サーキュラーエコノミーへの意識からみる駅の可能性

PICK UP 駅消費研究センター VOL.40

近年、日本でも記録的な豪雨や台風による被害が激甚化し、気候変動リスクを身をもって感じるようになってきました。そうした中で、環境保全につながるサーキュラーエコノミー(循環型経済)へのシフトは待ったなしだと考えられます。では、サーキュラーエコノミーについて、生活者の意識と行動はどのようになっているのか、また、駅にはどのようなポテンシャルがあるのか、駅消費研究センターは調査を行ってヒントを探りました。

サーキュラーエコノミーへの意識はあっても何をすればいいかわからない

サーキュラーエコノミーとは、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済に代わって、資源を循環させて、持続可能な社会を目指すものだといえるでしょう。企業の方は、生活者ニーズは「持続可能な社会」「環境」よりも「便利さ」「価格」などにあるのではないかと思われるかもしれません。実態として、生活者の意識と行動はどのようなものなのでしょうか。ジェイアール東日本企画・駅消費研究センターでは、一都三県居住の20~60代男女(サンプル数:13,561人)を対象に2021年7月にアンケート調査を実施しました。

調査では「サーキュラーエコノミーへの取り組み」を「ごみの削減と資源の維持」として聴取しました。その結果(図1)、「ごみの削減と資源の維持」を重要だと感じる人は『重要だと思う』『やや重要だと思う』合わせて91.4%にものぼりました。また、関心を持っている人は『関心がある』『やや関心がある』合わせて73.5%という結果になっています。生活者の意識としては、重要性を感じ関心も高いことがわかります。では、行動はどうでしょうか。『よく行動している』は21.5%、『時々行動している』は43.6%で、合わせて65.1%と、重要性や関心よりはスコアが下がります。意識と行動との間にはズレがあるようです。

※小数点第二位を四捨五入しているため、合計値は必ずしも100%とはなりません

また、「ごみの削減と資源の維持を実現する商品・サービスの購入・利用」について聞くと、今後の利用意向は『意向あり』が74.3%となっていました。一方で、購入・利用経験は『経験あり』が44.7%にとどまります。

意識と行動との乖離はよくあることだとは思いますが、なぜなのでしょうか。関心があっても行動はしていない理由について、自由回答をみると、潜在的なニーズはあっても、やり方・方法がわからない状態がうかがわれます。

サーキュラーエコノミーへの行動のキッカケ

そこで、生活者のサーキュラーエコノミーへの行動のキッカケを探るため、2021年8月に20~40代男女数名にインタビュー調査を行いました。

20代は親の手を離れて、買い物・家事を自分自身でするようになったことで行動をしはじめている様子です。

また、行動としてのやりやすさに加え、心理的なハードルの低さもポイントとなっているようです。

サーキュラーエコノミーのタッチポイントとしての駅の可能性

生活者からは、身近な場所で自分の生活習慣になじむからこそ利用している様子もうかがわれました。生活やふだんの行動を変えてまで取り組むというよりも、無理なく自然に取り込めるものを選んでいるようです。

そのほかにも、サーキュラーエコノミーについて日常的に取り組むためには、回収ボックスを駅など毎日使う場所に配置してほしい、駅でマイボトルの給水ができるといいといったアイデアが聞かれました。さらに、「エキナカにリターナブル容器のお弁当があれば、朝買って、会社で容器を洗って、帰りに返すことができる」といった意見もあがりました。

このように、サーキュラーエコノミーに取り組むためには身近でハードルが低いことが重要なので、日常的に利用する「駅」は最適なタッチポイントとなるでしょう。加えて、日々利用する駅であれば、行動の習慣化と継続性という視点でもメリットが大きいと考えられます。

ここまでの調査、インタビュー結果を見ると、やはりサーキュラーエコノミーに関する取り組みは、生活者にとって面倒なもの、ハードルが高いものなのではないかと思われるかもしれません。しかし、調査では、「環境にいいならそっちのほうがいい」(男性20代)、「どうせ買うなら、環境にいいもののほうがいい」(女性40代)、「ちょっとぐらい高くても使う」(男性40代)と語るように、生活者の商品・サービスの選択意識が確実に変わってきている様子もうかがわれました。今こそ、循環型のビジネスに取り組むべきタイミングといえるのではないでしょうか。同時に、駅のような身近なタッチポイントをどのように活用すべきか考えることも必要ではないかと思います。

調査概要「循環型経済」への取り組みに関する消費者調査(2021年7月)

  • 調査手法 : インターネット調査
  • 調査対象者 : 一都三県居住の20~60代
  • サンプル数 : 13,561サンプル(対象者の性年代構成比で割付)
  • 調査時期 : 2021/7/15(木)~7/19(月)

調査概要「循環型経済」への取り組みに関する消費者インタビュー(2021年8月)

  • 調査手法 : インターネット調査
  • 調査対象者 : 一都三県居住の20~40代
  • サンプル数 : 6サンプル
  • 調査時期 : 2021/8/29(日)

PICK UP 駅消費研究センター

駅消費研究センターでは、生活者の移動行動と消費行動、およびその際の消費心理について、独自の調査研究を行っています。
このコーナーでは、駅消費研究センターの調査研究の一部を紹介。識者へのインタビューや調査の結果など、さまざまな内容をお届けしていきます。

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  • 町野 公彦
    町野 公彦 駅消費研究センター センター長

    1998年 jeki入社。マーケティング局(当時)及びコミュニケーション・プランニング局にて、様々なクライアントにおける本質的な問題を顧客視点で提示することを心がけ、各プロジェクトを推進。2012年 駅消費研究センター 研究員を兼務し、「移動者マーケティング 移動を狙えば買うはつくれる(日経BP)」を出版プロジェクトメンバーとして出版。2018年4月より、駅消費研究センター センター長。

  • 安川 由紀
    安川 由紀 駅消費研究センター研究員/駅消費アナリスト

    2007年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局で鉄道や商業施設関連のプランニングに従事した後、2014年より現職。現在は、駅利用者を中心とした生活者のインサイトや消費行動の研究に取り組んでいる。

  • 松本 阿礼
    松本 阿礼 駅消費研究センター研究員/Move Design Lab 駅消費アナリスト

    2009年jeki入社。プランニング局で駅の商業開発調査、営業局で駅ビルのコミュニケーションプランニングなどに従事した後、2015年より現職。現在は、駅利用者を中心とした行動実態、インサイトに関する調査研究や、駅商業のコンセプト提案に取り組んでいる。