純広告×運用型で注目を集めるPMP
テレビ視聴データ活用で実現する独自の価値とは?

jekiデジタル VOL.7

写真左:株式会社Data Chemistry 取締役 真弓 省吾 様
写真右:jeki メディアマーケティングセンター 部長 田久保 英樹

ニーズが高まるデジタル広告において、近年、大手企業を中心に「PMP(プライベートマーケットプレイス)」への関心が高まっています。そのような中、jekiでは、放送局の見逃し配信を対象とした「jeki-PMP」の提供を開始しました。
「PMP」「jeki-PMP」は、今までのデジタル広告の取引手法・配信手法とは何が違い、どのようなニーズや可能性があるのでしょうか。「PMP」におけるデータ活用もサービス領域としているData Chemistry社の取締役 真弓省吾氏と、jekiメディアマーケティングセンター 部長であり、Data Chemistry社にも籍を置く田久保英樹が、データとメディアそれぞれの観点から語り合いました。

広告の品質と効率的な運用がかなう“いいとこどり”のPMP

田久保:jekiでは、今年1月に、Data Chemistry社データを活用した「jeki-PMP」のリリースを出させていただきました。Data Chemistry社は、jeki、ADK MS、東急エージェンシー3社の出資により設立された会社であり、「PMP」にも設立早々から取り組んでいたところですが、今日は、Data Chemistry社の取締役である真弓さんと、「PMP」をテーマにいろいろお話ができればと思っていますので、よろしくお願いいたします。
まずは、真弓さんのご経歴やData Chemistry社への関わりなどについてお聞かせいただけますか。

真弓:90年に旭通信社に入社してマーケティングや営業に携わり、一度広告業界を離れ、コンサルティング会社に入り、まちづくりコンサルを行った後、2001年に東急エージェンシーに入りました。ずっと“マーケティング畑”で、ここ数年はデータ分析に関わり、Data Chemistry社には2019年の設立時から参画することになりました。なぜか“新しいこと”の担当になることが多く、データマーケティングもその流れなのかと思っています。田久保さんはjekiのメディア局でテレビ・ラジオをずっとご担当されていたそうですね。

田久保:はい、テレビ・ラジオ一筋十数年です。そして、私も「新しいことに興味はあるか」と聞かれて二つ返事で現在所属しているメディアマーケティングセンターの立ち上げから関わることとなりました。

真弓:メディア側から見た「PMP」の魅力を、田久保さんはどう捉えていますか。

田久保:メディアが予め限定されている点では、掲載面を指定して出稿する従来の「予約型の純広告」と同じであり、そこにデータ分析を活用して広告を効率的に配信する“プログラマティック(運用型)”をプラスしたという認識です。なので、メディア側から見ると本当に魅力的で、良質なコンテンツに効率的に広告が打てる、いいとこ取りのサービスだと思っています。

見逃し配信への予約型広告は、各放送局ごとに販売されています。しかし、「PMP」は「視聴者=人」がターゲットなので、局を横断して配信できることが大きなメリットです。その意味で、データ活用が大きな価値になると認識しています。

真弓:従来のテレビの“枠を買う”という発想から、“見ている人をターゲティングする”という発想への変化は、注目すべき傾向の一つですね。見逃し配信は、テレビのコンテンツでありながら、閲覧はパソコンやスマートフォンがメインというマスメディアとデジタルの融合であり、「PMP」は両業界の人たちで活性化するのは間違いないでしょう。

田久保:マスメディアとデジタルの融合については、生活者の方が先行していますからね。見逃し配信を通じて、テレビのコンテンツをPCやスマホでと、自分の好きな時間帯に好きな場所で楽しむというニーズが拡大しています。そこに、従来のテレビ広告が担ってきたブランディングや認知獲得などの役割を寄り添わせる必要があります。「PMP」によって、これまでデジタル広告の品質に懸念のあった企業でも安心して広告を出すことができますし、テレビCMと同じフォーマットなので、視聴者にも違和感なく受け入れられ、スキップができず、音声も流れることなど、視聴完了率や訴求力という点からも、広告の効果が期待できます。

テレビ視聴データを活用した独自のターゲティング配信が可能なPMP

真弓:見逃し配信のコンテンツは、テレビ以上に「見ようとして見にきている」ので、モチベーションが高い視聴者といえます。そこは広告の出稿先として大きな強みです。

田久保:そうですね。世代によっては近年「テレビを見なくなった」といわれることも多いですが、まだ伝播力は絶大ですし、何気なくテレビを見ていても、その情報に興味を引かれ、行動のキッカケになることも多い。広告もテレビで「短時間で多くの人に届ける」、ネットで「見にきた人に確実に届ける」というように連携できれば、高い効果が期待できると思っています。

