「バリアフリー&シームレス」なOOHへ!
ーデジタル時代の交通・屋外広告「Universal OOH」の可能性ー

OOHメディア VOL.1

写真左より
ジェイアール東日本企画(jeki) データ&デジタル戦略室 担当部長 近藤 尚志
jeki インタラクティブ・コミュニケーションズ マネージャー 大和田 貴普
ジェイアール東日本企画(jeki) OOHメディア局 OOHメディア第一部 兼 OOHメディア第二部 担当部長 谷内 洋之

生活者の行動や企業のマーケティング活動の変化により、メディア環境は大きく様変わりし、OOH(交通広告や屋外広告など)にも新たな変化が求められている。こうした環境変化を踏まえ、jekiでは「より分かりやすく、使いやすいメディア」を目指す、jekiグループ内連携による事業「Universal OOH」を発足。課題解決や価値創出に多面的に取り組み、デジタル広告専業会社などパートナーとの連携を深めることなどで、OOHのアップデート・新たな価値創出を目指している。事業のコアメンバーの3名がそれぞれの立場から見た課題や可能性、今後の展望などについて語り合った。

デジタル時代のニーズに対応する「バリアフリーなOOH広告」を創出するために

ーーUniversal OOH事業の概要について、開始された経緯や背景を含めてお聞かせください。

近藤:jekiは発足以来、交通広告を中心としたOOH事業を推進してきましたが、デジタル広告の普及や消費者の購買行動の変化など環境が激変するなかで、OOHが果たすべき役割も大きく変化していることは間違いありません。その将来的な方向性を見定め、メディアとしてアップデートし続けるには、業種や規模を問わず、様々なバックグラウンドを持った広告主、デジタル広告専業会社等の新規パートナー、そして生活者目線などの多面的な視点に基づいて課題を捉え、改善する環境を整えることが必要だと考えました。そこで、まず繁雑さを解消し、広告主やセールスパートナーの裾野を広げ、様々な活用機会を生み出せるよう、OOHのバリアフリー化を念頭に、「Universal OOH」を立ち上げたというわけです。

谷内:OOHのプランニングや顧客への提案などを担当してきた私も、近年のビジネスやマーケティングの変化を直に感じてきました。求められる商品やサービスが変わるなか、それでもOOHは世界的に需要が伸びており、国内でも十分に価値を発揮できるメディアだと確信しています。そのポテンシャルを十分に引き出し、既存の広告主の課題解決に貢献しながら、新たな広告主にもご利用いただくOOHとなるには、デジタル対応が必要であることは間違いありません。「Universal OOH」では、会社やセクションの枠組みを超えて近藤さんや大和田さんと連携して、商品開発や提案につなげたいと思っています。

大和田:私はデジタルメディアのバイイングを担い、OOHとはやや離れた場所にいました。しかし近年になって、デジタルメディアといえばPCだったものが、モバイルが登場し、さらには動画広告が人気となり、テレビと融合し、もはや現実世界に重なりはじめています。世の中のインフラがデジタル中心となった今、「デジタル広告=PC・モバイル」という固定観念にとらわれなければ、OOHも顧客の課題解決のための選択肢になりうると改めて気づきました。一方、デジタル広告の世界でも、いわゆる「獲得型」のようなコンバージョン目的の広告だけでなく、動画広告を中心とした「認知型」広告の需要も高まっています。そのなかで、顧客の課題を解決するデジタルソリューションの1つとして提案できればと考えています。

シンプルなパッケージや煩雑さの解消・指標設定で「分かりやすさ、使いやすさ」を訴求し、利活用を拡大

ーー「OOHのバリアフリー化」というお話がありましたが、具体的には、どのようなことを活動や事業として展開していくのですか。

近藤:今回、事業コンセプトとしての一番の狙いは、”Universal=普遍的”と名付けているように、OOHを「誰でも機会に応じて活用しやすく」することです。メディアサイドがより良いものにしていく努力をしている一方で、多くの広告主に使ってもらわないことにはその課題や方向性が明確になりづらい。これまでOOHの取り扱い実績が少なかったデジタル広告専業会社などセールス連携を強化しチャネルの拡大を図るとともに、媒体社の垣根を超えたシンプルな商品設計や出稿側には関係のない入稿の手間や煩雑なルールを解消するなど、「まず、今実現できる使いやすさ」を提供することで、これまでOOHの出稿実績のない広告主の新しい活用機会を拡げる一歩になると考えています。

大和田:プロジェクトの開始時に、デジタル広告専業会社にヒアリングを行ったのですが、8〜9割が「交通広告をよく知らなかった」との回答でした。しかし、Universal OOHのコンセプトを伝えると、その8〜9割が「連携したい」「提案したい」とおっしゃられるんです。つまり、「知らなかったから提案していなかった」わけですね。その理由は、私も実感があるのですが、そもそもOOHはどのような特徴や商材があるのかがわかりにくく、申し込みや入稿フローも見えにくい。さらには料金体系なども複雑で、なかなか新規に提案がしにくいということがありました。

谷内:この結果を受けて、OOHは商材としての「分かりやすさ」がまず大切だと感じました。そこで第一弾の商品として用意したのが、シンプルなパッケージプランです。首都圏の生活・通勤の動脈路線から4電鉄203駅476面のデジタルサイネージをネットワーク化し、それを価格帯の異なる2セットにしたものです。これまで媒体社である鉄道会社ごとに申し込みを行い、異なる規定・仕様に合わせて別々に入稿データを作成する必要があったものを、グループ会社である、JR東日本アイステイションズと連携してワンストップで申し込みからデータ編集まで行えるよう仕組みを構築しました。

