『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』
熱狂や愛着がファンを呼ぶ“サステナブル”な映画づくり

エンターテインメント VOL.11

(写真右より)
アスミック・エース株式会社 ライツ事業本部 アニメ企画部 兼 経営企画本部 マーケティング推進部 小野 美香 様
アスミック・エース株式会社 ライツ事業本部 アニメ事業部長プロデューサー 竹内 文恵 様
jekiコンテンツビジネス局 コンテンツプロデューサー 岡本 藍
jekiコンテンツビジネス局 コンテンツ第二部 部長代理 船越 拓

ちょっぴりネガティブだけど、やさしくほのぼのとした個性的なキャラクターたちが人気を集める「すみっコぐらし」。2012年に「リラックマ」などで知られるサンエックスから登場し、着々とファンを増やしてきました。2019年11月に公開された初めての劇場アニメ『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』では、じわじわと老若男女の支持を集めて異例の大ヒットを記録。待望の第二弾『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』が2021年11月5日より公開されています。

今回は、前作に引き続き、映画プロデューサーを務めたアスミック・エース株式会社の竹内文恵氏、宣伝プロデューサーを務めた同社の小野美香氏、そして製作委員会メンバーとしてタイアップ企画などを担当したjekiコンテンツビジネス局の船越拓、岡本藍が集まり、映画の大ヒットの理由や人気の秘密などについて語り合いました。

©2021 日本すみっコぐらし協会映画部

ファンが期待する「すみっコぐらしの世界観」を忠実にスクリーンに投影

船越:11月5日から、「すみっコぐらし」の劇場アニメ第二弾となる『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』が公開されましたね。まさに‟待望の”という感じで、ファンの皆さんが楽しみにしていたことがSNSなどでも伝わってきます。私は本作からメンバーとして参加しましたが、前作ではその人気ぶりに圧倒されました。

竹内:人気のキャラクターながら、前作は初めての映像化だったので、映画を観に来る人がどのくらいいるのか不安でした。拠り所になったのは、登場から約7年にわたってファンに愛されてきたキャラクターということでした。そのキャラクターが映画になった時、どんな物語でどう描かれれば、ファンの皆さんは劇場で観ようと思われるのか、喜んでもらえるのか。その答え合わせをするように映画の物語や企画などを膨らませていきました。

小野:宣伝などでも同じように手探りでしたね。キャラクターとしてなら馴染みはあるけれど、映画としてはどうなんだろうと。前作ではタイアップもなかなか決まらず、様子見のところが多かったですよね。

岡本:そうですね。動いている「すみっコ」たちはすごくかわいいし、お話もとても良かったけれど、観ていただかなければその良さはわからない。でも前作ではTVCMは流さなかったし、タイアップや商品化、イベントなどの宣伝活動を通じて地道に訴求していくという状態だったので、どうなるか本当にドキドキしていました。

竹内:キャラクター映画は、既にファンの心の中にある像と齟齬が生まれると、見向きもされないので、本当に難しいんです。でも、ファンが喜んでくださる映画を作れば、大ヒットせずとも、受け止めてくれる人はいるはず。それでじんわりと長く続いていけばいいと思っていました。なので、最初はコアなファンの人にしっかり観てもらおうと小規模でスタートさせたのですが、観た方がSNSや口コミで「子どもと一緒に泣いた」「想像以上にすみっコだった」と大絶賛してくださって、どんどん観てくださる方が増えていったのは嬉しかったですね。

小野:公開初日に映画館の空席が少なく、「むむっ、これはいけるのでは?」と感じたことを思い出します。そして、1週目に映画ランキング邦画第1位を獲得し、2週目に前週比150%となりました。封切りから動員数は下がっていくのが普通なので、これは異例のことだなと感じました。

岡本:当初は80館程度での上映想定でしたよね。それが公開直前で114館になり、最終的には累計300館に広がって。11月から2月までのロングランになり、海外でも7カ国で公開されました。そんななかで、2作目の企画はいつ頃から動き始めたのですか?