真弓:私も「PMP」は、漫然と人気コンテンツに広告を出すというより、企業側の顧客データ分析を反映させ、「広告を見せたい人が見るコンテンツに広告を出せる」のが強みだと思います。そんな強みに加え、Data Chemistry社としては、企業のサイトにタグを設置させていただき、サイト来訪者のテレビの見方やCM接触の有無・場所などを分析して「型」を抽出することができます。それによって、「PMP」の広告配信における独自な切り口やアプローチを提案することができるようになります。

また、通常、「PMP」はクリックによるサイト遷移ができないので効果検証が難しいのが難点ですが、Data Chemistry社データを活用した「PMP」なら、広告のインプレッションタグと、企業のサイトに設置させていただくタグにより、「広告を見た人がサイトに来訪したか」も検証できます。これは他社にはできない検証で、「DC Catalyzer」の大きな価値だと思っています。そして、一番重要なのは、その検証結果をふまえ、どう戦略や活用法を考えていくかという点だと思っています。そこは営業現場の提案力などにかかっていますね。

田久保:そうですね。DC Catalyzerで取得できるテレビ視聴データを活用すれば、テレビCMに接触した人に「PMP」で再度当てて、興味や関心を持ってもらう、逆にテレビCMで接触できなかった人に当てて新たなリーチを獲得するなど、打ち手はいろいろ考えられますから、広告主のニーズに応じて提案していきたいと思います。たとえば、NHKのEテレの子ども番組をよく見ているセグメントに対して、「PMP」で広告を出すことも可能です。Eテレに広告は出せなくとも、Eテレを見ている人には広告が出せるというわけです。

真弓:その考え方は面白いですね。となると、民放ドラマでは出演する俳優が登場するCMが流れることが多いですが、「NHKの大河ドラマを見たというセグメント」に、出演俳優が出ているCMを「PMP」で当てるなど、そんな提案もできるでしょう。

動画広告の組み合わせで新たな広告コミュニケーションを実現

田久保:Data Chemistry社でも、「PMP」のいろいろな提案や実績が積み重なってきているところですが、効果的な提案事例をあげるとすると何がありますかね?

真弓:某キャンペーン広告でのYouTubeとの使い分けや連携は、かなり効果的だったと思いますよ。動画広告で先行しているのはYouTubeですが、テレビの見逃し配信とはコンテンツの品質に加え、視聴者の属性や性質が異なっているので、「PMP」とは全く異なるメディアといえます。「PMP」とYouTubeとを組み合わせることで、広くリーチをとることもできれば、深掘りして訴求することもできますよね。

もともと、「PMP」は、単体のセールス商材、一つの閉じられた施策としての販売が主だろうと想定していましたが、プランナーは、「人」を見ながらメディアを組み合わせて様々なコミュニケーションを図ろうとしているので、「PMP」とYouTubeのように、コミュニケーション全体の中にうまく絡めるような提案を継続的にしていくのが良いと思いますね。
ただ、クライアントは、どうしても「PMP」のように新しいメディアには慎重になるので、『Data Chemistry社データを活用した「PMP」ならば、効果検証ができる』というような訴求をするのが大事だと思いますね。効果検証ができるという部分で、興味を持ってくださったという例もありますしね。

田久保:私も「検証できる」ことにクライアントが魅力を感じているのは実感しています。また、シンプルにテレビを視聴していない人に訴求したいという目的で、YouTubeには躊躇していたが「PMPなら」というケースもあります。
そして、M1やF1など、性・年齢によるセグメントだけではなく、「番組視聴状況に応じたターゲティング」で配信ができることに興味を持たれるクライアントも多いです。テレビの延長線上にあるものとして、これまでデジタル広告に馴染みのなかったクライアントに向けての訴求もできれば、デジタル広告配信を主としているクライアントに向けては、新しいターゲティング広告としての訴求もできるかと考えています。

真弓:まさにそこが「PMP」の狙いであり、可能性だと思います。テレビ広告の安心感と、テレビ視聴データによるターゲティングというデジタル広告の世界になかった新しい切り口。双方からプレーヤーが入り、他の広告と組み合わせて新しいコミュニケーションが実現できることを期待しています。

先駆的な顧客とともに事例をつくり、市場マインドを変えていく

真弓:これからの「PMP」はどのように変化していくと思われますか。また、「PMP」が広告メディアとしてより魅力的になるためには、どのような課題があると思われますか。

