若者のリアルから2018年の移動トレンドを占う、20代インタビューレポート(前編)

Move Design Lab VOL.6

変わりゆく生活者の移動の実態を考察し、“新しい移動”について構想するプロジェクト、Move Design Lab(MDL)は、これからの“新しい移動(MOVE)”の兆しを捉えるべく、大学生6人に対するインタビューを実施しました。 外出率の低下が顕在化している20代が、外出を控える理由は何なのか、何が外出のきっかけになっているのか。若者のリアルを探ることから、これからの移動トレンドを考えてみます。

移動に対してコスパ意識が働いている

きょうは皆さんの移動行動についてお尋ねしたいと思います。私たちが実施した「Move実態調査2017」(『生活者の今の移動の真実に迫る「Move実態調査2017」概況レポート』の記事参照)で、20代から70代まで年齢別に外出回数を調査したところ、もっとも外出回数が少ないのは20代という結果が出ました。この結果について、どのような印象を受けますか?

女性A 自分の好みができてくると、家にいて好きなことをやりたい人と、外に出かけて自分の興味がある場所に行く人に分かれてくる気がします。ですから、私たちの周りは、外出したい人と、そんなに出たくない人と二極化しているのかもしれません。

女性B ゲーム好きの人は、だいたい休日は家にこもってゲームをしています。外に連れ出すのが大変です(笑)。

写真:『生活者の今の移動の真実に迫る「Move実態調査2017」概況レポート』

調査では20代の中でも特に、男性が女性よりも外出しないという傾向が出ています。この結果については、どう思いますか?

女性B ゲームが好きなのは、男性の方が多いと思います。サークルの先輩にいますが、男性ですね。

男性C バイトや友達と会うとき以外は、一人だと面倒くさくて出かけません。友達と一緒でも、飲み会があるか、買い物をするとき以外はほとんど出かけないですね。

女性A 女性同士なら、友達とお茶をして、お喋りするだけでも出かけますよ。

外出する日の一日の流れはどんな感じですか?

女性B 私は学校で朝が早くても、夜は目一杯遊べるようにスケジュールを組みます。そのかわり、週に一日は誰とも会わない日を作っています。地元の図書館に行くことはありますが、この日は基本的に地元にいますね。

女性A 私は埼玉から東京の大学に通っていますので、学校がある日にバイトや、友達と飲む予定を詰めています。やっぱり出てくるのが大変ですから。授業が多かった1年生のときは、割といつでも、どこにでも出かけていました。でも、いまは4年生で、学校も週2回しかありませんから、特に予定がなかったら、わざわざ電車に乗って出かけることはないですね。

行きたいところに行き尽くした感じですか?

女性A 絶対にここに行きたいといった気持ちは薄れてきて、出かける用事を絞っている感じですね。コスパが悪いというのもあります。

コスパが悪い、というのは具体的にどういうことですか?

女性 A 電車賃は一番大きいです。使った交通費以上に何かを買って帰らないと、損した気分になります。

女性D 私は定期券の範囲でしか移動しません。人と会うとか、すごくこだわりがあって出かけるときは範囲外にも行きますが、ただ自分のために出かけて、何も買わずに帰ってくると、すごく損した気分になります。一人暮らしなのでお金がないのも理由の一つです。

男性C 僕も一人暮らしなのでお金がありません。家から新宿まで出かけると、電車賃は往復で800円かかるので負担が大きいです。ラーメン1食分ですよね。それに電車に乗ることは、交通費が課金されているという感覚があります。新宿でさらに乗り換えが必要となる場所にはほとんど行かないですね。

移動に対してコスパを重視する意識があり、その結果、外出する日に複数の予定をまとめることで、1回の外出の価値を最大化している傾向がありそうです。また、極力定期券の範囲内で移動をするなど、交通費が移動の範囲や量に影響を与えていそうなことが見えてきました。

移動とスマホの関係 移動をセーブするスマホ

皆さんは家にいるとき、何をして過ごしていますか?

