交通メディアは「バリューリーチメディア」
【jeki×野村総合研究所】コロナ禍での共同研究で見えた交通広告“4つの特徴”

jekiが描く交通広告の未来 VOL.2

広告会社ジェイアール東日本企画(以下jeki)と、生活者のメディア接触を含むマーケティングデータ収集及び分析のパイオニアである株式会社野村総合研究所(以下NRI)は、昨年から今春にかけ、コロナ禍で激変するメディア環境下における交通広告の価値に関する共同研究を行いました。

jekiとNRIが協業し、両社の知見に基づく仮説のもと、 NRI「インサイトシグナル」で収集したシングルソースパネルデータを分析した結果、他のメディアにはない交通広告の特徴が見つかりました。そこからjekiでは以下の4つの特徴を導き出しました。

NRIがコロナ禍で収集するメディア接触データを使った本分析結果は、不要不急な移動が自粛される中でも移動を選択する“エッセンシャルな移動者”が大きく影響しているものとjekiでは考えています。それは来るポストコロナ時代においても有効な、普遍的でコアな交通広告の特徴だと考えます。
本記事では6月24日の共同リリースの内容に沿って紹介します(分析概要については末尾をご参照ください)。

交通広告の特徴①「スクリーニング性」
ポテンシャルの高いボリューム層(ポテンシャル・マス)へのリーチ

【グラフ1】はテレビ、WEB、交通メディアに広告出稿した際のリーチ率を予算別にシミュレーションしたものです。どの予算においてもリーチ率が最も高かったのはテレビCMでした。同メディアのリーチ力は依然健在であることが分かります。次にリーチ率が高かったのは交通広告。テレビほどではないものの、交通広告は都市生活者へのリーチ力を備えていることが改めて分かります。ちなみに予算が少ないほど交通広告の他メディアとの相対的なリーチ力は高まる傾向が見られました。

これをターゲット別で見たものが【グラフ2】です。生活者全体(関東20~69歳)で見た上の結果と様相は大きく異なります。予算3000万円でシミュレーションしたこのグラフからは「20代」「有職者」「個人年収700万円以上」「(消費価値観)先進層」それぞれへのリーチ率において交通広告がテレビCMやWEB広告をしのぎ、高いことが分かります。中でも「20代」の結果は全体で示した傾向とは大きく異なっています。若年層のタッチポイントとしては真っ先にWEBが思い浮かぶかもしれませんが、今回のシミュレーションでは交通広告もWEBに並ぶリーチが期待できることが分かります。

さて、これらの結果からjekiは交通メディアの特徴として「①スクリーニング性」があると考えます。スクリーニングとはふるい分けのこと。「若者」「有職者」「富裕層」「先進層」といったマーケティング価値の高い生活者にふるいのかかったボリューム層(それを「ポテンシャル・マス」と呼びます)に効率的にリーチできるメディアが交通広告といえます。
リーチのボリュームを担保しつつも質の高いターゲットにスクリーニングされた層にリーチできる交通広告は、特にマーケティング予算が限られる場合に優先して出稿を検討するべきと考えます。

交通広告の特徴②「自主視認性」
生活者によって自発的に視認される

インサイトシグナルの調査モニターに広告メディアごとに好き嫌いを尋ねてみたところ、好きな広告のトップは交通広告でした。これは裏を返せば交通広告は生活者に最も嫌われていないメディアであるということを意味します。次いでテレビCMや新聞広告、雑誌広告、ラジオCMといういわゆる“マス広告”が続く結果となりました。その一方で、WEB広告を好きと回答した人は3割弱にとどまっています。

メディアごとに生活者が持つイメージ(メディアインサイト)を尋ねたのが【グラフ4】です。ここでも交通広告はポジティブな印象を持たれやすいことが分かります。交通広告は「つい見てしまう」「暇つぶしになる」メディアで、「目障りな」「しつこい」といったネガティブイメージはかなり低い水準であることが確認できます。

これらの結果から、jekiは交通メディアの特徴として「②自主視認性」があると考えます。交通メディアは永らくその特徴の一つに“強制視認”をあげてきました。たしかに交通メディアは生活者の視界に否応なく入ってくるという意味では強制視認メディアと言えます。しかし広告を見ることを強制することはなく、広告視認はあくまでも生活者の自主性に委ねられています。その意味では交通メディアは生活者によって能動的に見られる“自主視認”メディアと言うこともできるのではないでしょうか。それが生活者に最も好かれ、最も嫌われないという今回の調査結果につながっているものと私たちは考えます。