田久保:まず最初の壁は、テレビ広告をメインとされてきた方々に、「PMP」の価値を理解いただくことですかね。既存のテレビCMのように「必ずここに出る」という枠を押さえる予約型に対して、当てたい人に対して効率よく出す先を変動させる「PMP」のような運用型はどのようなメリットがあるのか。その上でData Chemistry社データを活用した「PMP」の差別化ポイントである「検証できる価値」を理解いただくというように、突破すべき段階が複数ありますね。施策にもよるかと思いますが、難しいところです。

真弓:どうしてもテレビ広告の世界には、デジタルアレルギー的なものがある方はいますからね(笑)。「この枠はM1が見ているはずだからこれでいい」というように枠を買ってきた人は、「面倒くさい」と思う方もいるでしょう。あと、テレビ枠はスポットでも「何本、どの番組に出るか」などが予めわかるけれど、「PMP」はどのコンテンツに出るかがわからない。そこが不安だという人もいますね。

田久保:正直、テレビ関係が長いので、かなりわかります(笑)。枠でなく「人」がターゲットなので、出先が変わるのは当然なのですが、そこはモヤモヤするでしょうね。

真弓:となると、やはり地道に事例をつくって見せていくのが、結果的には一番近道になるのかもしれません。そこで、一緒に先行事例をつくっていくクライアントをどう募るか。むしろクライアント側で、オンライン・オフラインを含めた全体のコミュニケーションプランを考えている人の方が、知見や見識が進んでいるかもしれませんね。そうした方に、なぜここに広告を出すのかが「わからない」、効果がどうだったのかが「わからない」、だったものが、根拠が明らかで、検証もできる、「わかる×わかる」ものとして提案していくのが良いでしょうね。

田久保:その表現はわかりやすいですね。ぜひ、私も提案の際に使わせていただきます(笑)。おそらくアレルギーがある方がいる一方で、興味のある方、試してみたい方も多いと思うんです。運用型は知見を溜めていくことで効果も上がっていくので、取り組みが早いほど効果も早く得られる。そして、フィードバックを受けながら「PMP」自体も改善されていきます。ぜひとも多くのクライアントの方に活用いただければと思っています。

真弓:今後の「PMP」の可能性としては、活用法なども洗練されていくと思いますが、広告の出し先としてもテレビの見逃し配信だけでなく、「出どころが明らかで品質が担保されているメディア」であればいいので、今後はラジオなどの音声メディアや、交通メディアなど、安心して広告を出せる場・メディアを充実させていくことになるでしょう。デジタルはターゲティングができることで拡大してきましたがブランディング目的の広告が増えれば掲載面の課題は大きい。その問題を解決する一つの手法として「PMP」の可能性は大きいと思います。

田久保:マスメディアとデジタルメディアの連携・融合という、「PMP」はまさにその真中にいるわけで、私もそれぞれに片足ずつ入れた者として、うまく橋渡しができれば幸いです。さらに、最近ではネット結線された大画面のテレビで見逃し配信を楽しむ人が増えたり、ユーザーの視聴動向もどんどん変わっていくので、私たちも走りながら考えていかないとならないですね。

真弓:ぜひ、一緒に協力しあって盛り立てていきましょう。

田久保:どうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

ジェイアール東日本企画オリジナルPMP ※「jeki-PMP」とは

「jeki-PMP」は、テレビ局の見逃し配信動画を対象に広告を配信するPMP※に対し、Data Chemistryが保有するDMP「DC Catalyzer」を連携させ、テレビ番組やCMへの接触状況等の分析をもとにターゲティング配信を行うという、jeki独自のPMPです。

広告の配信対象が、安心・安全を担保した質の高いテレビのコンテンツであることから、確実な視聴者のビューアビリティを得られるというメリットはもちろん、Data Chemistryや広告主のデータを活用・連携させることによって、より多様な配信ニーズに対応します。

※PMP (Private Market Place) : 参加できる広告主とメディアが限定されたプログラマティックな広告取引市場

真弓省吾
株式会社Data Chemistry 取締役
広告会社、コンサルティング会社を経て、2001年東急エージェンシー入社。
マーケティング局で多くのクライアントを担当。08年CRMソリューション部を立ち上げ、同部部長。
その後、データドリブンマーケティング領域を担当、18年データマネジメント局局長。
19年Data Chemistry社立ち上げに参画、取締役として同社兼務。

田久保英樹
jeki メディアマーケティングセンター 部長
広告会社を経て、2005年jeki入社。メディア局テレビラジオ部で放送局及び業務推進担当。
2019年メディアマーケティングセンター部長、Data Chemistryセールスプランニングチームを兼務。

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