「To Go ストック」が、ワカモノ移動を変える。(後編)

Move Design Lab VOL.49

こんにちは。Move Design Labです。

20代女性の移動回数増加の背景にあるデジタル上の行動「To Goストック」に着目している本連載。前回の記事(中編)では、「To Goストック」を契機にSNSでみたものを自ら追体験しようとする「ソーシャル移動」が移動の連鎖を発生させていくポテンシャルに触れ、デジタルとリアルが相互の行動を活性化させていく相乗関係についてご紹介しました。
後編となる今回は、移動活性化の起爆剤となり得る「To Goストック」の実態に、少しだけ迫ってみたいと思います。

ストックを実際に引き出し移動している20代女性

前々回の記事(前編)で、「To Goストック」をしている層では、していない層よりも明らかに移動が多く、その存在がリアルな移動行動を誘発、ないしは後押ししている可能性について言及しました。では、実際にストックされた情報は、どの程度引き出され、実際の移動行動に結びついているのでしょうか。
Move Design Labで毎月実施しているMove Mind Index(お出かけ意欲指数)調査において、「To Goストック」の実態について聴取してみました。

「To Goストック」がある人のうち、全体では43.7%、約4割の人が実際にストックした場所やスポットにお出かけをしているようです。この比率は、性別による差はみられませんが、年代別では20代と40代で高くなっています。また、ストック行動が活発な20代女性では、ストックの活用も活発なことがわかりました。
20代女性では、「To Goストック」がある人の70.7%、7割以上がストックした場所やスポットに実際に足を運んでいます。そのような行動が「よくある」という回答も19.5%で2割近く、他の属性よりも明らかに高い結果です。マーケティング的な観点では、この層のストックを獲得することが、効率的な集客につながると考えられます。

20代女性がストックしている2大カテゴリーはファッションと外食、ストックが衝動的な買い物を誘発している可能性

次に、ストックしている情報の内容をみていきたいと思います。
以下は、「To Goストック」がない人も含めた生活者全体のカテゴリー別のストック率を表したものです。

全体では、どのカテゴリーも一様に1割程度で、突出して高いものはありません。
ここでも、群を抜いてストック率の高い20代女性の結果に着目していきます。20代女性でもっともストックされているのはファッションの41.8%で、次に飲食店の38.8%が続きます。あまり意外性のない結果ではありますが、Instagramでみつけたかわいい洋服や小物、友達がアップしていた映えるカフェなどが、スマホの中にいつでも引き出せる状態でストックされているようです。
別の研究で、生活者の買い物の約3分の1は移動中に決定されており、その比率は若年層高ほど高い、ということがわかっています。私たちは、移動中に衝動的に生まれる買い物にも「To Goストック」が影響しているとみています。例えば、仕事帰りにたまたま駅ビルのディスプレイが目に入ったことで、ストックしていた洋服のことを思い出し、寄り道をしてそのまま購入してしまう、というようなことが起きていると考えられます。

ストックされるために重要なのは画像だけでなく場所の情報

ストックが外出の活性化、ひいては消費の活性化にもつながりそうだとなると、気になってくるのはストックされる情報の要件です。
以下は、「To Goストック」がある人に、どのような内容が含まれている情報だとストックをするのかを聴取した結果です。

「画像が載っている」ことがもっとも高いのは想像に容易いですが、次いで高いのは「場所の名称が載っている」ことでした。「場所の名称が載っている」ことが、「画像が映えている」ことよりも重視されているというのは少し意外でしたが、いざストックを引き出そうとしたときに、場所の手がかりがないと調べる術がない、ということだと思います。
また、情報の発信者については、「有名な人」よりも、「そのカテゴリーについて詳しい人」や「仲の良い友人」の情報の方がストックされやすいようです。

ストックされる情報を生み出すためには、やはり生活者のインサイトを踏まえた設計が必須です。今回ご紹介した結果は、「To Goストック」の実態のごく一部だと認識しています。例えば、ストックされる情報の要件はカテゴリーによって異なる可能性が高く、今後深掘りしていきたいテーマの一つです。Move Design Labでは、「生活者にストックされるための情報戦略」についての研究を、引き続き考察していく予定です。

<「Move Mind Index(2019年10月)」調査概要>

  • 調査主体 : 株式会社ジェイアール東日本企画 Move Design Lab(MDL)
  • 調査手法 : インターネットアンケート調査
  • 調査期間 : 2019年10月5日~6日
  • 調査エリア : 全国
  • 調査対象者 : 18~79歳の男女
  • サンプル数 : 1,000

上記ライターMove Design Labの記事

Move Design Lab

Move Design Labは生活者の「移動行動」を探求し、”新しい移動“を創発していくことをミッションに始動したプロジェクトチーム。その取り組みをシリーズで紹介していきます。

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  • 五明 泉
    五明 泉 Move Design Lab代表/恵比寿発、編集長

    1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。

  • 中里 栄悠
    中里 栄悠 Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー/TRAIN TV ブランドマネージャー

    2004年jeki入社。営業局、駅消費研究センター、アカウントプロデュース局を経て、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。シニア・ストラテジック・プランナーとして、メーカー、サービス、小売など幅広い企業のコミュニケーション戦略立案に携わる。

  • 彦谷 牧子
    彦谷 牧子 Move Design Lab データアナリスト/ シニア ストラテジック プランナー

    リサーチ・コンサルティング会社を経て、2009年jeki入社。JR東日本保有データの分析・活用業務に従事した後、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。化粧品、トイレタリー、通信機器等幅広いクライアントのコミュニケーション戦略をはじめとしたプランニングを担当。

  • 市川 祥史
    市川 祥史 Move Design Lab リサーチプランナー/ データアナリスト

    市場調査会社にて、企業のマーケティング課題の解決に従事。2017年jeki入社。コミュニケーションプランニング局配属。交通広告・キャンペーンの効果測定を中心に、クライアントの課題発見・解決を支援する。

  • 鷹羽 優
    鷹羽 優 Move Design Lab ブランドコンサルタント

    ブランド戦略を専門とし、菓子・飲料・生活雑貨・人材など多くのブランド開発、リブランディングを手掛けた後、2018年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。ブランドマネジメントの観点からコミュニケーション立案を行う。

  • 松本 阿礼
    松本 阿礼 駅消費研究センター研究員/お茶の水女子大学 非常勤講師/Move Design Lab・未来の商業施設ラボメンバー

    2009年jeki入社。プランニング局で駅の商業開発調査、営業局で駅ビルのコミュニケーションプランニングなどに従事。2012年より駅消費研究センターに所属。現在は、駅利用者を中心とした行動実態、インサイトに関する調査研究や、駅商業のコンセプト提案に取り組んでいる。

  • 渡邉 裕哉
    渡邉 裕哉 Move Design Lab ストラテジック・プランナー

    2020年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。飲料、トイレタリー、ホテルなどのプランニングを担当する。

  • 明山 想
    明山 想 Move Design Lab コミュニケーションプランナー

    2021年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。BtoB、トイレタリー、クレジットカード会社などのプランニングを担当。

  • 片山 晴貴
    片山 晴貴 Move Design Lab コミュニケーションプランナー

    2021年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局配属。 家電、損害保険、不動産などのプランニングを担当する。