OOH(Out of Home)のシェアラビリティについて
~OOHメディアとSNS拡散の関係性~

Move Design Lab VOL.84

OOHとは本来、人々の移動の動線上で、企業の商品やサービスに触れさせることによって気付きを与えるメディアで、マスメディアではリーチが難しくなった特に若年層に対して、効率的にメッセージを届けることが期待されるメディアとされています。

近年、街を歩いていると、OOHのポスターやデジタルサイネージ広告を、スマートフォンのカメラで撮影している光景を、よく目にするようになった気がします。そればかりかOOHの広告が、SNS上でシェアされ、バズるといった二次拡散という現象も起こっているようです。

今回は、そんなOOHとSNSへの投稿・拡散の関係性がテーマ。一体どれほどの人がOOHをSNSに投稿したことがあるのか? また、二次拡散に至りやすいコンテンツはなにか?
まさに、〈OOHのシェアラビリティ〉について、アンケート回答の結果から定量的に分析・検証してみたいと思います。

街中のOOHの撮影経験

まず最初に、スマートフォンのカメラで街中のOOH広告を撮影したことがあるかを全世代に聞いてみたところ、10.0%の方が「撮影したことがある」と答えました。(図1)

次に、撮影したことがあると答えた方々の性年代の内訳を見てみます。(図2)

性年代別で最もスコアが高かったのは、18~29歳の女性という結果となりました。
次いで、18~29歳男性、30代女性という順です。この結果から若年層ほど、OOHを撮影しやすい、ということが言えそうです。一方で、年齢が上がるに従ってOOH撮影経験も下がるのかと思いきや、50代・60代でも一定の経験層がいることが分かります。

街中でOOH広告を撮影した理由と、その中身

次に、街中でOOHを撮影した理由について聞いてみると(図3)、「好きなタレントやキャラクターだったから(33.3%)」という回答が最も高く、1/3の人が好きなタレントやキャラクター目当てでOOHを撮影しているという結果が得られました。「友人や知人に見せるため(23.3%)」「見つけた記念として(22.5%)」という回答が続き、OOHがコミュニケーションの一端を担っていることも垣間見えました。
また、「広告の内容(商品・サービス・イベントなど)に興味を持ったから(22.5%)」「広告の内容(商品・サービス・イベントなど)を忘れないように(20.0%)」という広告そのものに対しての回答も上位にあり、OOHが商品の興味喚起に寄与していたことも窺えます。一方、少数派の意見として、「デザインが好み」「懸賞応募」というような声が聞かれました。

さらに、OOHに登場した人物やキャラクターが、どんなものだったのかを聞いてみました。(図4)
最も高かったのは「アニメや漫画のキャラクター(25.0%)」、次点として「歌手・アーティスト」「企業の公式キャラクター」「企業の商品」(すべて17.5%)という結果となりました。

OOH広告のSNS投稿

最後に、撮影したOOH広告をSNSに投稿したことがあるか。その経験を聞いてみます。(図5)

自身で撮影したOOHを、SNSに投稿したことがあると回答したのは、実に49.2%となりました。約半数が投稿の経験があることから、自身の周りにいる友人や知人間で話題にするだけではなく、OOHがSNSと非常に相性のいい関係性にあることが言えそうです。

性年代別で回答の詳細を見てみると(図6)、男性18~29歳ではOOHを撮影した人のうち80.0%がSNSに投稿した経験があると回答しています。
女性30代(69.2%)、男性30代(60.0%)、女性18~29歳(58.8%)と若い世代で、OOHをSNSに投稿した経験が非常に高いことが分かりました。

まとめ

OOHは、直接視認効果だけではなく、SNSへの二次拡散という波及効果が狙えるブーストメディアであった。今回、特に若年層世代で、SNSへの波及効果が高いという結果が得られました。

OOHというと、首都圏や名阪など、人口密集地域におけるエリアマーケティングの側面がいまだに強い傾向にありますが、時代性やトレンドに合ったキャスティングやクリエイティブ制作を行うことで、SNS上への波及効果が期待でき、その出稿効果を全国規模に広げることもできるという可能性を示せたと言える結果でしょう。

広告主や広告会社のアイデア次第で、OOHの可能性は無限大に広がっているのかもしれません。

上記ライター鷹羽 優
(ブランドコンサルタント)の記事

Move Design Lab

Move Design Labは生活者の「移動行動」を探求し、”新しい移動“を創発していくことをミッションに始動したプロジェクトチーム。その取り組みをシリーズで紹介していきます。

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  • 五明 泉
    五明 泉 Move Design Lab代表/恵比寿発、編集長

    1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。

  • 中里 栄悠
    中里 栄悠 Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー/TRAIN TV ブランドマネージャー

    2004年jeki入社。営業局、駅消費研究センター、アカウントプロデュース局を経て、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。シニア・ストラテジック・プランナーとして、メーカー、サービス、小売など幅広い企業のコミュニケーション戦略立案に携わる。

  • 彦谷 牧子
    彦谷 牧子 Move Design Lab データアナリスト/ シニア ストラテジック プランナー

    リサーチ・コンサルティング会社を経て、2009年jeki入社。JR東日本保有データの分析・活用業務に従事した後、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。化粧品、トイレタリー、通信機器等幅広いクライアントのコミュニケーション戦略をはじめとしたプランニングを担当。

  • 市川 祥史
    市川 祥史 Move Design Lab リサーチプランナー/ データアナリスト

    市場調査会社にて、企業のマーケティング課題の解決に従事。2017年jeki入社。コミュニケーションプランニング局配属。交通広告・キャンペーンの効果測定を中心に、クライアントの課題発見・解決を支援する。

  • 鷹羽 優
    鷹羽 優 Move Design Lab ブランドコンサルタント

    ブランド戦略を専門とし、菓子・飲料・生活雑貨・人材など多くのブランド開発、リブランディングを手掛けた後、2018年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。ブランドマネジメントの観点からコミュニケーション立案を行う。

  • 松本 阿礼
    松本 阿礼 駅消費研究センター研究員/お茶の水女子大学 非常勤講師/Move Design Lab・未来の商業施設ラボメンバー

    2009年jeki入社。プランニング局で駅の商業開発調査、営業局で駅ビルのコミュニケーションプランニングなどに従事。2012年より駅消費研究センターに所属。現在は、駅利用者を中心とした行動実態、インサイトに関する調査研究や、駅商業のコンセプト提案に取り組んでいる。

  • 渡邉 裕哉
    渡邉 裕哉 Move Design Lab ストラテジック・プランナー

    2020年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。飲料、トイレタリー、ホテルなどのプランニングを担当する。

  • 明山 想
    明山 想 Move Design Lab コミュニケーションプランナー

    2021年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。BtoB、トイレタリー、クレジットカード会社などのプランニングを担当。

  • 片山 晴貴
    片山 晴貴 Move Design Lab コミュニケーションプランナー

    2021年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局配属。 家電、損害保険、不動産などのプランニングを担当する。