メディアの好嫌度などどうでもいい、と考える方もいるかと思いますが、それは古い考え方になるかもしれません。生活者は企業都合で強制的に見せるような広告にNOを突き付け始めているからです。現在進行形で普及するサブスク動画サービスや、広告が表示されない動画サイトのプレミアム会員化などからも容易に推測できますが、今の生活者は自分の求める情報コンテンツの前やその視聴中に広告を強制視聴させられるような様式を必ずしも受容していません。従来は仕方ないものとして受け入れられてきた広告が、今後は取り除くべきものとしてスキップやブロックの対象になっていく可能性が低くないのです。

好むと好まざるとにかかわらず、生活者“不”本位な広告が入り込む隙は徐々に無くなっていくはずです。その中で生活者を邪魔しない“自主視認“の交通メディアの存在価値は相対的に高まっていくものと考えます。

交通広告の特徴③「ブースト効果」
情報で溢れ返る時代に、短期間で強力な瞬間風速を生み出す

【グラフ5】は、1週間での広告出稿(予算3000万円)を想定した際の、生活者1人あたりの広告接触回数の内訳のシミュレーションです。低フリークエンシー層が大多数を占めるテレビCMやWEB広告に対し、交通広告は6回以上の高フリークエンシー層が約4分の3を占めていました。
同条件で100人あたりの総フリークエンシーをシミュレーションしたものが【グラフ6】です。こちらにおいても、テレビやWEBの回数を遥かに凌駕していることからも、都市生活者に何度も広告を接触させることにおいて交通広告は他に類を見ない随一のメディアであることが分かります。

ここから、jekiは交通メディアの特徴として「③ブースト効果」があると考えます。
いつもの通勤通学のルートに突如現れた交通広告に目を奪われ、行きと帰りに何度もその広告を見ることでブランドが刷り込まれる経験をした方は少なくないと思います。生活動線上にあるというメディア特性が引き起こすフリークエンシー(接触回数)の多さから、交通広告は短期のリーチの積み上げにおいて他メディアを遥かにしのぐ力を持っています。この爆発的なSOV(シェア・オブ・ボイス。広告量シェア)を短期で生み出すブースト効果により、ブランドのプレゼンスを一気に押し上げることができます。特に「新商品やキャンペーンのローンチ時」「流通への配荷初期」「アプリの公開初週」などのいわゆる“垂直立上”が必要なタイミングで、交通広告は強力なアシストになるはずです。

ところでこのブースト効果は、先述の“自主視認性”に支えられていると私たちは考えています。交通広告に限らず、同じ広告を何度も当てられることについてはネガティブに働く可能性もありますが、広告視認が生活者に委ねられている交通広告であれば、興味のある人は何度も見て、興味のない人は接触してもただスルーされることになります。つまり強引ではない形でブーストを生み出すことが可能なのです。

交通広告の特徴④「キープ効果」
つながり続けてブランドのKPIを長期に維持

【グラフ7】で示した4つのグラフは、年間の広告出稿と広告効果(ここでは購入意向)の推移をシミュレーションしたものです。年間のメディア予算を仮に3億円で固定し、メディアの配分を変えて4つのケースでシミュレーションを行いました。

ケース①は仮に5月と10月の2回、テレビとWEBに広告投資したパターンです。それに対し、ケース①´はテレビとWEBに交通広告を加えたパターンですが、後者のほうが年間の購入意向は高位に安定することがシミュレーション上明らかになりました。

ケース②は年2回の山でテレビとWEBと交通広告に出稿し、さらにその2回の山の間を埋める形でWEB広告を薄く打ち続ける広告出稿プランで、ケース②´はその間を埋めるWEB広告を交通広告に替えた場合のシミュレーション。交通広告がWEBよりリーチ率が高いこともあり、②よりも②´のほうが購入意向は高位に安定していることがお分かりいただけると思います。

この4つのシミュレーションにおいて、購入意向が最も高い結果になったのは、テレビとWEBと交通の3メディアを組み合わせ、かつ交通広告に長期出稿するケース②´でした。

以上から、jekiは交通メディアの特徴として「④キープ効果」があると考えます。
交通広告は日常動線上で生活者と長期につながり続けることによって、ポジティブな関係を維持することが可能です。その結果、年間を通じてブランドのKPI(購入意向等)を良好な状態に維持できるものと考えます。

生活者の行動を遮らない交通広告の“自主視認性”はここにも影響しています。交通広告は無理のない形で生活者に寄り添ったコミュニケーションができるため、顧客との長期的な対話に向いていると考えられます。

