好きでも無駄だと思うものがある?
~Z世代エキシューマーの買い物行動と価値観~

PICK UP 駅消費研究センター VOL.57

駅消費研究センターでは、生活の中の多様なシーンで駅を訪れる人々や、エキナカ・駅ビルでのお買い物シーンの多い人々を「エキシューマー」と呼んで、生活や消費行動とその心理を10年ほど調査研究してきました。そんな中で、やはり気になるのがZ世代の買い物行動や価値観です。今回はZ世代エキシューマーの生活や買い物の実態を、エキナカ、駅ビルに限らず調査しました。

Z世代はコスパ、タイパを重視するが、なんでもオンラインで済ませたいわけではない

まず、Z世代と他世代の価値観についての結果が図1です。他世代と比べてZ世代のスコアが10ポイント以上高かったものに網掛けをしています。

Z世代はコスパ、タイパ(タイム・パフォーマンス)を大事にするといわれますが、Z世代は他世代に比べて「お金・時間・手間などのコストパフォーマンスを重視する」が高くなりました。同様に、他世代との差が大きく出るだろうと予想していた「無駄になりそうなことは絶対に避けたい」、「なるべく多くのことをオンラインやデジタルで済ませたい」は、意外にも他世代よりもやや高いスコアに留まりました。

コスパ、タイパ重視といっても、なんでもオンラインで済ませたいわけではないようです。また、コスパを気にする一方で、推し活や自分の好きなことにはお金・時間をかけることも特徴的です。
以下、Z世代の生活や買い物の実態をエピソードをもとに詳しく見ていきたいと思います。

旅行は何回も同じ場所に行ってもいい?
メイクは好きだけど、客観的に考えると無駄?

女性22歳・大学院生 Aさんの例
大学院1年生のAさんは、旅行好き。旅行ならば何回も同じ場所に行ってもいいのだといいます。金沢には5~6回行っていて、兼六園も何度も訪れているとのこと。行く場所が同じでも一緒に行く人が違えば、異なる体験になるので、同じ場所に行くのも無駄ではないそうです。では買い物はといえば、洋服については、一気にまとめて買ってしまいます。

一方で、お皿が好きで、お皿は陶芸展を見たり、作家ものを探したりしてお店を巡るそうです。

そんなAさんにとって駅ビルは面倒くさくない、便利な存在のようです。駅から直結で、高架からわざわざ地上階に降りたり信号待ちをすることなく行けることが重要とのこと。バイトの休憩時間に行くので、不確定要素が少なく、所用時間の想定ができる点がいいとのことでした。

女性23歳・専門学校生 Bさんの例
専門学校2年生のBさんは、自分の買い物のためだけに出かけることはしないといいます。自分の用事のために疲れたり、手間をかけたりするのは避けたいそうです。

出かけずに家で休む日を設けて体調を保ち、メイクしないで過ごすことで肌荒れもおさえているとのこと。では、Bさんはインドア派かというとそうではなく、アクティブに動き回っているからこそ、時間と体力を効率的に使いたいというこだわりを持っています。また、すべてを効率化するというのでもなく、学校のデザイン制作の課題については遠回りになっても時間をかけて取り組みたいといい、時間の使い方にメリハリが見られました。
アクティブに動くBさんだからこそ、買い物は駅ビルを使って効率よく済ませています。

また、疲れて帰ってきたときに、駅ビルのカフェで「さくっと休む」そうです。駅ビルのカフェに寄らないと、気分転換ができず、疲れを引きずったまま過ごすことになるともいい、駅ビルが癒しの場にもなっているようでした。

