応援広告がもたらす価値とは?
jeki応援広告事務局「Cheering AD」×Move Design Lab(MDL)対談<後編>

jekiが描く交通広告の未来 VOL.13

「Cheering AD」の公式マスコット「チアアドちゃん」

今、OOH界隈で応援広告が大きな話題となっている。さまざまなメディアでも取り上げられ、生活者の間でも徐々に知られるようになった応援広告。昨今の“推し活”ブームも手伝って、さまざまな企業とコンテンツホルダーが入り交じりながら市場が拡大している。
中でも交通広告や屋外広告を使った「応援広告(センイル広告)」が活況だ。生活者が広告主になることで生まれる応援広告は「聖地」となり、人の移動も生み出している。この度、一般消費者向け応援広告のECサイト「Cheering ADオンライン」が立ち上がったタイミングで、この新しい広告のカタチ、新しい移動のカタチについてjeki応援広告事務局とMove Design Lab渡邉が語り合う。
※本記事内では、「応援広告」と「センイル広告」は同義語として使用しています。
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jeki応援広告事務局とは?

ここからは「Cheering AD」についてお聞かせください。

河原:jeki応援広告事務局「Cheering AD」では応援広告を出したいファン団体の方々、媒体社、コンテンツホルダーの間に入り、日々活動しています。

ファン団体の方々に対しては、応援広告の掲出までのサポートをしており、2023年4月には応援広告のECサイト「Cheering ADオンライン」を立ち上げました。応援広告の検索から申し込み、決済までサイト上で完結し、初心者の方でもスマートフォンで簡単に操作いただけるようになっています。

ECサイト「Cheering ADオンライン」

小林:媒体社に対しては、通常の企業広告の進行と同様に、申し込み・審査をファン団体の方々に代わり行っています。数年前までは、「応援広告」自体が知られていなかったので、一般の方が広告を出すことに対して不安に思う媒体社も多かったのですが、最近では掲出事例も増えて、媒体開発の相談などさまざまなお話をいただくようになりました。そして、雑誌や映画館のシネアドなどに応援広告を出せるプランなど、交通広告や屋外ビジョンだけではなくさまざまな媒体に応援広告が掲出できるようになってきました。総合広告代理店であるjekiだからこそ、今後も推しの魅力をアピールできる媒体をさらに増やしていきたいです。

・雑誌「サッカーダイジェスト」に応援広告が掲出できる!
https://cheering-ad.jeki.co.jp/blogs/magazine/soccerdigest

・映画館「109シネマズ」に応援広告が出せる!
https://cheering-ad.jeki.co.jp/blogs/magazine/109cinemas

江部:コンテンツホルダー側へは、応援広告を掲出したいファン団体の方々に代わり、掲出・素材の許諾確認を行っています。最近では、コンテンツホルダ―と協業し、応援広告の窓口を請け負うケースが増えています。応援広告の規約作成から素材管理、ファンの方からの質問をお受けするなど、コンテンツホルダーに代わり対応しています。2022年に比べて、アイドルはもちろん、声優、スポーツとジャンルが多岐にわたっていて、数年前よりもファンの方が応援広告を出しやすい環境になってきているなと感じています。

今年、満を持してECサイトを立ち上げられました。反響はいかがですか?

河原:jeki応援広告事務局を立ち上げてから、ありがたいことに月に100件程度の問い合わせをいただけるようになりました。今までは、お問い合わせ毎にオーダーメイドで媒体をご提案していたのですが、お客さまにストレスなく、ご予算に応じてスムーズに広告をお選びいただけるよう、オンラインサイトを立ち上げることになりました。「Cheering ADオンライン」によって24時間・365日応援広告のお申し込みが可能になり、ご要望が多かったクレジットカード決済にも対応したところ、約7割はクレジットカードで購入されるようになりました。お洋服のようにポチっと広告を買う時代が来たなと感じています。

小林:お客さまアンケートで使いやすさの評価を聞いたところ、ほぼ満点で、ご好評いただいています。最初は、広告をECでポチっとカートに入れていただけるのかな?と心配だったのですが、スムーズにご利用いただけているようで大変嬉しいです。

