戦略としてのOUTDOOR
~買い物の38.3%は移動中に決めている~


「生活者は、買い物をいつ決めているのか?」
このシンプルな問いについて私たちが調べはじめたのは、いまから10年前の2009年のことでした。2012年に上梓した書籍「移動者マーケティング」(日経BPコンサルティング)でも紹介したこの問いについて、私たちはいま改めて注目していきたいと考えています。本記事では昨年11月に実施した調査結果をレポートさせていただきます。

そもそも私たちが買い物を決めるタイミングに注目する背景には私たちの身の回りの店舗環境の変化があります。
流通の長い歴史の中でも大きな変化の一つとして、1990年代から爆発的に普及したコンビニエンスストアの存在があげられます。コンビニはその圧倒的な利便性により、都市生活者の毎日の生活に欠くことのできない存在へと一気にかけ上がっていきました。そして2000年代に入るともう一つのエポックがありました。それは都市圏の主要駅を中心に、駅ビルやエキナカが急速に拡大していったことです。鉄道各社は人口減少社会を前に、成長の源泉の一つとして小売業を求めました。いまの駅ビル、エキナカの活況は論をまたないものと思います。

このコンビニと駅の商業施設化は、従来の主役だった百貨店やスーパー、GMS等とは決定的に違う点があります。それは生活者の日常の動線上に立地しているという点です。顧客が店に足を運ぶのではなく、店が顧客の生活動線上に近づいていったのです。集客型小売から誘客型小売へ。この変化は生活者の買い物行動を大きく変えていきました。
この大きな流れの中で、私たちは一つの仮説にたどり着きました。
それは、買い物は計画的にされるものから、徐々に非計画的、衝動的なものへと変わっていくのではないか?ということです。

そこで私たちは実際に買い物をした方を対象に調査を行いました。質問はいたってシンプルです。

「その買い物をしようと決めたのはいつですか?」

選択肢は
 1.そのお店を見たとき
 2.前にいた場所を出た後の移動中
 3.前にいた場所を出る直前
 4.前にいた場所にいるとき
 5.上記以外の当日中
 6.前日までに計画していた
の6択。
私たちは上記1と2を「移動中に決めた買い物」と定義しています。

東京駅30キロ圏居住者を対象にした2009年調査では、買い物の39.5%が移動中に決めていました。調査エリアを40キロ圏に広げた2014年調査では、同スコアは34.3%でした。首都圏生活者の買い物のおよそ3件に1件は移動中に決めていることが調査から浮かび上がってきたのです。

それから4年が経過した2018年。
わずか4年ですが生活者の買い物を取り巻く環境は日進月歩で変わっています。その中心はやはりネットショッピングでしょう。ネットショッピングは2000年に入って普及が進みましたが、ここ数年の成長は目覚しいものがあります。
ネットショッピングのインパクトはコンビニやエキナカのそれを凌ぐといっても過言ではありません。なにしろ思い立ったら手元のスマホですぐ買い物をスタートし、その気になれば10秒で完了できるわけですから。
ネットショッピングが生活者の日常に広がっていったこの4年で、リアルな買い物も何かしらの影響がみられるのではないか。そうした問題意識のもと、私たちは調査を行ないました。

<「首都圏移動と買い物調査2018」調査概要>
調査日:2018年11月9日~15日の1週間
調査方法:インターネットアンケート調査
調査対象:東京駅40キロ圏居住の20~59歳男女
集計買い物レコード数:400
調査モニター:株式会社マクロミルの家計調査サービス「MHS」
※特定の曜日や時間帯の買い物に集中しないよう、配信タイミングをコントロールした
※外食利用や家電製品などの耐久消費財の買い物も対象。ただし高額かつ購入に時間を要する家や自動車、保険等は対象外
※移動を伴う買い物が対象。ネットショッピングや出前等は調査対象外

