
未来の移動とそこにあるべきマーケティングコミュニケーションを構想するプロジェクトチーム「Move Design Lab(MDL)」は、全国男女18~79歳のお出かけ意欲を毎月の定点調査で聴取し、Move Mind Index(以下MMI)としてスコア化しています。
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緊急事態宣言慣れか。 波形はコロナ以前に近づく
5月のお出かけ意欲(MMI)は、10点満点中5.21点。
東京や大阪などに発令中の緊急事態宣言の延長が決定した直後にあたる5月8日から9日に行われた同調査は、同じく緊急事態宣言下にあった前年同月比で107.4%とスコアに改善がみられました。延長決定直後の聴取であった今回のスコアが昨年よりも高かったことから、緊急事態宣言を3度経験してきた生活者の中にある種の心理的な慣れが伺えます。
3月から5月にかけてスコアは右肩下がりですが、これはコロナ以前の2019年と同様の傾向。昨年に遡りスコアの推移をみても、生活者のお出かけ意欲はコロナ以前と同じ波形に既に乗ったと考えて良いでしょう。言い換えれば緊急事態宣言が生活者の移動欲求に与える影響は限定的で、それ以上に季節変動の影響のほうが大きくなっていると言えそうです。
もっとも、コロナ以前の水準から一段底が低い状況にあることは事実。明確に減少に転じない新規感染者数と繰り返される緊急事態宣言、そして連日繰り返される報道を目にして、薄暗いトンネルの中にいるような心境にある生活者が推察されます。今の「移動欲1割減」の状態はいつまで続くのか、あるいはこれが新しいスタンダードとして定着するのか、注目されます。

女性は「若高老低」。 今後注目されるワクチン接種の影響
5月のMMIを性年代別で見たものが次のグラフです。性年代で傾向はかなり異なります。
男性はどの年代も5ポイント前後とスコアにそれほど大きな差はありません。また50代までは一昨年(コロナ以前)、昨年と比べてもスコアの上下は限定的。外出が不可避な人が多く含まれるこの層の弾力性は小さいと言えます。一方でコロナ感染リスクの大きい60代、70代男性の弾力性が大きいことは当然の結果でしょう。
一方で女性は若年ほどMMIが高く、年配ほど低い傾向が明確に表れています。60代・70代女性のMMIはコロナ以前なら若年女性に引けをとらず高いのですが、コロナ禍でその欲求は一気に萎んでいます。
5月の調査でMMIがコロナ以前の水準に戻っていた層として「男性40代」「男性50代」「女性18~29歳」「女性40代」、そして昨年5月から大きく回復が見られた層として「男性60代」「女性18~29歳」「女性30代」「女性60代」が挙げられます。中でも「男性60代」は昨対124.9%と劇的にスコアが回復しました。ワクチン接種に見通しがついてきたことの心理的影響があるのかもしれません。ワクチン接種がMMIに与える影響について今後注目されます。

突出する若年女性の外出率
5月1日(土)と2日(日)のいずれかに外出をしていた人は52.8%。ゴールデンウィーク真っただ中にあたるこの2日間の外出率は前月(4月)の53.1%とほぼ同率に留まりました。“不自由な自由”を強いられた緊張感あるゴールデンウィークの中で、18~29歳女性の外出率だけが68.4%と突出して高いことが分かります。お出かけ意欲も実際の外出率も群を抜いて高水準である若年女性のスコアは、“新しい日常”にいち早く順応しようとしていることの表れと見ることもできるのではないでしょうか。

例年だと来月(6月)はMMIが上昇に転じるタイミングにあります。昨年は緊急事態宣言が5月25日に解除されたことも後押しして6月のMMIは5月比で110.9%(4.85→5.38)と大きく回復しました。今回の緊急事態宣言はまだ見通しが不透明ではありますが※、季節変動も加わった生活者の移動欲はいかほどでしょうか。注目されます。
※5月27日現在
<調査概要>
- 調査手法 : インターネット調査
- 調査対象 : 18~79歳の男女1,000人
※国勢調査の人口構成比に合わせて、性別×年代×エリアで割付 - 調査期間 : 2021年5月8日~9日
五明 泉 Move Design Lab代表/恵比寿発、編集長
1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。