
移動の未来について考えながら“新しい移動”を構想するプロジェクトチーム「Move Design Lab(MDL)」は、18~79歳の男女1,000人に対し、「今月のお出かけ意欲」を得点化してもらう調査を毎月実施しています。前回の記事では、計測した1年間分のデータからお出かけ意欲(Move Mind Index)の傾向を分析。結果は男低女高。特に20~40代の働き盛りの男性でお出かけ意欲の低さが目立ちました。筆者自身もこのセグメントに該当しますが、どうにかできないものか…と考えてみました。

テレワークが移動意欲向上のカギ?
最初に結論を申し上げますが、この働き世代の移動意欲向上施策の1つとして「テレワーク」があるのではと筆者は考えました。
まずはテレワークについて簡単にふれたいと思います。テレワークはICT(情報通信技術)を利用して、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を指します。2019年4月に働き方改革関連法が施行されたことも後押しし、多様で柔軟な働き方が可能となるテレワークを導入する企業が徐々に増えてきています。また、2020年のオリンピック・パラリンピックを見越した首都圏の交通混雑回避の解決策としても注目を集めています。
テレワークという働き方があることは浸透してきたものの、導入している企業はまだ少なく、多くのワーカーは毎日決まった場所に通勤しているのが現状です。自らの意思で勤務地を選んでいるのではなく、会社があるからそこに行く。日常動線が固定化されている人も多く、日々の通勤に“新鮮さ”を感じる人は少ないのではないでしょうか。
場所を意識することで生まれるMOVE

ではテレワークが進むとなぜ移動意欲向上につながるのか。
突然ですが、外出先や観光先で「せっかく〇〇に来たんだから」というセリフを言ったことがある人は多いのではないでしょうか。その後、当初の予定になかった場所にちょっと寄り道。スマートフォンやSNSで誰でも簡単にリアルタイムに情報が得られるようになった現代。この外出先からの派生MOVEは以前と比べて非常に起こりやすくなったMOVEの1つと考えています。移動減少社会が進む今、非常に伸びしろがあるMOVEの1つといえるでしょう。
この「せっかく〇〇に来たんだから」というMOVEを引き起こす条件は何でしょうか。言葉の通り「場所を意識すること」が重要になります。意識とはいってもそこまで特別感が必要かと言えばそうではないと思います。観光地に限らず、得意先への訪問の帰り道でもこの「せっかく…」は起こります。「ちょっといつもと違う場所」くらい意識させることができれば、MOVEを引き起こす条件としては十分だと考えます。
働き方改革は、MOVE改革にもつながる。
テレワークが進むとワーカーの生活はどう変わるのでしょうか。
現在の1拠点に押し込められた働き方ではなく、自宅・サテライトオフィス・コワーキングスペースなど状況にあわせてワーカー自身が働く場所を選べる社会になっていれば、「今日は新宿で働こう」「今日は渋谷で働こう」といったように、自身の生活や予定に合わせてワーカーが主体的に働く場を選べるようになります。
結果、勤務先に選択肢を持つことで固定化された動線に変化ができる。また、自ら働く場所を選ぶことで場所を意識するようになる。働く場所に対しても「ちょっといつもと違う場所」という意識が生まれ、「せっかく来たんだから」というMOVEが起こりやすい社会になるのではないでしょうか。

働き方改革は、MOVE改革にもつながる。働き方改革元年ともいわれる2019年。環境の変化が生活者の移動にどのような影響をあたえていくのか、引き続きレポートしていきます。
- 調査概要
- 調査方法:
- インターネット調査
- 調査対象:
- 18~79歳の男女1,000人
- 調査時期:
- 2017年11月~2018年10月のデータを使用。調査は毎月初旬に実施
五明 泉 Move Design Lab代表/恵比寿発、編集長
1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。