jeki のソーシャルビジネス開発局がお届けする「地域創生NOW」では、地域創生をテーマに様々な角度から情報を発信していきます。第1回目は独立行政法人中小企業基盤整備機構 経営支援部 チーフアドバイザーとして全国の中小企業・支援団体の支援活動に携わっている山本聖さんに、地域創生ビジネスに必要な考え方について寄稿いただきました。
地域共通の最大の課題は「人口減と少子高齢化」
私は日本各地で、商品・サービス等の「商活動」を通じた様々な地域創生プロジェクトにおける商品開発、販路開拓、プロジェクト全体の企画・コーディネート等のお手伝いをしています。具体的には、北は北海道から南は沖縄まで、各地の特産物や生産に関わる技術や観光資源等の「地域資源を活かした差異化商品・サービス等の開発」を通じて、「地域にお金の落ちる仕組みづくり」を応援しています。
そんな各地で一様に抱えている共通課題が、「人口減」であり、これは都市圏も例外ではなく、今後加速度的に進行していく「少子高齢化社会」を想定した地域創生ビジネスの構築が求められています。
地域創生ビジネスの究極の目的は「定住自立」の促進
では、「少子高齢化社会」に向けた地域創生ビジネスの根幹は何か?
地域創生ビジネスをプロジェクトとして進行していく際、商品・サービスの開発事業者だけではなく、プロジェクトに関わる全ての人々の共通の最終目的として認識すべきポイントが「地域住民を増やす」こと、言い換えると「定住自立の促進」をプロジェクトの究極の目的・ヴィジョンとして意識することであり、それを目指した全体設計の上に消費・サービスの開発や観光誘客の仕掛けを連動させる仕組みづくりが急務となっています。
目的達成に向けた消費者視点の3つのステップ「知りたい⇒行きたい⇒住みたい」
域内はもとより域外からの定住人口をいきなり増やすことは非常に難易度が高く、まずは域外からの誘客による交流人口(観光客)の増加を目指すステップが必要になります。
さらに、域外の誘客を図る前段階として、従来からの観光イベントに加えて、域外販売による外貨の獲得を担う地域商品・サービスに、地域の魅力を域外に伝えるための宣伝大使としての役割も担ってもらうステップを加えた、消費者視点の「知りたい⇒行きたい⇒住みたい」という3つのステップは、地域創生ビジネス構築における重要な視点として、ぜひとも認識してほしいところです。
- ・第1ステップ 地域を「知りたい」と思ってもらえる商品・サービスの提案
- ・第2ステップ 地域に「行きたい」と思ってもらえる域内観光ソフトの提案
- ・第3ステップ 地域に「住みたい(働きたい)」と思ってもらえる暮らしの提案
【「知りたい⇒行きたい⇒住みたい」ステップイメージ】
顧客(リピーター)を作るための「地域イメージのブランド化」
さらに消費者視点を踏み込んで考えると、目的達成のためにはその地域を「第二のふるさと」と呼んでもらえるくらいにもっともっと好きになってもらうことが重要。何度も来訪する「リピーター」の獲得が地域創生ビジネスにおける顧客づくりにおいて大切な視点といえます。
域外の人々にひとつの地域に何度も足を運んでもらうために、地域発の商品・サービスをブランド化すること、そしてその地域全体を共通のイメージでブランド化することにより、地域全体に波及効果を産み出し、再来訪を促す新たな商品・サービスが次々に産まれる循環を創造する「地域イメージの共有化による地域ブランドづくり」は、商品・サービスの開発において、ぜひとも考慮すべき視点といえます。
【地域イメージのブランド化イメージ】
地域創生ビジネスにおける最も重要な視点「団体戦思考」
前述した消費者視点の3ステップ「知りたい⇒行きたい⇒住みたい」及び「地域イメージの共有化による地域ブランドづくり」を実現するためには、単独企業では相当困難であることは容易に想像できます。地域創生ビジネスにおいては、地域内外で多数の企業・団体との連携が不可欠といえます。つまり、団体戦(チーム)づくりの視点が必要なのです。
チームづくりのイメージですが、
・チームA 共通のイメージでまとまる企業・団体で編成
・チームB ある程度域外に発信する力のある企業・団体で編成
・チームC 観光客をリピーター(顧客)化する、コト提案(観光・イベント等)
のように、それぞれ地域内の企業・団体の機能と役割を明確にしたチーム編成による「団体戦」視点が地域創生ビジネスの本懐であると私は考えています。
【地域内事業者連携による団体戦イメージ】
地域創生を果たすための地域ブランドづくりとチームづくり
地域創生ビジネスにおける重要な視点は「地域のブランド化」と「団体戦」に要約されます。ひとりひとりでは微力ですが、地域の人々を中心に、私のような域外の専門家も含めた関係者全員がこの視点を常に意識した、地域創生ビジネスモデルを日本全国に創造していくことを強く願っています。
田邉 敬詞 ソーシャルビジネス開発局 担当局長
1993年株式会社ジェイアール東日本企画入社。一般クライアント、JR東日本の広告営業、交通媒体など、様々な部署を経て、2016年にソーシャルビジネス開発局着任。主に中央省庁の案件を担当し、jekiソーシャルビジネスの事業拡大に向けたイノベーション事業を手掛ける。