さて、さっそく結果発表です。

さて、さっそく結果発表です。

移動中に決めた買い物は約4割。同じ調査エリア(東京駅40キロ圏)である2014年よりもその割合は増えていました。

2014年調査と比較したものがこちらです。

2014年調査と比較したものがこちらです。

「そのお店を見たとき」(緑)のスコアが6ポイントほど高まっていることが分かります。その一方で「前日までに計画していた」(黒)も増えています。この両極の増加は何を意味するでしょうか。もしかすると買い物は前もって計画するようなものと、その場で瞬時に決める衝動的なものとの二極化が始まっているのかもしれません。
尚、2014年調査は、調査エリア(東京駅40キロ圏)、調査対象(20~59歳男女)は今回(2018年)の調査と同様ですが、調査モニター、買い物レコード集計数、回収スキーム等が一部異なるため、参考値としてご覧いただければと存じます。

さて、ここでの詳細な分析や考察はあえて控えさせていただきます。というのも、実は今年、この調査を全国に拡大して実施する予定があるからです。

私たちMove Design Lab(MDL)では、活動の一つとして、マーケティング機会としての移動の可能性について探求しています。こちらはまた別の機会にご説明させていただきます。

「戦略としての移動」「戦略としてのOUTDOOR」についての私たちの情報発信にご期待ください。

Move Design Lab

Move Design Labは生活者の「移動行動」を探求し、”新しい移動“を創発していくことをミッションに始動したプロジェクトチーム。その取り組みをシリーズで紹介していきます。

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  • Gomei.Izumi
    五明 泉 Move Design Lab チーフプロデューサー/ Move Design Lab代表

    1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。

  • Nakazato.Eiyu
    中里 栄悠 Move Design Lab ストラテジック・プランナー/プロデューサー

    2004年jeki入社。営業局、駅消費研究センター、アカウントプロデュース局を経て、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。シニア・ストラテジック・プランナーとして、メーカー、サービス、小売など幅広い企業のコミュニケーション戦略立案に携わる。

  • 彦谷 牧子
    彦谷 牧子 Move Design Lab データアナリスト/ ストラテジック・プランナー

    リサーチ・コンサルティング会社を経て、2009年jeki入社。JR東日本保有データの分析・活用業務に従事した後、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。化粧品、トイレタリー、通信機器等幅広いクライアントのコミュニケーション戦略をはじめとしたプランニングを担当。

  • Ichikawa.Yoshifumi
    市川 祥史 Move Design Lab リサーチプランナー/ データアナリスト

    市場調査会社にて、企業のマーケティング課題の解決に従事。2017年jeki入社。コミュニケーションプランニング局配属。交通広告・キャンペーンの効果測定を中心に、クライアントの課題発見・解決を支援する。

  • koyama.moemi
    古山 萌美 Move Design Lab コミュニケーション・プランナー/デザイナー

    2016年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。商業施設の戦略提案他、食品、文房具メーカーなどのプランニングを担当。

  • 手塚 友哉
    手塚 友哉 Move Design Lab コミュニケーション・プランナー

    2017年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。主に移動者を中心とするメディアプランニングを担当。

  • 東出 夏海
    東出 夏海 Move Design Lab コミュニケーション・プランナー

    2018年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。 化粧品、トイレタリー他、通信機器などのプランニングを担当。

  • 宮本 守
    宮本 守 Move Design Lab メディアイノベーター

    1997年jeki入社。媒体局配属後、交通広告のプランニング、バイイングを担当。デジタルサイネージの広告表現手法の開発や効果測定にも携わる。現在は、交通媒体本部にて広告商品の企画・販売・運営に従事しつつ、デジタル連携など新たな取り組みにもチャレンジしている。

  • 阿礼松本
    松本 阿礼 Move Design Lab 駅消費アナリスト

    2009年jeki入社。プランニング局で駅の商業開発調査、営業局で駅ビルのコミュニケーションプランニングなどに従事した後、2015年より駅消費研究センターに所属。現在は、駅利用者を中心とした行動実態、インサイトに関する調査研究や、駅商業のコンセプト提案に取り組んでいる。