コロナ禍で多様化した共働きママの接触メディア

イマファミ通信 VOL.36

新型コロナウイルスの流行により、日常生活や働き方が大きく変化しています。
今回は、イマドキファミリー研究所で2020年度に実施した“コロナ禍におけるパパ・ママの意識・行動変化”に関する調査の中から、ママのメディア接触についてお伝えします。
※調査は首都40km圏/中京圏/関西圏の3エリアで実施していますが、今回は「首都40km圏」のママに焦点をあててレポートします。

コロナ禍で共働きママのテレビ接触率が増加

まず、2020年の首都40km圏のママの普段のメディア接触状況を表したのが下記のグラフAです。いずれの層も、もっとも接触率が高いのが「テレビ番組・テレビCM」、次いで「インターネットのニュースサイト」となっています。ただし最も接触率の高い「テレビ番組・テレビCM」では、専業主婦ママと共働きママでは大きな差があり、共働きママの方が接触率が低いことが分かります。また、家にいる時間が長い分、「フリーペーパー・タウン誌」や「ポストのチラシ」といった紙媒体においても、専業主婦ママの方が高くなりました。
一方、共働きママの方が高くなっているメディアとしては、「電車内・駅の広告」が挙げられます。専業主婦ママと比べて、3倍以上の接触率となりました。

では、コロナ前と比べて、メディアの接触状況は変化したのでしょうか。下記グラフBは、共働きママのメディア接触率を、2016年度と2020年度で比較したものです。2016年度はテレワークが今ほど定着していなかったことをふまえ、2020年度の数値は「出社をする日」のメディア接触率を比較対象としました。

これを見ると、コロナ前の2016年度と比較して、共働きママの「テレビ番組・テレビCM」および「インターネットのニュースサイト」の接触率が大きく伸びていることが分かります。コロナ禍で朝・夜と家にいる時間が増えたことによるものと推察できます。

テレワークの普及による接触メディアの変化

グラフCは、共働きママにおける「出社の日」と「テレワークの日」で接触メディアがどう変わるのかを比較したものです。テレワークの日は家にいるからといって、テレビの接触率が大きく伸びることはなく、出社の日と同程度ということが分かりました。一方、違いとしては、テレワークの日は、「インターネットのニュースサイト」がテレビとほぼ同等の接触率になっており、YouTubeもテレワークの日は高くなっています。また、在宅していることから、「フリーペーパー・タウン誌」や「ポストのチラシ」もよく見るようになっているようです。

では平日1日あたりの、各メディアを見る時間はどのくらいなのでしょうか。グラフDはコロナ禍で増加傾向にある「テレビ番組・テレビCM」「YouTube」「YouTube以外のSNS」「インターネットのニュースサイト」において、共働きママの出社の日・テレワークの日と、専業主婦ママで比較したものです。

特に接触時間の差が顕著に出ているのが「テレビ番組・テレビCM」となりました。専業主婦ママは1日のテレビ視聴が「2時間以上」なのに対し、共働きママの出社の日では「70分前後」で、専業主婦ママの方が約2倍の接触時間となっています。共働きママのテレワークの日は、出社の日よりは視聴時間が長くなっていますが、それでも専業主婦ママとは接触時間に30分以上の差があることが分かりました。

コロナ禍による外出自粛の影響で、共働きママのテレビ接触が以前より増加しましたが、トータルの接触ではコロナ禍前と同様に、専業主婦ママより接触率・接触時間ともに低い結果となりました。
共働きママは在宅時間が増えたとはいえ、時間的余裕がない中で(Vol.29参照)、効率的な情報入手を意識していることが考えられます。テレワークの日には様々なメディアの接触率が増えていたことからも、ひとつのメディアをじっくり見る時間はなくても、様々なメディアから情報を入手している様子がうかがえます。

コロナ禍によって生活や働き方が変化した今、メディアからの情報発信にも多様性とスピードが求められる中で、いかに記憶に残るものを提供できるか(脳内ストックしやすいか)が、意思決定や購買行動のカギとなりそうです。