女性A 最近はNetflixなどのビデオオンデマンドを朝から夕方までずっと見ている生活を送りがちです。

男性C テレビも見ますし、スマホでポケ森(スマホゲーム「どうぶつの森 ポケットキャンプ」)を先に進めます。ネットサーフィンもしたいので、家で自由に過ごす時間は足りていないです。出かけたい気持ちもありますが、それよりも家にいてくつろぎたい気持ちが勝ちますね。

家が快適ですか?

男性C 快適ですね。特にいまの季節は、布団に入っているときはたまらないです(笑)。夜はだいたいスマホを触りながら寝落ちしていますね。

女性A 私も動画見ながら寝落ちします。

女性B 私は夜、家でスマホを3時間位は余裕でいじります。寝落ちするのも同じですね。

いまは家にいてもひとりぼっちじゃないというか、ネットで友達とつながれますよね。

男性D 友達同士でLINEのチャットはします。

女性E オンラインゲームをしながら、同時にチャットをしている人は周りにいます。

スマホがあれば、家の中で自分のやりたいことも、友達との会話もできてしまうんですね。

男性D 移動時間もほぼスマホをいじっています。

女性F 私は通学に片道1時間かかるので、電車の中で一番ネットを見ています。調べ物もしますし、通販のサイトもよく見ています。

皆さんネットショッピングはよく使っていますか。

男性D 買えるものはアマゾンで買っています。モバイルバッテリーとか、レビューを読んで信頼性が高いものを買います。アマゾンで売っていれば、交通費が浮くという発想は自分の中に確実にありますね。

女性E 家具や家電、服は実際に店に見に行きますが、まとめて買えないので、家に帰ってネットで買っています。

男性C 僕も服や靴は、店に見に行って気に入ったものがあっても、その場では買わずに、一旦家に帰ってから、この買い物は無駄じゃないのかと考えますね。その上でネットで頼みます。やはりネットの方が安く買えますから。

女性B 服だけは、試着しないと買えないですね。着てみたら似合わないということが最近もありましたから。試着して欲しいと思った服がメルカリやZOZOTOWNで安く売っていたら、ネットで買います。

移動とスマホの関係 移動のトリガーになるスマホ

外出するときのきっかけになるのは、どんなことですか? どんなふうに予定を立てていますか?

男性C 友達と出かけるときは、目的地の一つは事前にスマホで調べて決めていますね。だいたいTwitterから得た情報を友達から聞いて、そこに行ってみようと決めて出かけます。

女性B 食べ物はスマホで調べてから行きます。RETRIPなどのサイトで、行ったことがないところを探します。有名なカフェなど行きたい店を決めて、「ここで集合」という感じです。

誘うときもスマホで?

女性B そうですね。最近新しいなと思った誘われ方がありました。私は激辛料理が大好きで、Twitterで「激辛の麺が食べたい!」と呟いた友達がいたので、そこにいいねをしました。すると、3日後くらいに「激辛麺を食べに行く会」というグループLINEに招待されました。それで実際に食べに行きましたね。

いいねをしたら召集されるんですね。

女性B 同じことを思っていた人たちで行けるので、楽しめますね。

普段から行きたいところを調べてストックしていますか?

女性F Instagramで気になったお店をメモしています。友達とどこかに行こうと相談するときに、そのメモから提案しますね。

女性E テレビで紹介された店に実際に誰かが行って、それをInstagramにあげて、それを見た友達がまた、「ここに行ってみようか」と言ってお店に行く、という流れが多い気がします。

ほかには、どんな予定の決まり方がありますか?

