コロナ禍で高まる家族時間・自分時間の充実ニーズ
ハウス食品、バッファローと考えるイマドキ家族への寄り添い方

jeki × 宣伝会議 共同取材シリーズ VOL.17

2019年に7割を超えた子育て世帯における共働き率。子育てをしながら働く夫婦の実態を研究してきたジェイアール東日本企画の「イマドキファミリー研究所」は2020年12月4日、最新レポートを伝えるウェビナー「イマドキ子育て家族の実態とインサイト〜コロナによる変化〜」を実施した。

新型コロナウイルス感染拡大により、共働き世帯の生活やインサイトはどう変わったのか、ハウス食品、バッファローと異なる業界からゲストを招いて情報を共有した。

キーワードは「夫婦でオールシェア」「思考のアウトソーシング」

第1部と第2部では、同研究所のリーダー高野裕美と澤裕貴子が講演を行った。

高野は「イマドキ共働き子育て家族の生活戦略」と題して講演。研究所の調査データから、子育て中の共働き家庭の傾向を紹介した。調査からは、共働き家庭のママは時間的な余裕がないという傾向が見て取れるが、子どもの年齢が低いと多少の余裕があるという回答が増える。高野はこの結果から「子どもが大きくなって子育てに手がかからなくなったというステレオタイプ的な考え方は現代的価値観とは異なっている」と指摘した。

また、全国をエリア別に分けたデータからは、中京地域を例にとると、関東と比較して時間的な余裕を感じている様子が見えた。これは通勤方法や住居事情によるもの。電車通勤が7割の関東と違い、中京は車通勤が6割になるため、準備や出発時間の使い方も異なる。また、夫婦の両親と近くに住んでいるかどうかも影響しているのではないかと分析した。

ただ、大きな傾向としては、家事にかける時間や夫婦間で家事をシェアして行う傾向などに、地域差はほとんどないことが分かった。

高野はまとめとして「夫婦でオールシェア」、「思考のアウトソーシング」といったキーワードを紹介。イマドキファミリーのインサイトをくすぐるためには「身体的時間短縮から頭脳的時間短縮(=考えることから解放されたいというニーズに応える)」、「楽は生活の標準仕様(プラスアルファの価値が必要)」などが重要だと指摘した。

第2部は「コロナ禍におけるパパ・ママの意識・行動変化」と題し、澤が講演。2020年5月25日に緊急事態宣言が解除され、都道府県をまたぐ移動も緩和された6月25日から7月1日までの期間に研究所が実施した調査をふまえ、子育て世帯の意識がどう変わったのかを紹介した。

コロナ禍によって共働き家族も在宅時間が伸び、メディアとの接触時間にも変化があった。2016年の調査と比較すると、テレビとインターネットとの接触時間は増加。それでもテレビを見る時間は専業主婦よりは短いことが分かっている。

メディアと接触する時間帯も、在宅時間の増加に伴って、インターネットを中心に日中の12時~16時が増えた。ただ、テレワークの実施率では、関東の共働きママ35.5%に対して、例えば中京では14.9%と地域差がある。時間的余裕に関しては、引き続き「ない」と答える人が半数を超えた。テレワークにより時間の余裕ができたと答える人は19%から28%とわずかに増えている。テレワークが多くの企業で導入されたことにより、共働き・専業主婦世帯にかかわらず男性の家事参加は増えた。

これらの研究結果を受けて、澤はポイントを3つあげた。まずは母親を中心として、生まれた時間的余裕を家族や子どもとの時間に使っていること。2番目に、親戚や友人といった距離感の離れた連絡や交流ではなく、より身近な家族単位の絆が重視される傾向にあるということ。3つ目は、特に関東地域の専業主婦世帯では、子供や父親の在宅が増えたことにより、母親の負担が増えているのではないかということだ。

そのため、家族で過ごす時間の大切さを見直す共働き世帯の母親が増える一方、専業主婦は自由時間の減少によりストレスを感じるケースもある。コロナ禍による行動制限が生み出した影響には共働きと専業主婦世帯によってギャップがあるようだ。

澤は「コロナ禍を契機に家族の楽しみだけではなく、個人としてのリフレッシュする時間への意識が高まった。家族との時間・自分の時間それぞれを充実させるためのニーズが高まるのではないか」と話した。

