【今月のMOVE】お出かけも「韓国っぽ」
韓国コンテンツが外出の目的に。

Move Design Lab VOL.97

日本での第1次韓流ブームと呼ばれる韓国コンテンツの熱狂から20年がたちました。「冬ソナ」「ヨンさま」と聞くと胸が熱くなる方もいるのではないでしょうか。当時、大学生だった私は、韓国宮廷料理のドラマを観て、グルメ目的で韓国旅行に行った思い出があります。そんな韓国コンテンツですが、また形を変えてブームになっています。特に20代女性から「韓国は憧れ」「おしゃれ」との声が挙がり、SNSでは、韓国風や韓国っぽいインテリアやカフェなどが「#韓国っぽ」のハッシュタグがつけられ多数投稿されています。また、お出かけ先として新大久保や韓国風のカフェが選ばれているようです。その実態をみてみました。

韓国フードに、コスメに、聖地巡礼に……広がる“韓国っぽ”お出かけ

まず、「韓国系」の商品・サービス・コンテンツ(以下、韓国コンテンツ)にはどのようなイメージがあるのでしょうか。自由回答を紹介します。もちろんさまざまな意見はありますが、トレンドでおしゃれ、人気というイメージがあるようです。

〈韓国コンテンツのイメージ〉

流行の最先端(女性10代後半)
流行ってる、みんなよく買ってる・行ってるもの(女性20代前半)
かわいい、おしゃれ(女性20代後半)
洗練されている(男性30代前半)
コスメは人気があり、アイドルは世界的に通用するグループが多い(女性60代後半)

では、どのような韓国コンテンツの楽しみ方をしているのでしょうか。首都圏(1都7県)に絞って、これまでに行ったこと・実施したことがある韓国コンテンツ消費の実施率をみてみました。全体では、『韓国映画・ドラマを観る』『新大久保で遊ぶ、ご飯を食べる』『K-POPを聞く』が1割を超え、次いで、『韓国フードを実店舗に買いに行く・見に行く』『韓国コスメを実店舗に買いに行く・見に行く』となっています。
性年代別でみると、女性U29および、女性30代で全体よりも高いスコアの項目が多く、若い女性に人気のようです。

赤枠で囲ったものは移動を伴う行動です。女性U29および、女性30代では、実施率が1割~4割程度となっています。飲食や食物販・物販購入の実施率が比較的高く、特に、女性U29では『新大久保で遊ぶ、ご飯を食べる』が4割と高くなっていました。また、他世代と比べると、女性U29では『韓国っぽいカフェに行く』が4分の1程度と高くなっています。

余談ですが、Z世代女子数名に「韓国っぽいカフェ」とはどんなものか聞いてみたところ、「コンクリート打ちっ放しの無機質な感じ」「シンプルでおしゃれなインテリア」とのことで、そこではカフェラテやドリップコーヒーを飲むそうです。韓国といえば、カラフルな内装で、チーズや味の濃いフードといったイメージもありますが、若い女性がイメージする「韓国っぽい」は洗練されたおしゃれな印象もあるようでした。

また、『好きな韓国アイドル(BTS、TWICE等)に関連する場所を巡る』『韓国映画・ドラマ(愛の不時着、梨泰院クラス等)の撮影地やお店を巡る』『好きな韓国俳優に関連する場所を巡る』といった“聖地巡礼”の実施率は比較的低いですが、それでも1割程度は実施したことがあるという結果になっていました。

若い女性にとって韓国コンテンツはお出かけの目的

韓国コンテンツがお出かけの目的になるかどうかを聞いてみると、全体では1割となり、女性U29では4分の1程度がお出かけの目的となっていました。比較すると、どの属性でも『良いイメージを持っているが、お出かけの目的にはならない』のほうが高いですが、女性U29の4分の1程度は韓国コンテンツがお出かけの目的となっているとみると、一定のボリュームがあるといえるのではないでしょうか。

