2月27日に発売した新刊『進化するイマドキ家族のニーズをつかむ 共働き・共育て家族マーケティング』(ジェイアール東日本企画 イマドキファミリー研究所著)。「イマファミ通信」では、これから3回にわたり、本書の概要をご紹介します。
※本記事は書籍の内容を一部編集したものです
共働き「イマドキファミリー」は、いまや子育て世帯のマジョリティ
「かつては専業主婦世帯が多かったが、今は共働き世帯が増えている」。ファミリー向けに商品を開発したことのある人はもちろん、それ以外の人も、何となく聞いたことやニュースで見聞きしたことがあるかもしれません。共働き世帯数が専業主婦世帯数を逆転したのは1996年。以降その差は開きつづけ、最新の調査では共働き世帯の数は専業主婦世帯の約2.8倍となっています(図01)。
それでは「子育て期における世帯」において、共働き率はどのくらいを占めているのか、具体的にイメージできるでしょうか。
その割合は年々高くなっており、今や「夫婦と末子17歳以下の子供から成る世帯」の74.2%にものぼります(図02)。すでに共働きは子育て世帯におけるマジョリティと言えるでしょう。「男性が外で働いて、女性は家事育児をする」スタイルは、とうの昔に脱却しているのです。
家族の変化で「従来型のマーケティング」が通用しなくなってきた
ところで、「共働き子育て世帯」と聞いて、皆さんはどのような姿を思い浮かべますか。「毎日慌ただしく、洗い残した食器が積みあがっている」「仕事が忙しく疲れているので、休日は家でぐったり」「罪悪感を持ちながら、できあいのお惣菜を家族の夕食に出している」…?そのイメージは、もう古いかもしれません。
私たちイマドキファミリー研究所は、その名の通り、イマドキの子育て家族のインサイトを捉え、企業と家族の最適なコミュニケーションを発見・創造することをミッションとした、株式会社ジェイアール東日本企画のプランニングチームです。
2014年の発足時より、首都圏在住で夫婦ともにフルタイム勤務の子育て世帯を「エクストリーム子育て層」と捉えることで、少し先の未来のマーケティングを提案していこうと研究を重ねてきました。研究を通して出会ったのは、忙しい毎日を乗り切るためにさまざまな戦略を取る「イマドキ」の家族でした。彼ら・彼女らからは今までイメージされてきた共働き子育て家族とは違う像が見えてきました。
イマドキファミリーを知れば経営戦略も変わる
私たちは、ファミリーをターゲットにマーケティングや商品開発を行う多種多様な企業で勉強会やセミナーを実施していますが、参加者からイマドキファミリーのインサイトに対する驚きの声をいただくことがあります。また、今まさに「イマドキファミリー」として勤務する比較的若い参加者から、「従来型の家族イメージを持っている経営層に対し、企画が通りづらい」という話をたびたび聞くこともあります。
子育て家族のボリューム層かつ、新たな価値観・ニーズを持つイマドキの共働き家族は、マーケティング・コミュニケーションのターゲットとして有望なだけではなく、企業の主要な働き手となってきています。イマドキファミリーの意識・実態を知ることは、企業のマーケティング活動において重要であるのはもちろんのこと、企業経営を考える上でも重要になってくると感じています。
「フルタイム共働きは大変」だからこそアプローチすべき
昭和から平成、そして令和へと時代が変わり、社会全体が大きな変遷を遂げている中、家族の価値観やあり方まで大きく変化しています。政府は2023年に発表した「こども未来戦略方針」で、「共働き・共育ての推進」を掲げました。男性の育児休業の取得推進など、夫の家事・育児参加を増やすための種々の支援制度が急ピッチで整えられつつあります。
しかし、両親ともにフルタイムで働きながら子育てをするのは容易ではありません。だからこそ新しいニーズが生まれているのです。イマドキファミリーは、企業にとって有望なアプローチ先だとも言えます。
イマドキの共働き家族は、どのようなことに悩みを抱え、どのようなニーズを持ち、どのような考えで日々の生活や子育てに臨んでいるのでしょうか。
本書では、当研究所がこれまで行ってきた調査研究を通じて、イマドキの共働き家族の多様なニーズや行動を明らかにし、これからの家族に向けたマーケティング・コミュニケーションにおけるヒントを示していきます。本書がイマドキの家族に適切なコミュニケーションを取るための一助になれば幸いです。
第2回:共働きママは朝食メニューを固定化する。思考をアウトソーシングする「考えない戦略」とは?
第3回:家庭運営はあうんの呼吸でフォローし合う。これからの共働き夫婦像 「ダブルス夫婦」とは?
高野 裕美 イマドキファミリー研究所リーダー/エグゼクティブ ストラテジック ディレクター
調査会社やインターネットビジネス企業でのマーケティング業務を経て、2008年jeki入社。JRのエキナカや商品などのコンセプト開発等に従事した後、2016年より現職。現在は商業施設の顧客データ分析や戦略立案などを中心に、食品メーカーや、子育て家族をターゲットとする企業のプランニング業務に取り組む。イマドキファミリー研究プロジェクト プロジェクトリーダー。