あわせて、今後は専業主婦家庭を含め、育児や家事において、今まで以上に夫婦間でシェアしたり、商品やサービスを活用するなどして、家族と過ごす時間を生み出そうとするニーズが増えると予想。また、夫婦と子どもという最小単位での活動と、自分時間を充実させるための商品やサービスを求めるようになるのではないかと指摘した。

機能の先にある情緒的な価値を伝える

ハウス食品
事業戦略本部・食品事業二部長
清水 愼太郎 氏

第3部は、ハウス食品の清水愼太郎氏(事業戦略本部・食品事業二部長)とバッファローの小幡真也氏(事業本部・デザイン室長)を招き、高野とともに議論を行った。

ハウス食品は「完熟トマトのハヤシライスソース」や「フルーチェ」、九州地方を中心に販売されている「うまかっちゃん」などの商品で、消費者の声を起点にプロモーションやコミュニケーションを進めている。

清水氏は「自社のレシピサイトでも提案はしていますが、消費者が実際に“おいしそう”と感じるものは少ないのかもしれない。提案するものの中から反応の良いものを深掘りする必要があると感じています」と話した。高野も「共働きママはすぐに答えにたどりつきたいので、メーカーが提案するレシピでも“鉄板”“これが正解”といったコピーがあると刺さりやすい」と解説した。

バッファロー
事業本部・デザイン室長
小幡 真也 氏

名古屋の大須に本社を置く、無線LANなどパソコン関連の周辺機器を販売するバッファローは2020年、在宅勤務による自宅通信環境の整備へのニーズの高まりもあり売上を伸ばした。2020年のWi-Fiの規格変更を機に商品デザインなどを変えたことが追い風になっただけでなく、ウェブサイトやSNSを活用した情報発信も功を奏したという。

議論は大きく二つの質問について行われた。まずはコロナ禍を経験し、ターゲットとする家族像は変わってきた実感があるか、というもの。「シチューオンライス」で新たな食シーンを提案し、ヒット商品を生み出したハウス食品では、リモートワークが増えて昼ご飯をどうするかという問題が新たに生まれたと指摘。高野も、家事のシェアが進む中でも調理に関しては男性の進出が遅れているため、リモートワークが続くと男性でも調理しやすい商材へのニーズが、より高まるのではないかと話した。

清水氏は、コロナ禍以前から多忙な現代人向けに好評の「ごちレピライス」を紹介。パッケージも従来商品とコンセプトを変えるチャレンジを行い、購入前から情緒面にアピールするデザインを採用している。清水氏は「使用食材も少なく、調理の手間も少ない。出来上がりの満足感が、買い物・調理の手間を上回ったことがポイント」と話した。高野はイマドキファミリーのポイントにもある「楽は標準仕様」に触れながら、気分が上がるパッケージや簡単調理、ワンディッシュで洗い物を少なくするといった単に時短になるということ以上の価値により「売れているのも納得」と話した。

小幡氏は、写真や動画の保存・整理ができる「おもいでばこ」を紹介。2011年から販売している商品だが、コロナ禍による在宅時間の延伸を追い風に販売を伸ばしたという。高野は「おもいでばこ」について「従来のバッファロー製品とは異なるネーミングも、機能と情緒的価値をつなぐことに成功したのではないか」と分析した。

次に、コロナ禍を経て起きた家族のあり方の変化を、コミュニケーションへいかに反映させているかという質問を提起。小幡氏は、2020年2月~11月までの公式サイト閲覧数が緊急事態宣言による外出自粛と連動して2月から増加し、5月をピークに落ち着いているというデータを紹介。

バッファローではこの間、電話サポートへの問い合わせが増えたことや、その内容の分析を踏まえて、地元である中部地方でテレワーク需要に対応したテレビCMを放送。CMでは、これまで家庭の中でも男性が担うことが多かった機器の設定を、女性を含め幅広い層が行うようになったという背景から「あんしん、あんぜん、日本メーカー」を訴求。強みであるサポート体制をアピールした。

清水氏は「コロナで多くの人が困っている時期にブランドを推し、セールスをすることについて議論があった」と苦労があったことを話した。そこで、消費者の悩みに寄り添う形で「こまったらハヤシ!」というメッセージを打ち出し、カレーやシチューよりも材料も少なく、調理も簡単で子どもにも好まれていることを伝えた事例を紹介。