渡邉:実際に私も使わせていただいたのですが、サイトに訪問して媒体を選んで、すぐ申し込みができるのには驚きました。また、サイトに載っていない媒体について問い合わせをしたところ、すぐに対応いただけたので助かりました。あまり人気のない媒体であっても、「推し」の視点に立つと特別な場所に変化する可能性が大いにあります。もっと媒体が選べるようになると良いですよね。

お隣の韓国と比べると日本の応援広告はまだ黎明期のようにも思えるのですが、今後、日本で「応援広告」が普及していく上での課題はどこにありますでしょうか。

渡邉:応援する対象と応援広告を出すシーンの拡大ができると良いと考えます。誕生日やCD発売で応援広告を出稿することはよくありますが、ライブイベント実施記念とか、ペナントレース優勝記念などカテゴリーを広げていけると良いですね。応援広告を出す理由の多くが、「推しをもっと知ってほしいから」という話をしましたが、「これは誰かに伝えたいぞ」と思うことが浮上した時に、応援広告を選んでいただけるようになるといい。その「これは!」という瞬間が最も「推し」に対する熱量が高い時なので、スピーディに応援広告を出すことができるスキームができると良いですね。

河原:そうですね。あらかじめコンテンツホルダーが応援広告を許諾しているとファン団体の方々がスピーディーに応援広告を出すことができるので、日々コンテンツホルダーと話をし、応援広告の許諾、運用窓口委託に向けたサポートに力を入れています。「掲出・素材の許諾をきちんと取っているので安心」「窓口の実績が多数あるのでjeki応援広告事務局に窓口を任せたい」、というお声をいただくことが増えており、ありがたいです。

江部:コンテンツホルダーと接していて感じたのですが、写真素材を提供するにあたっての不安を払拭することだと思います。意図しない方向の広告素材を作られてしまうことを懸念される場合が多いのですが、実際には、そのようなケースはほぼありません。jeki応援広告事務局として、素材の管理を徹底しているのはもちろんですが、ご依頼いただくファン団体の方々もルールを守ってくださっているので、信頼しています。
また、「掲出する広告を事前に確認できますか?」というお声をいただくことも多いのですが、掲出前には必ずコンテンツホルダーに広告デザインの審査を入れさせていただいております。

小林:デザインのクオリティも高く、事務所NGになったデザインは今までほとんどありません。皆さんの愛のこもったデザインにいつも感動してます。

河原:「応援広告」を出す方の殆どは、初めての方々です。不安やわからないことの方が多いかと思いますが、ファンの方々のご質問は、権利元に代わってすべて私たちがお答えします。「ファンの方のサポートもjeki応援広告事務局に任せることができるので安心」、と言ってくださるコンテンツホルダーも多いです。

渡邉:応援広告を出そうと考えるファンの方は、「推し」を大事に考える方が多く、ファンの中でもロイヤル層であるとも考えられます。応援広告を許諾することがロイヤル層をさらに育成することになり、コンテンツホルダーに利益として帰ってくるのではないかという仮説を持っています。
その可視化をすることによって、コンテンツホルダーが持つ許諾へのハードルを下げることにつながると思います。

江部:掲出いただいたファン団体の方々に聞いたアンケートの中でも応援広告の実施後、「もっと推しを応援したくなった」という声が多く、SNSを見ていてもファン同士のつながりが深まっているなと感じています。

渡邉:私もSNS上で日々、応援広告について調べているのですが、応援広告を出すファンの方の熱量とその「推し」界隈における発信力に驚かされます。

なるほど、ファン、コンテンツホルダー、そしてそれをつなぐ事務局が三位一体となってこそですね。
さて最後に皆さんの「応援広告の野望」をきかせてください

渡邉:ファンとコンテンツホルダーが一緒になってコンテンツを大きくするために、応援広告が役立てることがあると思います。推しの幸せを願う気持ちが共通項になって、一般のファンの方やクリエイター、一般企業の皆さんが結集して応援広告の裾野が広がるともっと大きなインパクトが生まれるのではないかと思います。
個人ではなかなか難しい大型媒体への出稿もきっとできると思います。