大和田:鉄道会社や路線ごとに選択するというのは煩雑でわかりにくいですし、データの作成には慣れていても、OOHの規定の複雑さは取り扱いのないデジタル広告専業会社にとってはハードルが高いものです。そして、デジタル広告に関わる人が最も気にするのがインプレッションなど効果の可視化です。今回、デジタル界隈の方々にもなじみのある効果の数値化を意識したのも挑戦的な試みですよね。

谷内:そうですね。デジタル広告専業会社へのヒアリングでは「OOHの効果指標がわかりにくい」という声が多く、効果の可視化は大きな課題でした。そこで、Webサイトのように広告に接触した人の数まではカウントできないまでも、駅の乗降員数や改札口別利用者数、媒体前通路の通過人数などの数字に、モニターのサイズや放映時間なども考慮し、リーチを推測できるような数字を算出することにしました。

近藤:データの可視化は業界的にも大きな課題と言われていますが、何を標準指標にするか、データの算出、効果測定方法など、まだ確立していません。「Universal OOH」では実際に広告を運用し、課題やニーズをあぶりだしながら、OOHの価値を提示するために必要なデータや算出方法、データの有効な取得方法などについても検討していくことを想定しています。

ステークホルダーと共にOOHの新たな価値創造とデジタル広告との融合を目指す

ーー今後の展望についてお聞かせください。

谷内:まだ始まったばかりなので、将来の理想イメージはもとより、課題がまだ十分には見えていない状況です。そこで、まずは「どうアップデートするか」という方向性を正確に捉えることに集中していきたいと考えています。そのためにも、まずは使い勝手を改善しながら、これまでOOHをご利用いただいていなかった方も含めて、多くの方に使っていただければと思っています。

大和田:私自身、長くデジタル広告の世界にいて、ずっとOOHとの相性がいいと言われながらも連携できていなかったことを残念に思っていました。まだスタートしたばかりですが、この事業でようやく構想が形になりそうで楽しみにしています。今回は申し込み・入稿・効果をパッケージ化することでOOHのハードルを下げるというアプローチが中心ですが、効果指標も含め、デジタル広告の考え方を踏襲して取り組めるものになったと思います。現在のメディアに加えて「Universal OOH」を試してみたいと思われたら、ぜひともJIC(jekiインタラクティブ・コミュニケーションズ)までお問い合わせください。

谷内:新たな顧客企業にOOHが本格的に利用されるようになれば、掲出期間や放映時間など、従来では当然とされてきたものが課題となる可能性もあります。媒体社に実際にヒアリングしてみると、意外にも広告主の声が届いていないことがわかったので、広告主や販売パートナーの声を聞きながら、媒体社にもニーズをフィードバックし、OOH全体の価値向上に貢献していきたいと考えています。そして、さらに多くの媒体社、屋外のOOHの事業者の方にもご興味を持っていただき、「Universal OOH」にも参画いただけるとうれしいですね。

近藤:真の意味での「Universal OOH」を実現するためには、新たなサービスの開発や提供方法・取引プロセスの改善、新規セールスパートナーとの連携、クリエイティブ検証や求められるコンテンツの提供など、多面的に取り組む必要があります。課題に基づいて理論や考え方を整理し、各テーマごとに外部パートナーや専門家の方々とも連携し実証を進め、しっかり検証しながら改善・アップデートしていきたいと考えています。その中で、たとえばOOHの効果指標としてのデータが整備され、OOHだけでなくメディアの垣根を超え、デジタル広告と連携できるようになると、さらに可能性が広がるかもしれません。それ以外にも各方面から多くのご意見・お問合せを頂いていますので、考えていなかったような新しい試みにも、どんどんチャレンジしていきたいですね。

大和田:技術的にはOOHとデジタル広告のシームレスな融合もかなうのではないかと期待しています。しかし、様々な調整が必要なのは確かで、単につなげればいいというものでもないですからね。

近藤:そうですね。たとえば、OOHはバスや電車等の公共交通機関利用時に多くの人々が目にするパブリックメディアとして、ガイドライン等に則り厳しく審査されてきました。一方、デジタル広告は比較的ルールは緩やかで、単純に両者をシームレスにしてしまうとトラブルは目に見えています。これまでのカルチャーやルールを踏まえ、環境やガイドラインを整備しながらオープン化、シームレス化を進めていくことも一つの大きなポイントになるでしょう。そのあたりの議論も行いながら、取り組みを進めていきたいと思います。

ーー来たるべきデジタルとリアルの融合に向けて、「Universal OOH」は布石となる取り組みでもあるのですね。まずは第一弾の反応から、今後の展開に期待したいと思います。本日はありがとうございました。

近藤 尚志
データ&デジタル戦略室 担当部長

2005年jeki入社、営業職などを経てデータ&デジタル戦略室に着任。全社のDX推進や事業開発などを担当。Universal OOHでは、プロデュース・企画を担当。

谷内 洋之
OOHメディア局 OOHメディア第一部 兼 OOHメディア第二部 担当部長

2005年jeki入社。OOHを担当し、JR東日本媒体はもとより、全国私鉄媒体・屋外広告のバイイング、プランニング業務を行う。
2019年からはOOHメディア局OOHメディア一部、二部兼任となり、より幅広く全国OOHに携わる。
Universal OOHでは、主幹として媒体社との折衝、商品開発等を担当。

大和田 貴普
jeki インタラクティブ・コミュニケーションズ マネージャー

2006年jeki入社。デジタル領域の広告プランニング担当。JR東日本・銀行・人材・不動産案件等、多数担当。銀行案件でDMPの導入とデータをつかった広告配信を実施。現在、デジタル広告のプランニング全般業務と交通広告や他メディアと相性の良いデジタルメディア広告企画を推進中。
Universal OOHでは、デジタルエージェンシーとの折衝、商品開発等を担当。