またメッセージをテレビCMからSNS、店頭まで一貫して伝えることで「完熟トマトのハヤシライスソース」が家族の悩みを解決できる存在であることをアピールしたと話した。清水氏は「メニューの提案もそうだが、何かの気づきがあれば行動につながる。気づきのきっかけにするためにはインパクトがあり、それをブランドに関連づけられるかが重要」と話した。

高野は2社の話を受け「新たな需要が生まれたことを感じる。時間がないママたちは常に課題を感じているが、日本の企業だと問い合わせをしやすいことや、ハヤシライスは調理時間が短いといったことなど、言われないと気づかないこともあるのだと思う」と述べた。

最後に「ハウス食品さん、バッファローさんは商材が違っても今のファミリーに寄り添ったコミュニケーションをされていることを実感した。単に時短です、と機能的な価値を伝えるだけではなく、“おもいでばこ”のように家族の思い出を共有する、家族で調理を一緒に楽しむといった機能の先にある価値が必要になると感じた」と話し、第3部をまとめた。

上記ライター高野 裕美
(シニア ストラテジック プランナー)の記事

上記ライター澤 裕貴子
(シニア ストラテジック プランナー)の記事

イマファミ通信

イマドキファミリー研究所では、働き方や育児スタイルなど、子育て中の家族を取り巻く環境が大きく変化する中で、イマドキの家族はどのような価値観を持ち、どのように行動しているのかを、定期的な研究により明らかにしていきます。そして、イマドキファミリーのリアルなインサイトを捉え、企業と家族の最適なコミュニケーションを発見・創造することを目的としています。

[活動領域]

子育て家族に関する研究・情報発信、広告・コミュニケーションプランニング、商品開発、メディア開発等

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  • 高野 裕美
    高野 裕美 イマファミ研 プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー

    調査会社やインターネットビジネス企業でのマーケティング業務を経て、2008年jeki入社。JRのエキナカや商品などのコンセプト開発等に従事した後、2016年より現職。現在は商業施設の顧客データ分析や戦略立案などを中心に、食品メーカーや、子育て家族をターゲットとする企業のプランニング業務に取り組む。イマドキファミリー研究プロジェクト プロジェクトリーダー。

  • 荒井 麗子
    荒井 麗子 イマドキファミリー研究プロジェクト ストラテジック プランナー

    2001年jeki入社。営業職として、主に商業施設の広告宣伝の企画立案・制作進行、雑誌社とのタイアップ企画などに従事。2011年より現職。現在は営業職で培った経験をベースに、プランナーとして商業施設の顧客データ分析や戦略立案などのプランニング業務に取り組んでいる。

  • 澤 裕貴子
    澤 裕貴子 イマドキファミリー研究プロジェクト シニア ストラテジック プランナー

    2002年jeki入社。商業施設の戦略立案などのプランニング業務に従事し、 その後アカウントエグゼクティブとして広告宣伝の企画立案・制作進行などの業務を担当。 2011年より現職。現在はJRやJRグループ会社の調査やコミュニケーション戦略立案などを中心に、 プランニング業務に取り組む。

  • 土屋 映子
    土屋 映子 イマドキファミリー研究プロジェクト ストラテジック プランナー

    2004年jeki入社。営業職として、主に企業広告のマスメディアへの出稿などの業務に従事。2009年より現職。現在は商業施設の顧客データ分析や戦略立案などを中心に、プランニング業務に取り組んでいる。

  • 河野 麻紀
    河野 麻紀 イマドキファミリー研究プロジェクト ストラテジック プランナー

    2008年jeki入社。ハウスエージェンシー部門のプランニング業務に従事した後、営業局、OOHメディア局を経て、2017年より現職。現在は営業・メディアで培った経験を活かし、再びプランニング業務に取り組んでいる。

6月15日公開 PICK UP 駅消費研究センター VOL.39 について

2021年6月15日公開のPICK UP 駅消費研究センター VOL.39「地域や自然とつながる循環型レストラン「Maruta」(調布市)―社会問題に応える、生産緑地の開発モデルへ」について、6月17日より公開を中止しておりましたが、一部内容を修正のうえ、7月9日に再公開致しました。