短期のブースト効果に対し、長期のキープ効果。前者は短期的なプロモーション、後者は長期的なブランディングに特に有効と考えられます。言わば対極にあるこの両効果は共に、「ポテンシャル・マス」に対し、広告が無理なく(嫌われずに)“自主視認”される交通メディアだからこそ効率的に得られる効果だと私たちは考えています。

さらにもう一点つけ加えるなら、メディアミックスについてです。今回のシミュレーションでは、年間の広告出稿をテレビとWEBだけで運用するよりも、交通広告を組み合わせた展開のほうが購入意向は高い水準になりました。昨今、WEBとテレビの融合や最適化が課題になっている企業が少なくないと思われますが、そこに交通広告を加えた“トリプルペイドメディア”により効果はさらに高められる可能性があります。

交通広告は
「バリューリーチメディア」

ここまでご紹介した交通広告の4つの特徴から、jekiでは交通メディアの特徴を言い表すものとして「バリューリーチメディア」というワードを開発いたしました。

マーケティングを推進する上で大切な、若者や先進層などのマーケティング価値の高い層にスクリーニングされたボリューム層(ポテンシャル・マス)に情報を届けられるのが交通メディア。このメディアは広範なリーチ力ゆえに無駄打ちの避けられないマスメディアや、小規模セグメントや個へのターゲティングを基本とするWEBメディアとも異なる特徴を有したメディアです。

また、旧来の強制的な広告視聴が必ずしも生活者に受容されない時代になりつつある中で、“自主視認”を礎とする交通メディアは新しい時代の生活者とポジティブな関係を作りだす有効な手段になり得ると考えられます。
こうした特徴のある交通メディアを戦略的に活用することで、瞬間的な話題性の創出(ブースト効果)や、生活者とブランドとの中長期的な関係性の維持向上(キープ効果)が可能になります。

バリューリーチの対義語はボリュームリーチ。これまでは結局のところは量がモノを言う時代だったと言えるかもしれません。しかし生活者のメディア接触環境が劇的に変わったことで、そのパワーゲームがいよいよ非効率となり、正解ではなくなっていきます。そこで求められるのはコミュニケーションの質だと私たちは確信します。質の高いターゲットに、質の高いコミュニケーションを、いかに規模を維持しながら実行していくことができるか。こうした課題が表面化していくにつれて、“価値あるリーチ”を生み出す交通メディアが今以上に脚光を浴びるのではないかと考えています。

〈 本分析について 〉

本プロジェクトの分析データは全て「NRIインサイトシグナル」によるものです。
コロナ禍にあたる現在の実態が反映されたデータを基に分析しております。

■「Insight Signal(インサイトシグナル)」
広告主(企業)の広告活動の効果を、オリジナルデータを用いて測定するNRIのサービス。
データは3000名のシングルソースパネルに対する2ヶ月間のアンケート調査を年間を通じて継続実施して取得。メディア別の広告効果を生活者の視点で評価することを目的に、同一の調査対象者に対して、テレビ、新聞、雑誌など多様なメディアの利用状況、広告との接触状況、購入意向、実際の購入行動などを測定。

■分析の元としたデータの収集対象者と測定時期
・対象者:関東に在住する20~69歳男女(集計値は人口構成に合わせてウェイトバック処理)
・サンプル数:各地点2500~3000ss(調査地点によって変動)
・対象時期:
【グラフ1-2、5-7】シミュレーション結果…2020年7月~12月の測定データを元に推計
【グラフ3-4】アンケート調査結果…2021年4月のアンケート調査の結果

上記ライター中里 栄悠
(Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー/TRAIN TV ブランドマネージャー)の記事

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中里栄悠(Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー/TRAIN TV ブランドマネージャー)

佐藤雄太(jeki交通媒体局 TRAIN TV事業部長 兼 メディアソリューション推進センター プラットフォーム開発部)

中村真(jeki交通媒体局 TRAIN TV事業部 兼 メディアソリューション推進センター プラットフォーム開発部)

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上記ライター彦谷 牧子
(Move Design Lab データアナリスト/シニア ストラテジック プランナー)の記事

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中里栄悠(Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー/TRAIN TV ブランドマネージャー)

彦谷牧子(Move Design Lab データアナリスト/シニア ストラテジック プランナー)

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生活者の行動やメディア環境が激変するなか、jekiが描く交通広告の未来とは。調査で見えてきた交通広告の今や、新たな価値創出の取り組みを紹介します。

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