竹内:細く長くやっていきたいという構想は、当初からサンエックスさんと共有しており、具体的な2作目の起案は1作目公開直後くらいでしたね。とはいえ、「大ヒットしたから2作目はどーんと」という発想は当時も今もありません(笑)。あくまで「すみっコたち」の世界を丁寧に広げていこうと。すべてのキャラクターに豊かな物語があり、思いがあるので、その一つひとつを大切にしていきたいと考えています。

各キャラクターの紹介はこちら:https://sumikkogurashi-movie.com/character

子ども&ファミリーに加え、大人世代のファンの支持が映画の成功に

小野:映画作品自体は、じんわりと‟サステナブル”に育てていこうという雰囲気ですが、タイアップや商品化については、熱量がぐぐっと上がったように感じます。2作目ではかなり早い段階から、たくさんの企業が興味を持ってくださいました。

船越:それは私も感じています。「すみっコ、2作目やるんでしょ」と声をかけられ、スムーズにタイアップも決まり、企業からの期待感も大きいです。『映画 すみっコぐらし』が、ここまで皆さんに愛されるに至った理由を、宣伝プロデューサーである小野さんはどのように分析されていますか?

小野:1つはやはりキャラクターの魅力でしょうか。2012年からサンエックスさんが大切に育まれて、2019年に日本キャラクター大賞でグランプリを受賞されるまでになり、それが映画化といいタイミングで重なりました。そして、ファンを細分化してみると、子どもやファミリーだけでなく、男女問わず大人の方からの支持も厚いんですよね。1作目の時にTwitterで「男性が行きにくい」という声もあったので、男性向けの上映会を開催したのですが、満員になり、皆さんの熱量が高く驚くほどの反響をいただきました。

岡本:そうでしたね!会社帰りのスーツ姿の方もいらっしゃって、ほとんどの方がお気に入りのすみっコのぬいぐるみをもって参加されていましたよね。子ども向け作品だと思っていたら大人も感動すると、「#逆詐欺映画」なんて言葉もSNSで飛び交って、それをまたメディアが拾って拡散されるという。

竹内:一風不思議な熱狂感がありましたね。事業的には、そうした大人のファンがいるという、ファンの二段構えは心強いものがありました。

船越:私も当時は担当外でしたが、「隠れすみっコファン」の多さに驚いたことを覚えています。特にあのイベントの呼びかけで「もう隠さなくていい」と思った大人のファンは多いでしょう(笑)。今後はそうした顕在化したファンに、継続的にどんなアプローチができるか考える必要がありますね。

竹内:そうですね。アプローチについては、作り手と受け手の間がどんどん近くなっていることを実感しますね。内容だけでなく宣伝などのちょっとした言葉の選び方で、コアなファンがビビッドに反応してくれる。それが熱量となって、周りへと伝播されやすくなっているように感じます。そして、もう1つ、「ギャップ」も発信のトリガーでしょう。大作洋画の隙間に登場した、「感動」と一見関係なさそうな映画に心動かされるという。そのギャップによって拡散したのではないかと。もちろんタイアップや商品化などで広くじわっと温まった環境があったからこそですが。

岡本:ファンの熱量や、「ギャップ」が火種で、それまでじんわり温めていたところに燃え広がった感がありますね。委員会も「みんなでがんばろう」という温かい雰囲気で、宣伝でも「すみっコ」っぽい言葉を使っているのが印象的です。

船越:「大ひっと!」がひらがな表記だったり、公開日の「フライデー」の横には「えびふらいのしっぽ」がいたり(笑)。

小野:確かに、そこは「ひらがなでしょ」というのは、ファンとの共有感がありますね。とはいえ、意図して子どもっぽいトンマナにしていると映らないように気をつけました。製作・宣伝共に、大人にも受け入れてもらえる作品にしたいという共通認識がありますね。

安定的な期待に応え、変化する時代の空気を取り入れる

竹内:暗黙知が有効な部分と、数字の根拠が必要な部分と、コンテンツビジネスはそのバランスが大切だと感じます。たとえば、「すみっコぐらし」の映画化も「ヒットするはず」という直感だけではダメで、20万部もの絵本の売上など根拠を示す必要がありました。それでも2作目は前作の実績があるので、かなりスムーズでしたね。ただヒットしたことでダークホース的なギャップがなくなり、安定的な期待に応えながら新鮮さをプラスしたいと考えました。

船越:コロナ禍も意識された作品づくりだったんですよね。

竹内:前回同様に、作者のよこみぞゆりさん、サンエックスのデザイナーチーム、監督、脚本家で集まって、見せ方や物語を決めていく手法は同じだったのですが、そこに「2作目を見る人がどのように変わっているか」をインプットするのが私たちの役割と認識していました。そこで、ちょうどコロナ禍で人と会えなくなっていた時期でもあり、「ひさしぶりに会いたい人に会う喜び」をテーマにリクエストしたんです。それを起点に作者のよこみぞゆりさんが骨子をつくり、脚本の吉田玲子さんが広げていったという感じですね。シナリオの打ち合わせをしている時にいろいろとアイデアが出てくるので、今作ではどんなスタイルのナレーションにするべきか相談し、キャスティングも行っていきました。

