案に携わる。

  • 彦谷 牧子
    彦谷 牧子 Move Design Lab データアナリスト/ シニア ストラテジック プランナー

    リサーチ・コンサルティング会社を経て、2009年jeki入社。JR東日本保有データの分析・活用業務に従事した後、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。化粧品、トイレタリー、通信機器等幅広いクライアントのコミュニケーション戦略をはじめとしたプランニングを担当。

  • 市川 祥史
    市川 祥史 Move Design Lab リサーチプランナー/ データアナリスト

    市場調査会社にて、企業のマーケティング課題の解決に従事。2017年jeki入社。コミュニケーションプランニング局配属。交通広告・キャンペーンの効果測定を中心に、クライアントの課題発見・解決を支援する。

  • 鷹羽 優
    鷹羽 優 Move Design Lab ブランドコンサルタント

    ブランド戦略を専門とし、菓子・飲料・生活雑貨・人材など多くのブランド開発、リブランディングを手掛けた後、2018年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。ブランドマネジメントの観点からコミュニケーション立案を行う。

  • 松本 阿礼
    松本 阿礼 駅消費研究センター研究員/お茶の水女子大学 非常勤講師/Move Design Lab・未来の商業施設ラボメンバー

    2009年jeki入社。プランニング局で駅の商業開発調査、営業局で駅ビルのコミュニケーションプランニングなどに従事。2012年より駅消費研究センターに所属。現在は、駅利用者を中心とした行動実態、インサイトに関する調査研究や、駅商業のコンセプト提案に取り組んでいる。

  • 渡邉 裕哉
    渡邉 裕哉 Move Design Lab ストラテジック・プランナー

    2020年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。飲料、トイレタリー、ホテルなどのプランニングを担当する。

  • 明山 想
    明山 想 Move Design Lab コミュニケーションプランナー

    2021年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。BtoB、トイレタリー、クレジットカード会社などのプランニングを担当。

  • 片山 晴貴
    片山 晴貴 Move Design Lab コミュニケーションプランナー

    2021年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局配属。 家電、損害保険、不動産などのプランニングを担当する。