
人や場に合わせて自分を見失い自己嫌悪するZ世代
Z世代の女性にふだんの生活やお出かけ先、お買い物について聞いてみたところ、ひとつの共通点が見えてきました。それは、周りの人や空気に合わせてしまい自分の考えがないと自己嫌悪したり、容姿や仕事の能力などを他者と比較して自己肯定感を低く感じている姿です。そんな彼女たちは、お買い物でも他者の視線に振り回されている様子。インタビューで聞かれた切実なコメントも含め、ご紹介したいと思います。
女性24歳・会社員 Aさんの例
社会人2年目になったばかりのAさんは、他人と比べて自分は何もできないと感じ、日々の生活を少しでも良く過ごすことで、自信を持とうと頑張っています。

そんな自己肯定感の低いAさんは、お店を利用する際にも自信が持てないようです。店員の目だけでなく、施設やテナントのグレードといった場に自分がふさわしいかどうかということも気にしていました。

女性21歳・大学3年生 Bさんの例
大学に通うかたわら、コロナ禍でできた時間の余裕から一時はメイクの専門学校にも通っていたというBさん。生活の中で大事にしていることは何か?という質問に対してこんな回答をしました。

Bさんにとって、メイクは大事な趣味として楽しいものでもありますが、同時に、コスメが心の武装アイテムでもある様子。自分の顔にコンプレックスを抱いているようです。

さらに服も心の武装アイテムとして捉えているようです。ただし、コスメは「自分の本質がきれいになる」と語り、服は「外側」だと言います。それに応じてか、人と関わる時、自分1人の時とで、メイクと服のどちらに注力するか使い分けているとのことでした。

女性23歳・会社員 Cさんの例
Cさんは、美容と健康を意識してオーガニック製品に興味を持ちましたが、オーガニックなコスメを使ったり食事に気を遣うことが自信につながっていると言います。

そうした行動が自信につながる一方で、商品に関してSNSやネットで情報収集することは、自分を見失ってしまうことだとも感じているようです。

自信をつけるための消費と店舗のあり方
では、そんな自己肯定感の低い彼女たちに対し、どのような店づくりをすれば良いのでしょうか。
そのひとつは高過ぎず低過ぎないグレード感が挙げられそうです。先ほどのBさんは自分にとって少し憧れの店舗に行くことで、自信をつけている様子がうかがわれました。
「駅ビルには、気持ちを上げるために行くこともある。今日の自分の服はかわいいかもしれないと感じるとき、そのかわいさを完成させ『こんなお店にも入れちゃうんだぞ』という気持ちになるために行くことがある」
彼女たちは駅ビルでも高過ぎるグレード感だと、緊張したり、店員からの目線が気になってしまい引いてしまうと語ります。絶妙なバランス感が求められるといえるでしょう。
「プラスになる」商品やサービスを扱うこともひとつの打ち手となりそうです。調査に参加した女性たちは、美容は「自分の本質がきれいになる」「リターンがある」と言い、習い事は引き出しを増やすことになると語っていました。美容や習い事に励み、少しずつ自分が良くなっていくことを実感できると、自信や達成感を持つことにつながります。
自信をつけるだけでなく、時には、彼女たちを肯定して安心させてあげることも必要でしょう。他者の視線から逃れ自分のペースに戻れるような空間も有効かもしれません。周りが気になるときは、自分のペースを戻すためにカフェに入って音楽を聴きながら1時間半ほど過ごすといった意見も聞かれました。
今回は3名を例に、ふだんの生活や、店舗での気持ちをご紹介しました。このようなZ世代の他者の視線への意識や、自信を持ちたいという気持ちに寄り添った店づくりが必要となるのではないでしょうか。
〈調査概要〉
- 調査方法 : デプスインタビュー
- 調査対象 : 関東一都三県居住の18~25歳の男女10名
- 調査実施時期 : 2023年4月
※本調査では、2023年4月時点で25歳以下をZ世代とした
町野 公彦 駅消費研究センター センター長
1998年 jeki入社。マーケティング局(当時)及びコミュニケーション・プランニング局にて、様々なクライアントにおける本質的な問題を顧客視点で提示することを心がけ、各プロジェクトを推進。2012年 駅消費研究センター 研究員を兼務し、「移動者マーケティング 移動を狙えば買うはつくれる(日経BP)」を出版プロジェクトメンバーとして出版。2018年4月より、駅消費研究センター センター長。