岡本:前作に引き続き、井ノ原快彦さんと本上まなみさんですね。お二人とも温かみがあって、すみっコたちに寄り添ってくれる感じが本当にいいですよね。

小野:新しい話題としては、BUMP OF CHICKENさんが主題歌を担当することになり、楽曲「Small world」が映画に先駆けてリリースされています。もともとよこみぞゆりさんがファンで、スタッフの満場一致で決まったのですが、やさしい歌声が作品にぴったりで、さらに男性にファンも多いということもあって大きな反響をいただいています。また、今作の監督の大森貴弘さん、脚本の吉田玲子さんはそれぞれアニメファンには知られた存在で、新しいファン獲得につながるのではないかと期待しています。スタッフ発表時には「本気だな、すみっコぐらし」というネットのコメントもありました。

船越:ちょうど1作目もDVDやBlu-rayが発売され、ネット配信もされています。いろんなきっかけで観に来た人がまんまと「すみっコ沼」にハマるのでしょうね。

岡本:どのレビューサイトを見ても温かい感想に溢れていました。いろんな人が様々な表現で「幸せな気持ちになれる」「癒やされる」などと書かれていて。そういえば、1作目ではエンドロールもとても印象的で、私もそこでさらに感動してしまったのですが、もしかしたら2作目でも…?

竹内:はい、詳細はお伝えできませんが、今回もエンドロールまで楽しんでいただけると思います。ただ前作も今作も「泣ける映画」を作ったつもりはないんです。シチュエーションごとに、すみっコならどうするかというのを、真っすぐに向き合って考え、積み上げていった。その結果、ほっこりしたり、癒やされたり、皆さんの心の琴線に触れられたら嬉しいです。ちょうど公開が、コロナも落ち着いてきて、そろそろおじいちゃん、おばあちゃんにも会えるかという時期なので、久々に会う人と一緒に、または会えない人を思いながら、ぜひ観ていただきたいと思います。

小野:私は働く大人にこそ、ぜひ観ていただければと思いますね。私も竹内も、忙しい時にこっそり観ては本当に癒やされていたので、効果は折り紙付きです。

船越:グッズなども店頭に揃っているので、そこで知る人も多いかもしれませんね。ぜひ、お気に入りのキャラクターを手に、映画館で親子揃って観ていただければと思います。

岡本:各所でタイアップキャンペーンも始まっていますし、コンビニや外食チェーン、アミューズメント施設など、あちらこちらで目にしていただける機会があると思います。ぜひ、あらゆる場面で『映画 すみっコぐらし』を楽しんでいただきたいです。皆さん、ありがとうございました。

<了>

竹内 文恵
アスミック・エース株式会社 ライツ事業本部 アニメ事業部長プロデューサー
ゲーム・アニメ・邦画の宣伝を経て、2004年フジテレビ深夜アニメ枠“ノイタミナ”の立ち上げ参加後、TVアニメ「四畳半神話大系」(10/湯浅政明監督)、TVドラマ「鈴木先生」(11/河合隼人監督)、実写映画『3月のライオン 前編・後編』(17/大友啓史監督)『おらおらでひとりいぐも』(20/沖田修一監督)等をプロデュース。2022年は1月よりフジテレビにてTVアニメ「平家物語」(山田尚子監督)の放送、初夏に劇場アニメ『犬王』(湯浅政明監督)の公開を予定。

小野 美香
アスミック・エース株式会社 アニメ事業部 兼 経営企画本部 マーケティング推進部
映画のパブリシティ会社で宣伝業務に携わった後、2015年にアスミック・エース入社。TVシリーズや劇場版のアニメ作品の宣伝を担当する。現在はマーケティング推進部を兼務し、作品のSNS分析なども担当している。

船越 拓
コンテンツビジネス局 コンテンツプロデューサー
2004年jeki入社。営業局にてJR、およびJRグループのファッションビルを担当し、2017年より現職。コンテンツビジネス局に配属後、多くの映画やアニメ製作委員会に事業参画。

岡本 藍
コンテンツビジネス局 コンテンツプロデューサー
SP広告代理店にて主にコンテンツを活用したプロモーション業務に従事し、2017年jeki入社。コンテンツビジネス局に配属後、多くの映画やアニメ製作委員会に事業参画。
「STATION IDOL LATCH!」では原作兼プロジェクトメンバーとして企画立ち上げから事業化まで担当している。

上記ライター岡本 藍
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