共働き家庭の支出額を大解剖!
エリア別“支出”の実態とこれから

イマファミ通信 VOL.57

長引く物価高騰が家計を圧迫しています。今回はそんな家計における支出について、『共働きママのお金に関する調査』の結果から、共働きママのエリアによる支出額の違いや、今後の支出の動向を探っていきたいと思います。
※全国の大学生以下の長子がいる共働き家庭のママを対象に調査を実施しました。
※本記事における「共働きママ」は、自身および配偶者が共にフルタイムで働いているママを指しています。

支出金額からみるエリア特性

まずはじめに、共働き家庭は何にどのくらいの支出をしているのでしょうか。図表Aは、各項目の1ヶ月あたりの平均支出額をエリア別に出したものになります。

これを見ると、1ヶ月でもっとも支出額が多いのはいずれのエリアでも「家賃・住宅ローン」という結果になりました。特に関東(一都三県)においては1ヶ月あたり約10万円と高額になっています。「食費(外食以外)」も1ヶ月あたりの支出に占める割合は大きく、いずれのエリアでも3万円台後半~4万円台という結果になりました。1週間あたり1万円前後で食費を賄っていることになります。
全体的に、地価・物価の高い関東(一都三県)エリアが高額になる中で、いくつかエリアの特性が見られるものもありました。例えば、「光熱費・水道代」においては冬季の寒さが厳しい北海道・東北エリアで高く、「自家用車」も車移動が主である東北・東海甲信越エリアが高い結果となっています。
また、「貯蓄」においては東海甲信越がもっとも高く6万円を超えました。実は総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」でも東海エリアは世帯における貯蓄額が多いという結果が出ており、年収が高いというのもありますが、貯蓄意識が高いということが言えそうです。

もう一つ特徴として見られたのは「保険」と「投資」です。どちらも2~3万円前後ですが、「保険」は東海甲信越以西で特に高く、もっとも高いのは九州・沖縄エリアとなっています。昨今の台風や豪雨などの影響で、このエリアの保険料が高騰していることが影響しているものと思われます。「投資」は関東(一都三県)を筆頭に3大都市エリアで高い傾向にありました。先の見えない時代だからこそ、貯蓄・保険・投資と、家庭が将来に対する備えを計画的に行っていることが分かります。

家族や子どものためなら、財布の紐が緩む

今の支出状況が分かったところで、次に、「今後お金をかけたいと思うこと・もの」を見てみましょう。(図表B)

全体でもっとも高かったのは「家族の日々の暮らしが充実するもの」で63.4%となり、次いで「子どもが成長できそうなもの(62.8%)」「子どもが喜ぶもの、好きなもの(62.0%)」と子どものための出費が続きます。これらをエリア比較して見ると、北海道エリアでは家族のための出費が相対的に高い傾向にあり、家族時間の充実を重視しているようです。
一方、子どものための出費はエリアによってバラつきはあるものの、およそ6割前後~7割近くがお金をかけたいと思っており、「子どものための出費は惜しみたくない」という意識は全国共通して高いことが分かりました。
そして、「自分自身の家事労力が減らせるもの」は東海甲信越エリアで、「子育てに関する労力が減らせるもの」は北海道エリアで高い傾向となりました。裏を返せば、それぞれのエリアでは、現状は家事・子育てに多くの労力をかけている、またはサポートが現状は少ない、ということなのかもしれません。

支出の実態と今後の意識から、限られた収入の中で、それぞれのエリアの共働きママが計画的にやりくりをしていることが分かりました。その一方で、「家族時間の充実のため」や「子どものため」は、出費に前向きになってもらえる全国共通のキーワードであることも見えてきました。コミュニケーションメッセージを伝える上でも、その先にある家族の暮らしや子どもの笑顔を描くことが重要と言えそうです。

<調査概要>2022年「共働きママのお金に関する調査」

  • 調査地域 : 全国
  • 調査方法 : インターネット調査(調査会社のパネルを使用)
  • 調査対象 : 20~40代の既婚女性 計2,000サンプル 長子が大学生まで
         夫婦と子どものみの世帯/夫婦のみの世帯(子どもは、寮生活や一人暮らしでも可)
         ※平成29年就業構造基本調査を参考に、居住エリア×ママの年代別で割付
  • 調査期間 : 2022年8月26日(金)~2022年9月5日(月)

上記ライター澤 裕貴子
(シニア ストラテジック プランナー)の記事

イマファミ通信

イマドキファミリー研究所では、働き方や育児スタイルなど、子育て中の家族を取り巻く環境が大きく変化する中で、イマドキの家族はどのような価値観を持ち、どのように行動しているのかを、定期的な研究により明らかにしていきます。そして、イマドキファミリーのリアルなインサイトを捉え、企業と家族の最適なコミュニケーションを発見・創造することを目的としています。

[活動領域]

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  • 高野 裕美
    高野 裕美 イマドキファミリー研究所リーダー/エグゼクティブ ストラテジック ディレクター

    調査会社やインターネットビジネス企業でのマーケティング業務を経て、2008年jeki入社。JRのエキナカや商品などのコンセプト開発等に従事した後、2016年より現職。現在は商業施設の顧客データ分析や戦略立案などを中心に、食品メーカーや、子育て家族をターゲットとする企業のプランニング業務に取り組む。イマドキファミリー研究プロジェクト プロジェクトリーダー。

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    荒井 麗子 イマドキファミリー研究所 シニア ストラテジック プランナー

    2001年jeki入社。営業職として、主に商業施設の広告宣伝の企画立案・制作進行、雑誌社とのタイアップ企画などに従事。2011年より現職。現在は営業職で培った経験をベースに、プランナーとして商業施設の顧客データ分析や戦略立案などのプランニング業務に取り組んでいる。

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    澤 裕貴子 イマドキファミリー研究所 シニア ストラテジック プランナー

    2002年jeki入社。商業施設の戦略立案などのプランニング業務に従事し、 その後アカウントエグゼクティブとして広告宣伝の企画立案・制作進行などの業務を担当。 2011年より現職。現在はJRやJRグループ会社の調査やコミュニケーション戦略立案などを中心に、 プランニング業務に取り組む。

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    土屋 映子 イマドキファミリー研究所 シニア ストラテジック プランナー

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    河野 麻紀 イマドキファミリー研究所 ストラテジック プランナー

    2008年jeki入社。ハウスエージェンシー部門のプランニング業務に従事した後、営業局、OOHメディア局を経て、2017年より現職。現在は営業・メディアで培った経験を活かし、再びプランニング業務に取り組んでいる。