中電不動産が描く「多世代共生」の新しいまちとは
―塚平克樹・城﨑直彦(中電不動産株式会社)×青木孝嗣・古田雄大 (株式会社ジェイアール東日本企画 中部支社)―

純喫茶メイエキby 中部支社 VOL.1

写真左より
中電不動産株式会社 まちづくり推進部 課長 城﨑 直彦 氏
中電不動産株式会社 まちづくり推進部 部長 塚平 克樹 氏
株式会社ジェイアール東日本企画 中部支社 営業部 青木 孝嗣
株式会社ジェイアール東日本企画 中部支社 営業部 古田 雄大

jeki中部支社がお送りする連載「純喫茶メイエキ」では、人とのつながりを育んできた名古屋の喫茶店文化を継承し、地元の名店で中部エリアのものづくり・仕組みづくり・場づくりなど、様々なビジネスを産み出すキーパーソンの力・情熱・想いを取材を通して汲み上げ、エリアの魅力として発信し、この地域のイノベーション創出に貢献していきたいと考えています。第一回のテーマは「付加価値創造型のまちづくり」です。

中部電力グループの不動産会社である中電不動産では、名古屋市瑞穂区と春日井市出川町の中部電力社宅跡地を活用した、新たなまちづくりを進行中。同社として初の大規模なプロジェクトです。
今回は地下鉄伏見駅近くの「珈琲処 カラス」で、中電不動産の塚平克樹氏、城﨑直彦氏と、jeki中部支社の青木孝嗣、古田雄大が、持続可能で多世代共生の社会実現に向けた取り組みについて語り合いました。

まちづくりは人づくり。地域力を上げる開発をめざす

青木:中電不動産はインフラを担う中部電力のグループ会社ということで、まちづくりにも地域社会に寄り添い、地域の暮らしをサポートしていくという姿勢を感じます。

城﨑:私たちはそれを「地域力推進支援型開発」と呼び、まちづくりは人づくり、あるいは地域づくりというコンセプトで進めています。

塚平:めざすのは、地域貢献につながるようなまちづくりです。まちづくりは、完成した後に地域全体でどのようにそのまちを育てていくかということが大切だと考えています。バブル時代に開発されたまちがその後ゴーストタウンになったり、急速にまちの高齢化が進んだことでテナントの収益が落ちて撤退したりという話も聞きます。そうならないよう、いろんな人に関わってもらい、循環するようなまちづくりが必要です。

城﨑:たとえば出川町の神領アパート跡(以下、神領)では、地域が望む施設について周辺にお住まいの方にアンケート調査を行いました。そして調査に基づき計画を立て、地元の方にまちへ参画いただく予定です。

車社会、堅実、地元志向。住まいのニーズにも表れ

青木:そのためには、ニーズの把握が大切ですね。今回の開発エリアである愛知県にも特有のニーズがあります。

城﨑:当社の開発対象地域は、愛知、岐阜、三重、静岡、長野の中部5県ですが、中部といっても、エリア特性は多岐にわたります。愛知県だけを考えても、三河と尾張では風土や慣習が異なります。

広く愛知県で考えると、まずは車社会が挙げられます。東京や大阪は世帯に対する駐車場配置率が2〜3割でもマンションは売れますが、名古屋では難しい。たとえ駅に近い物件でも駐車場配置率は高く設定する必要があります。

古田:マーケティングの視点で名古屋をとらえたとき、「堅実」で「本物志向」といわれることがありますが、その点はいかがですか。

城﨑:マンションを購入する場合にも、現物主義はあるかもしれません。しっかりとご自身の目で見たいと考えている方は多いです。加えて、賃貸よりも所有したいという意識が強いと感じます。

塚平:今回の瑞穂には最初、高齢者向けマンションを建てる計画がありました。東京や大阪ではニーズがあり、便利で快適に暮らせる場所であれば、地元を離れても移り住む傾向が見られます。

しかし不思議なことに現在、名古屋には高齢者にやさしいマンションはありますが、本当の意味での高齢者向けマンションはありません。「果たして便利であれば地元を離れるのか?」という点が名古屋では不透明なため、結果的に瑞穂のプロジェクトも高齢者にやさしいマンションに変更しました。

