コロナが明けて加速した推し活と推しMOVE

Move Design Lab VOL.110

新型コロナウイルス感染対策に関するさまざまな制限が緩和された2023年。リアルイベントの人数制限やマスク着用義務もなくなり、「やっと推しに会いに行けた!」という方も多かったのではないでしょうか。個人的にもこれまで以上に推し活がはかどった1年でした。今回は、コロナ禍を経て、推し活に関する移動(=推しMOVE)にどのような変化があったのか、2022年4月の調査と比較して分析します。

前回調査はこちら

女性30~60代で推し活経験率が急増

前回同様、推し活を「自分が好きなモノ・ヒトを応援する活動」と定義し、全国の18~79歳に推し活をしたことがあるか調査したところ、経験率は24.3%と前回の18.9%から増加しました。

また、性年代別では女性30~60代で大きく増加していることがわかりました。特に40~60代ではスコアが2倍以上に増加しています。一方で、前回調査から高水準であった18~29歳の若年層は微増にとどまっています。
女性30~60代でスコアが急増した要因として、自分が普段行っている行為を「推し活」と認識する人が増えたことが考えられます。
以下のグラフは、GoogleTrendsより、「推し活」という検索ワードの人気度を時系列で表したものです。

提供:Google

2023年11月のスコアは2022年4月と比較すると約4倍になっており、2023年に入ってからさらに「推し活」というワードがWEB上で多用され、関心を集めていたことがわかります。TVやSNSなどさまざまなメディアで多く取り上げられたことによって、普段何気なく応援している行為が「推し活」であることに気が付いた人が女性30~60代に多くいたことが、推し活経験率のスコア増加につながっていると考えられます。

推し活も「リア充」の波

続いて、移動を伴う推し活(=推しMOVE)を含めた推し活に関する行動の実施率を聞くと、前回調査と比較して「ライブ・舞台・コンサート・試合等への参加」や「グッズを買いに行く」が上昇しました。
また、「公式ファンクラブ等に入会する」も上昇しています。この3点は、久々にリアルイベントを開催するコンテンツが多かったことも一つの要因かもしれません。
個人的な肌感覚になりますが、チケットの争奪戦が激化したように感じます。抽選を有利にするためにファンクラブに入会したり、チケットが外れたとしてもグッズを購入するために会場に出向いたりしている人を見聞きする機会が多くありました。

約6割が移動中にも推し活

推しMOVEに続いて、移動中の推し活実施についても調査いたしました。
個人的に移動中のスキマ時間にスマートフォンを使って、推しの情報収集や動画視聴をすることがあります。

電車やバスなどの公共交通機関での移動中における推し活実施率を聞くと、約3割が推しに関連する情報を検索したり、音楽を聴いたり、動画を見たりしていることがわかりました。いずれか実施率は65.4%で、移動中にも「推し」に関するコンテンツに触れたり、「推し」について考えたりする人が多くいます。
その背景として、「推しから元気をもらいたい」という移動者のインサイトが関係していると考えられます。
平日は、ポジティブな感情で電車・バスに乗車している人はあまり多くないかと思います。
その中、「推し」に触れていることで、元気をもらったり、気分を上げたりするなど少しでもポジティブな感情にしたい人が多いのではないかと考えられます。

推しMOVEが推し活を豊かにする

最後に、推し活と移動に関する意識について聞くと、「推し活関連のお出かけをすると、コンテンツへの愛が深まる」と回答した人は43.5%でした。
推し活をする人の約4割が推しMOVEによって、「推し」への愛を深め、日常的に推しに関するコンテンツに触れ続けることで、「また推しに会いたい」と思うようになり、次の推しMOVEにつながっていくという、推し活の良いサイクルが生まれていると考えられます。
このサイクルを回す人を増やしたり、頻度を高めたりすることがさまざまなコンテンツを大きく育てていくことにつながっていくのではないでしょうか。
MDLでは、引き続き推しMOVEを注視してまいります。

<調査概要>

  • 調査手法 : インターネット調査
  • 調査対象 : 全国の18〜79歳の男女 1,200人
  • 調査期間 : 2023年11月4日(土)~5日(日)

上記ライター渡邉 裕哉
(Move Design Lab ストラテジック・プランナー)の記事

Move Design Lab

Move Design Labは生活者の「移動行動」を探求し、”新しい移動“を創発していくことをミッションに始動したプロジェクトチーム。その取り組みをシリーズで紹介していきます。

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  • 五明 泉
    五明 泉 Move Design Lab代表/恵比寿発、編集長

    1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。

  • 中里 栄悠
    中里 栄悠 Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー/TRAIN TV ブランドマネージャー

    2004年jeki入社。営業局、駅消費研究センター、アカウントプロデュース局を経て、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。シニア・ストラテジック・プランナーとして、メーカー、サービス、小売など幅広い企業のコミュニケーション戦略立案に携わる。

  • 彦谷 牧子
    彦谷 牧子 Move Design Lab データアナリスト/ シニア ストラテジック プランナー

    リサーチ・コンサルティング会社を経て、2009年jeki入社。JR東日本保有データの分析・活用業務に従事した後、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。化粧品、トイレタリー、通信機器等幅広いクライアントのコミュニケーション戦略をはじめとしたプランニングを担当。

  • 市川 祥史
    市川 祥史 Move Design Lab リサーチプランナー/ データアナリスト

    市場調査会社にて、企業のマーケティング課題の解決に従事。2017年jeki入社。コミュニケーションプランニング局配属。交通広告・キャンペーンの効果測定を中心に、クライアントの課題発見・解決を支援する。

  • 鷹羽 優
    鷹羽 優 Move Design Lab ブランドコンサルタント

    ブランド戦略を専門とし、菓子・飲料・生活雑貨・人材など多くのブランド開発、リブランディングを手掛けた後、2018年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。ブランドマネジメントの観点からコミュニケーション立案を行う。

  • 松本 阿礼
    松本 阿礼 駅消費研究センター研究員/お茶の水女子大学 非常勤講師/Move Design Lab・未来の商業施設ラボメンバー

    2009年jeki入社。プランニング局で駅の商業開発調査、営業局で駅ビルのコミュニケーションプランニングなどに従事。2012年より駅消費研究センターに所属。現在は、駅利用者を中心とした行動実態、インサイトに関する調査研究や、駅商業のコンセプト提案に取り組んでいる。

  • 渡邉 裕哉
    渡邉 裕哉 Move Design Lab ストラテジック・プランナー

    2020年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。飲料、トイレタリー、ホテルなどのプランニングを担当する。

  • 明山 想
    明山 想 Move Design Lab コミュニケーションプランナー

    2021年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。BtoB、トイレタリー、クレジットカード会社などのプランニングを担当。

  • 片山 晴貴
    片山 晴貴 Move Design Lab コミュニケーションプランナー

    2021年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局配属。 家電、損害保険、不動産などのプランニングを担当する。