小林:応援広告はあくまで応援方法の一つなので、応援広告を飛び越えて、応援したい!お祝いしたい!という推しへの思いを、いろいろな方法で叶えられたら嬉しいなと思います。例えばライブでサプライズしたい!推しにこの商品の広告に出てほしい!などさまざまなファンの方の想いをもっとひろい上げて実現して、もっとハッピーなつながりが生まれたら素敵ですよね。

江部:「応援広告」でファンの方はもちろん、推しもコンテンツホルダーも皆さんに喜んでもらえる、安心安全な環境・仕組みを引き続き創っていきたいです!韓国に旅行に行った際、センイル広告がいたるところに掲出されている光景に心から感動した気持ちは今でも忘れられません。普段利用している駅などに「推しの応援広告」が掲出されていると、そこがライブ会場になったかのような、推しとつながっているような、ワクワク、ハッピーな気持ちになれるところも魅力の一つだと思っています。私が韓国へセンイル広告を見に行ったように、日本に応援広告目的で旅行に来る海外の方も増えたらとても嬉しいです。やりたいことは本当にたくさんあります!(笑)

河原:海外では、さまざまな国のファンダムが世界中の目立つ媒体に応援広告を掲出しています。日本でも山手線で推し電車を走らせることができますし、国内最大規模のデジタルサイネージである新宿駅の新宿ウォール456や、渋谷スクランブル交差点のサイネージへも応援広告のお申し込みを頂くことが出来るんです。海外のファンの皆さんにも、日本にも魅力的な媒体があることを知っていただきたいです。
また、日本のファンの方が海外で活躍する推しの広告を現地に出せるよう、海外媒体も取り揃えていきたいと考えています。
ファン、コンテンツホルダー、媒体社、皆さんが安心してご利用いただけるよう、日本ならではの応援広告(センイル広告)文化を創り上げ、健全に広がっていくことを目指してまいります。今はまだ応援広告は新しい応援方法にすぎませんが、新しい当たり前を創り上げていきたいです。

河原 千紘
jeki-X所属
K-POP好きで韓国でセンイル広告を見たことがきっかけで、社内新規事業コンテストで応援広告事業を提案。採択され、本業の傍らjeki応援広告事務局を立ち上げメンバーに。現在は、「Cheering AD」専任として、EC、データ、デジタル戦略を統括する。推しは SM ENTERTAINMENT所属アーティスト。

江部 恭子
jeki-X所属
メンバーの河原と韓国旅行へ行った際にセンイル広告を見て感動し、共に社内新規事業コンテストに応募し、メンバーに。現在は専任として、主にエンタメ関係の事務所や、応援広告の窓口委託を受けている事務所の対応および新規承諾交渉を行う。
推しは、K-POP(WOODZ)とサンリオ。

小林 礼奈
第三営業局所属
大学生のときに応援広告の出稿経験あり。jeki入社後は、OOHメディア局に所属し、交通広告のバイイングの知見を活かしてjeki応援広告事務局では、媒体社との交渉や、付箋広告等の新媒体・商品メニューの開発、問い合わせ対応を行う。
推しは、K-POP・JO1。

渡邉 裕哉
コミュニケーション・プランニング局所属。ストラテジック・プランナー
さまざまなクライアントのコミュニケーション戦略策定のサポートをしながら、生活者の移動を研究する「Move Design Lab」に所属。jeki応援広告事務局と共同で「推し活・応援広告実態調査」を実施。最近某アーティストの応援広告を企画し、「Cheering ADオンライン」を通じて出稿した。
推しは、ちいかわ(祭壇あり)と阪神タイガース。

上記ライター河原 千紘
(jeki-X)の記事

上記ライター江部 恭子
(jeki-X)の記事

上記ライター小林 礼奈
(第三営業局)の記事

上記ライター渡邉 裕哉
(Move Design Lab ストラテジック・プランナー)の記事

jekiが描く交通広告の未来

生活者の行動やメディア環境が激変するなか、jekiが描く交通広告の未来とは。調査で見えてきた交通広告の今や、新たな価値創出の取り組みを紹介します。

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