男性C 彼女と出かけるときは、まず会ってから行き先を決めることが多いですね。最近尻に敷かれているので、僕は何も言えず行きたいところについていくみたいな(笑)。

女性F 事前に行きたい店がなかったら、新宿とか集合場所だけ決めて、合流してからスマホで調べます。

女性E ランチは予め決めていたお店に行って、そこでランチを食べながら、デザートの店をインスタとかで調べたりしています(笑)。

皆さん移動や外出のきっかけは全部スマホですよね。スマホがきっかけだったり、誰かがスマホを見て提案したり。

男性C いま言われて初めて全部スマホ発信だということに気づきました(笑)。もう当たり前になっていますね。

スマホは、これまで外出しなければできなかったことが家でできてしまうファーストプレイス化を進める一方で、移動を生み出すトリガーにもなっていることがわかりました。若者の外出には、“ネタシェア型(誰かからシェアされたネタに乗っかる)移動”、“ネタストック型(スマホにネタをストックしておいて機会があったときに引き出す)移動”、“その場サーチ型(外出先で検索してその後の予定を立てる)移動”、といったタイプの移動がありそうです。それでは、若者の間でどんな“新しい移動(MOVE)”が出てきているのか、これからの移動トレンドを後編で探ります。(後編に続く)

上記ライター彦谷 牧子
(Move Design Lab データアナリスト/シニア ストラテジック プランナー)の記事

ポストコロナ時代における交通メディアの価値と可能性<後編> 【野村総合研究所×jeki】共同研究結果から考える、新たな交通広告の在り方とは?...

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中里栄悠(Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー/TRAIN TV ブランドマネージャー)

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Move Design Lab

Move Design Labは生活者の「移動行動」を探求し、”新しい移動“を創発していくことをミッションに始動したプロジェクトチーム。その取り組みをシリーズで紹介していきます。

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  • 五明 泉
    五明 泉 Move Design Lab代表/恵比寿発、編集長

    1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。

  • 中里 栄悠
    中里 栄悠 Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー/TRAIN TV ブランドマネージャー

    2004年jeki入社。営業局、駅消費研究センター、アカウントプロデュース局を経て、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。シニア・ストラテジック・プランナーとして、メーカー、サービス、小売など幅広い企業のコミュニケーション戦略立案に携わる。

  • 彦谷 牧子
    彦谷 牧子 Move Design Lab データアナリスト/ シニア ストラテジック プランナー

    リサーチ・コンサルティング会社を経て、2009年jeki入社。JR東日本保有データの分析・活用業務に従事した後、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。化粧品、トイレタリー、通信機器等幅広いクライアントのコミュニケーション戦略をはじめとしたプランニングを担当。

  • 市川 祥史
    市川 祥史 Move Design Lab リサーチプランナー/ データアナリスト

    市場調査会社にて、企業のマーケティング課題の解決に従事。2017年jeki入社。コミュニケーションプランニング局配属。交通広告・キャンペーンの効果測定を中心に、クライアントの課題発見・解決を支援する。

  • 鷹羽 優
    鷹羽 優 Move Design Lab ブランドコンサルタント

    ブランド戦略を専門とし、菓子・飲料・生活雑貨・人材など多くのブランド開発、リブランディングを手掛けた後、2018年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。ブランドマネジメントの観点からコミュニケーション立案を行う。

  • 松本 阿礼
    松本 阿礼 駅消費研究センター研究員/お茶の水女子大学 非常勤講師/Move Design Lab・未来の商業施設ラボメンバー

    2009年jeki入社。プランニング局で駅の商業開発調査、営業局で駅ビルのコミュニケーションプランニングなどに従事。2012年より駅消費研究センターに所属。現在は、駅利用者を中心とした行動実態、インサイトに関する調査研究や、駅商業のコンセプト提案に取り組んでいる。

  • 渡邉 裕哉
    渡邉 裕哉 Move Design Lab ストラテジック・プランナー

    2020年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。飲料、トイレタリー、ホテルなどのプランニングを担当する。

  • 明山 想
    明山 想 Move Design Lab コミュニケーションプランナー

    2021年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。BtoB、トイレタリー、クレジットカード会社などのプランニングを担当。

  • 片山 晴貴
    片山 晴貴 Move Design Lab コミュニケーションプランナー

    2021年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局配属。 家電、損害保険、不動産などのプランニングを担当する。