女性25歳・会社員 Cさんの例
会社員のCさんは、カフェ巡りが趣味。インスタでカフェを探し1日に2軒回ることもあるそうです。女友だちや、たまに男友だちとも行き、一人だと落ち着けるお店に、友だちとは流行りのお店に行くとのこと。「女の子だとかわいらしいお城みたいなカフェや韓国風の今流行りのカフェ。男の人と行くときはコーヒーがおいしいところや食べ物がメインのカフェになることが多い」と、一緒に行く人によって使い分けをしています。
行ったカフェはインスタにアップすることもあるそうですが、「どちらかというと写真は思い出。空間で落ち着いたりしたいというのが強い」といい、“映え”を重視しているわけではないようです。また、同じ飲食店でも、カフェは検索するが、友だちと行く居酒屋は調べないとのこと。お酒を飲みに行くときは話をすることがメインで、お酒はついでですが、カフェはカフェ空間を楽しみたいという思いが強いから検索するといいます。

また、ふだんの食事は、時間だけでなく金銭的にも節約をして八百屋で安いときにまとめ買いをしています。一方で、『投資をしているもの』は美容。若いうちにシミ対策をして「30、40代でもきれいでいれたらいい」と、後悔をしないように美容には投資をしているそうです。

Cさんは、駅ビルには気軽に一人でも行けるが、百貨店に行くときは日を決めて格好に気を付けて行くそうです。百貨店は親と買い物に行く場所だったので、まだ一人では行き慣れていないのかもしれないといいます。また、駅ビルでの買い物は計画を立てやすいともいいます。

3名を例に、ふだんの生活や心理、その中での駅ビルの位置づけを見てみました。調査をしていて感じたのは、いうまでもないことですが、Z世代と一口にいってもさまざまだということです。「コスパ・タイパ重視」「推し活をする」とまとめるだけでなく、丁寧に生活の流れを見ていくことが大事なのではないでしょうか。

定量調査

  • 調査方法 : インターネット調査
  • 調査対象 : 関東一都三県居住の18~24歳男女 5,184名、25~69歳男女 1,000名
  • 調査実施時期 : 2022年3月
    ※本調査では、2022年3月時点で24歳以下をZ世代とした

定性調査

  • 調査方法 : デプスインタビュー
  • 調査対象 : 関東一都三県居住の18~25歳の男女10名
  • 調査実施時期 : 2022年4月
    ※本調査では、2022年4月時点で25歳以下をZ世代とした

上記ライター松本 阿礼
(駅消費研究センター研究員/お茶の水女子大学 非常勤講師/Move Design Lab・未来の商業施設ラボメンバー)の記事

PICK UP 駅消費研究センター

駅消費研究センターでは、生活者の移動行動と消費行動、およびその際の消費心理について、独自の調査研究を行っています。
このコーナーでは、駅消費研究センターの調査研究の一部を紹介。識者へのインタビューや調査の結果など、さまざまな内容をお届けしていきます。

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  • 町野 公彦
    町野 公彦 駅消費研究センター センター長

    1998年 jeki入社。マーケティング局(当時)及びコミュニケーション・プランニング局にて、様々なクライアントにおける本質的な問題を顧客視点で提示することを心がけ、各プロジェクトを推進。2012年 駅消費研究センター 研究員を兼務し、「移動者マーケティング 移動を狙えば買うはつくれる(日経BP)」を出版プロジェクトメンバーとして出版。2018年4月より、駅消費研究センター センター長。

  • 松本 阿礼
    松本 阿礼 駅消費研究センター研究員/お茶の水女子大学 非常勤講師/Move Design Lab・未来の商業施設ラボメンバー

    2009年jeki入社。プランニング局で駅の商業開発調査、営業局で駅ビルのコミュニケーションプランニングなどに従事。2012年より駅消費研究センターに所属。現在は、駅利用者を中心とした行動実態、インサイトに関する調査研究や、駅商業のコンセプト提案に取り組んでいる。

  • 和田 桃乃
    和田 桃乃 駅消費研究センター研究員 / 未来の商業施設ラボメンバー

    2019年jeki入社。営業局にて大規模再開発に伴うまちづくりの広告宣伝案件、エリアマネジメント案件全般を担当し、2024年1月から現職。これまでの経験を活かし、街や駅、沿線の魅力により多角的に光を当てられるような調査・研究を行っている。