具体的にはどのようなお出かけをしているのでしょうか。女性U29、女性30代の自由回答を紹介します。

〈韓国コンテンツ消費の具体的な内容〉

GWに友達や兄弟と新大久保の韓国料理店で韓国料理を食べた(女性20代前半)
新大久保で流行りの雑貨を買った(女性20代前半)
コスメショップでYouTuberがおすすめしていた韓国コスメを買った(女性20代前半)
新大久保で友人と韓国料理を食べる(女性30代後半)

では、他の街へのお出かけと比べて、実施率はどのようになっているのでしょうか。韓国コンテンツ消費の行動が旺盛な女性U29のうち首都圏居住者に絞り、比較してみました。『遊ぶ、ご飯を食べる』では、渋谷、原宿・表参道が6割に対し、新大久保は低くはありますが、4割もの人が経験があるという結果になりました。

若い女性にとって、若者の聖地の渋谷や、おしゃれな原宿・表参道に迫る勢いでお出かけの目的地となる新大久保。さらに、韓国っぽいカフェ巡りや、韓国コンテンツの聖地巡礼も盛り上がるなど、韓国コンテンツ消費がお出かけの動機になりつつあるようです。

<調査概要>

  • 調査手法 : インターネット調査
  • 調査対象 : 全国18~79歳の男女 1,200人に実施
  • 調査期間 : 2023年5月6日~7日

上記ライター松本 阿礼
(駅消費研究センター研究員/お茶の水女子大学 非常勤講師/Move Design Lab・未来の商業施設ラボメンバー)の記事

Move Design Lab

Move Design Labは生活者の「移動行動」を探求し、”新しい移動“を創発していくことをミッションに始動したプロジェクトチーム。その取り組みをシリーズで紹介していきます。

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  • 五明 泉
    五明 泉 Move Design Lab代表/恵比寿発、編集長

    1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。

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    中里 栄悠 Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー/TRAIN TV ブランドマネージャー

    2004年jeki入社。営業局、駅消費研究センター、アカウントプロデュース局を経て、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。シニア・ストラテジック・プランナーとして、メーカー、サービス、小売など幅広い企業のコミュニケーション戦略立案に携わる。

  • 彦谷 牧子
    彦谷 牧子 Move Design Lab データアナリスト/ シニア ストラテジック プランナー

    リサーチ・コンサルティング会社を経て、2009年jeki入社。JR東日本保有データの分析・活用業務に従事した後、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。化粧品、トイレタリー、通信機器等幅広いクライアントのコミュニケーション戦略をはじめとしたプランニングを担当。

  • 市川 祥史
    市川 祥史 Move Design Lab リサーチプランナー/ データアナリスト

    市場調査会社にて、企業のマーケティング課題の解決に従事。2017年jeki入社。コミュニケーションプランニング局配属。交通広告・キャンペーンの効果測定を中心に、クライアントの課題発見・解決を支援する。

  • 鷹羽 優
    鷹羽 優 Move Design Lab ブランドコンサルタント

    ブランド戦略を専門とし、菓子・飲料・生活雑貨・人材など多くのブランド開発、リブランディングを手掛けた後、2018年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。ブランドマネジメントの観点からコミュニケーション立案を行う。

  • 松本 阿礼
    松本 阿礼 駅消費研究センター研究員/お茶の水女子大学 非常勤講師/Move Design Lab・未来の商業施設ラボメンバー

    2009年jeki入社。プランニング局で駅の商業開発調査、営業局で駅ビルのコミュニケーションプランニングなどに従事。2012年より駅消費研究センターに所属。現在は、駅利用者を中心とした行動実態、インサイトに関する調査研究や、駅商業のコンセプト提案に取り組んでいる。

  • 渡邉 裕哉
    渡邉 裕哉 Move Design Lab ストラテジック・プランナー

    2020年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。飲料、トイレタリー、ホテルなどのプランニングを担当する。

  • 明山 想
    明山 想 Move Design Lab コミュニケーションプランナー

    2021年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。BtoB、トイレタリー、クレジットカード会社などのプランニングを担当。

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    片山 晴貴 Move Design Lab コミュニケーションプランナー

    2021年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局配属。 家電、損害保険、不動産などのプランニングを担当する。