青木:愛知県は地元志向で、二世帯住宅など多世代が同居するケースも多い印象があります。

城﨑:多世代の同居率については、それほど他のエリアと差はないと思います。ただ、車社会という観点からいえば、特に三河地域では車通勤ができる環境が多いので、実家にそのまま住むということがありそうです。また、地元を離れない範囲でマンションを借りたり、戸建てを建てたりという話はよく聞きます。ここにも地元志向が表れているかもしれません。

古田:今回のプロジェクトが進む瑞穂エリアは、どんな特徴がありますか。

城﨑:名古屋市の中東部に位置する瑞穂区は、東西で雰囲気が異なります。今回の開発エリアはその中間にあたり、昔ながらの木造の低層住宅が立ち並んでいます。高齢化が進む一方、商業施設や公共交通機関から少し距離があるため困っている方が多いのではないでしょうか。

塚平:住宅が密集していて公園などの広場が少ない。そのため瑞穂のプロジェクトでは、災害時を考えた計画が欠かせませんでした。コモン広場の設置や、太陽光発電による電力の確保、災害時に炊き出しができる「かまどベンチ」、トイレ機能を確保する「マンホールトイレ」などを計画に盛り込んでいます。

また、スーパーマーケットはあるものの、大型のショッピングセンターはやや離れています。そのため、まちの中に商業施設を計画しました。

社会課題と住民に必要なものを見極め、行政協議を重ねる

青木:不動産開発において、特に重視している社会課題は何でしょうか。

塚平:都市開発における問題として、都市計画法に定める用途地域の制限の設定が、現状の地域住民の暮らしやニーズに合わなくなってきている点があります。広い土地であっても、搬入路が狭かったり、道路インフラが十分でなかったりする場合、法規制により開発は困難を極めます。

たとえば商業施設をつくるためには最低でも9m道路に接続するルールがあり、できない場合は住宅を主として開発しなければなりません。道路を拡幅すればいいのですが、それには大きな費用が必要となります。住民が商業施設や医療施設、広場などを求めても、法規制により開発が難しいという現状があるのです。

青木:今回のプロジェクトでも、立地条件と法律の制約はありましたか。

塚平:神領でも、施設を誘致するにあたり道路幅の問題がありました。途中の道を拡幅しようとしたのですが、行政の保有地であったため交渉がかなり大変でした。

さらにこの地域は、商業施設を建てるとしても500㎡以内の制限が設けられています。スーパーマーケットやドラッグストアなどの多くは出店基準が1,000㎡以上であり、出店交渉は難航しました。それでも「地域の皆様のために」の想いで、さまざまな企業に働きかけ、なんとか合意を得た経緯があります。

城﨑:瑞穂はもともと第一種住居地域として、床面積が3,000㎡を超える店舗や飲食店は建てられません。十分な大きさのショッピングセンターを確保するためには不十分です。
行政協議を重ねる過程で、「緑化率を20%以上にする」という条件も提示されたため、屋上緑化を盛り込むなどの工夫をし、ようやく4,500㎡まで広げることができました。

誰もが生きがいを感じられる、サステナブルな「多世代共生」

古田:2つのプロジェクトはともに「多世代共生」を掲げていますね。これは少子高齢化という社会課題を見据えたものでしょうか。

城﨑:瑞穂は幼い子どもからお年寄りまでが住めるよう設計されています。新婚のご夫婦が賃貸住宅から住み始め、次に分譲住宅へ移り、最終的には高齢者施設へ移るというライフサイクルも想定しています。

塚平:神領の場合、地域と一緒にこれからどのようにまちを管理しようか考えています。現在、エリア内に大学の施設を置き、まちの管理に学生が参加するよう提案しています。こうすることで人々の循環が生まれ、学生にとっても実践教育の「場」になると考えています。

青木:少子高齢化を課題としながら、「多世代共生」にはサステナブルの意味も込められているのですね。

塚平:確かに高齢化は問題で、どうしても高齢者の方々が孤立してしまう傾向があります。そのため、瑞穂も神領も広場や集会室のような場所で、さまざまな活動を行えるようにしました。

