
短距離の移動手段として注目を集めている電動キックボード。2023年7月1日から、法改正により速度制限などの一定の条件を満たした車種であれば、16歳以上は免許なしでも乗れるようになりました。より手軽に利用できるようになった一方で、利用や普及に対する不安の声も聞かれます。規制の緩和後、電動キックボードの利用実態や生活者の反応について、移動の研究の観点から調査しました。
全国で約4人に3人は電動キックボードを知っているが、利用率は3.3%に留まる。

電動キックボードの利用状況について聞いてみたところ、74%の人が知っていると回答。高い認知度であることがうかがえる一方で、全体での利用率は3.3%、図表下段の電動キックボード認知者ベースで見ても4.4%となっており、まだまだ普及の過程であることがわかります。首都圏に絞ったスコアでは、認知者76.2%(全国スコア+2.3ポイント)・利用者4.1%(全国スコア+0.8ポイント)となっており、大きな地域差は見られませんでした。また、年代別での利用率は18~29歳が最多となっており、電動キックボード認知者ベースで見ると、10.1%となっていました。
利用者の拡大に向けては、事故や交通ルールへの不安の払拭がカギ。

電動キックボード認知者に対して、今後の利用意向を聞いてみたところ、全体で最も多かったのは「利用したくない」で60.4%でした。「どちらかといえば、利用したくない」と合わせると85.5%となり、利用したくない派が多数であることがわかります。
「利用したい」「どちらかといえば、利用したい」と回答した利用したい派は、全体で14.4%、最も利用意向が高かった年代は、18~29歳(26.3%)でした。ただし、利用したい派が比較的多いこの年代でも、43.4%の人が利用したくないと回答しており、年齢層によって差はあるものの、全世代的に利用したくない派が多いようです。

利用したくない理由として最も多かったのは「事故に遭いそう・巻き込まれそう(47.6%)」、続いて「自分が事故を起こしてしまいそう(35.4%)」となっており、交通事故に関する不安が大きいことがわかります。また、「交通ルールがわからない・自信がない(24.2%)」「運転の方法がわからない・自信がない(23.2%)」も高くなっており、新しい移動手段だからこそ、どのように利用すべきかわからないという“不安”から、敬遠している人も多いことがうかがえます。
利用したい派の声から見えたのは、エンタメとしての移動の可能性
反対に、少数派ながら利用したいと回答した人にもその理由を聞いてみました。

トップは「乗ること自体が楽しそう(47.7%)」となり、「疲れずに移動できそう(35.9%)」「時間の効率よく移動できそう(33.6%)」といった、電動キックボードの移動手段としての機能的な価値よりも、娯楽的な価値の方が10ポイント以上差をつける結果となりました。

現在利用されているシーンとして多かったのは、「観光(38.5 %)」「電車やバスがない時間帯(35.9 %)」でした。今後利用したいシーンとしてもほぼ同等のスコアとなっており、確かな需要がうかがええます。一方で、今後利用したいシーンとして最も多かったのは「お出かけ・散歩(61.7%)」で、実際に利用したシーン(25.6%)から倍以上のスコアとなっており、娯楽シーンの伸長が目立つ結果となりました。電動キックボードを利用したい派の理由として「楽しそう」が多かったことからも、必要だから移動するという“生活必需の移動手段”よりも“楽しむ移動手段”としての需要があるのかもしれません。
移動の可能性を広げてくれる電動キックボードが、今後どのように普及・浸透していくのか、引き続き注視していければと思います。
<調査概要>
- 調査手法 : インターネット調査
- 調査対象 : 全国18~79歳の男女 1,200人に実施
- 調査期間 : 2023年9月2日(土)~3日(日)
五明 泉 Move Design Lab代表/恵比寿発、編集長
1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。