<調査概要>
2020年度「コロナ禍におけるパパ・ママの意識・行動変化」調査

  • 調査地域 : ●首都40km圏(東京駅を中心とする40km圏内の東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)
         ●中京圏(愛知県、岐阜県、三重県)
         ●関西圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)
  • 調査方法 : インターネット調査(調査会社のパネルを使用)
  • 調査対象 : 末子が小学校3年生以下の25〜49歳の既婚男性・女性 計2160ss
         夫婦同居であること。親同居者は除外
         (女性側の勤務形態、子供の学齢、居住地域で割付)
  • 調査期間 : 2020年6月25日(木)〜7月1日(水)

<調査概要>
2016年度「共働き家族の実態調査」

  • 調査地域 : ●首都40km圏(東京駅を中心とする40km圏内の東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)
  • 調査方法 : インターネット調査(調査会社のパネルを使用)
  • 調査対象 : 末子が小学校3年生以下の25〜49歳の既婚男性・女性 計1710ss
         夫婦同居であること。親同居者は除外
         (女性側の勤務形態、子供の学齢、居住地域で割付)
  • 調査期間 : 2017年2月10日(金)〜19日(日)

上記ライター澤 裕貴子
(シニア ストラテジック プランナー)の記事

イマファミ通信

イマドキファミリー研究所では、働き方や育児スタイルなど、子育て中の家族を取り巻く環境が大きく変化する中で、イマドキの家族はどのような価値観を持ち、どのように行動しているのかを、定期的な研究により明らかにしていきます。そして、イマドキファミリーのリアルなインサイトを捉え、企業と家族の最適なコミュニケーションを発見・創造することを目的としています。

[活動領域]

子育て家族に関する研究・情報発信、広告・コミュニケーションプランニング、商品開発、メディア開発等

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  • 高野 裕美
    高野 裕美 イマドキファミリー研究所リーダー/エグゼクティブ ストラテジック ディレクター

    調査会社やインターネットビジネス企業でのマーケティング業務を経て、2008年jeki入社。JRのエキナカや商品などのコンセプト開発等に従事した後、2016年より現職。現在は商業施設の顧客データ分析や戦略立案などを中心に、食品メーカーや、子育て家族をターゲットとする企業のプランニング業務に取り組む。イマドキファミリー研究プロジェクト プロジェクトリーダー。

  • 荒井 麗子
    荒井 麗子 イマドキファミリー研究所 シニア ストラテジック プランナー

    2001年jeki入社。営業職として、主に商業施設の広告宣伝の企画立案・制作進行、雑誌社とのタイアップ企画などに従事。2011年より現職。現在は営業職で培った経験をベースに、プランナーとして商業施設の顧客データ分析や戦略立案などのプランニング業務に取り組んでいる。

  • 澤 裕貴子
    澤 裕貴子 イマドキファミリー研究所 シニア ストラテジック プランナー

    2002年jeki入社。商業施設の戦略立案などのプランニング業務に従事し、 その後アカウントエグゼクティブとして広告宣伝の企画立案・制作進行などの業務を担当。 2011年より現職。現在はJRやJRグループ会社の調査やコミュニケーション戦略立案などを中心に、 プランニング業務に取り組む。

  • 土屋 映子
    土屋 映子 イマドキファミリー研究所 シニア ストラテジック プランナー

    2004年jeki入社。営業職として、主に企業広告のマスメディアへの出稿などの業務に従事。2009年より現職。現在は商業施設の顧客データ分析や戦略立案などを中心に、プランニング業務に取り組んでいる。

  • 河野 麻紀
    河野 麻紀 イマドキファミリー研究所 ストラテジック プランナー

    2008年jeki入社。ハウスエージェンシー部門のプランニング業務に従事した後、営業局、OOHメディア局を経て、2017年より現職。現在は営業・メディアで培った経験を活かし、再びプランニング業務に取り組んでいる。