高齢者の方々はそこで学んだり、子どもたちに何かを教えたりすることが可能です。世代を超えた交流や学びの場を提供することで、高齢者の方々が新たな生きがいを見つけられるようなまちをめざしています。

青木:一方で多世代共生のためには、医療ニーズを満たすことも欠かせませんね。

城﨑:瑞穂の開発地区周辺にはいくつかの医療施設がありますが、小規模なものが多く点在しています。今回のプロジェクトでは、一つの施設に内科や、歯科、眼科、ペインクリニックなど、さまざまな診療科目が集約され、人々が各種の診療を受けることができる場所になる予定です。

塚平:もし大きな病気にかかられた場合でも、瑞穂からは最寄りの大学病院へ地下鉄やバスでアクセスできます。また、建設予定の高齢者にやさしいマンションでは、医療モールとマンションの住民を紐付けて、定期的な健康相談をするなど、健康増進につながるシステムをつくり上げたいと思っています。

一方の神領には、春日井市内に総合病院がありますが、高齢者が容易に移動できる交通手段が足りません。そのため、病院へのバスを誘致し、定期的に運行することも考えています。小さな病気であれば医療モールで診てもらい、何か問題があった場合にはバスで総合病院に行けるようにするという仕組みですね。

青木:最後に瑞穂と神領の未来像を教えていただけますか。

城﨑:私たちがサポートしながら、最終的にはまちが自立することが理想です。地域力が高まり、皆さんに愛されながら、いろいろな人々が交流できるまちに育っている状態ですね。

塚平:潜在する地域力の掘り起こしにつながることも、私たちがめざす開発の姿です。住んでいる人だけでなく、その周辺に住む人々も、まちの存在によって何か新しいものを見つけて、新たな生きがいややりがいを見つけることができればいいですね。

古田:まちびらきの予定は、瑞穂は2024年春、神領は秋ということで、今から楽しみです。本日はありがとうございました。

青木 孝嗣
株式会社ジェイアール東日本企画 中部支社 営業部
2018年jeki入社。ソーシャルビジネス開発局(現:ソーシャルビジネス・地域創生本部ソーシャルビジネスプロデュース局)に在籍し、主に中央省庁の震災復興・特許庁・米の消費拡大事業の案件に取り組む。2022年4月中部支社営業部に配属。

古田 雄大
株式会社ジェイアール東日本企画 中部支社 営業部
2020年jeki入社。中部支社営業部に在籍し、主に一般クライアントを担当。大手流通、機械メーカー、公共交通機関等の企業ブランディングや統合コミュニケーションなど幅広い領域での経験を持つ。

塚平 克樹
中電不動産株式会社 まちづくり推進部 部長
1964年長野県生まれ。中部電力株式会社に入社し、主に本店の経理部予算部門と広報部門に在籍。広報部門時代にはテレビCMなどの制作部署を担当。2021年にグループ会社である中電不動産株式会社に転籍し、中部電力が保有していた複数の大規模社宅跡地を再開発する「まちづくり」部門に配属。まちづくりでは、生活インフラを支える中部電力のグループ会社“らしい”地域と向き合う開発をめざす。

城﨑 直彦
中電不動産株式会社 まちづくり推進部 課長
1971年愛知県生まれ。1989年株式会社永楽開発(現:中電不動産株式会社)に入社。中部電力株式会社の委託を受け送電線工事に関わる用地業務に従事。1997年に「住宅事業」部門に配属され不動産仲介業や分譲マンション事業を行う。2021年に「まちづくり」部門に配属され多世代共生型の再開発に取り組む。

<取材協力>珈琲処 カラス

名古屋市中区・伏見にあるレトロな喫茶店。レンガ調の建物にぼんやりとランプシェードが灯り、古時計や革張りのソファなど、アンティークに囲まれた古き良き昭和の雰囲気が色濃く残ります。名物は食パンにあんこと生クリームをサンドした「あんトースト」。コーヒーのほろ苦さとあんこの濃厚な甘さの組み合わせに、思わず笑みがこぼれます。
HP:https://www.instagram.com/karas_u1988/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D

純喫茶メイエキby 中部支社

jeki中部支社が、中部エリアのキーパーソンの知見をうかがい、共創の未来を探っていきます。

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