スポーツとのコラボで互いの課題を解決する「強小カンパニー」赤城乳業の戦略
岡本秀幸氏(赤城乳業)×横山勉(ジェイアール東日本企画)

岡本秀幸氏、横山勉
写真右:赤城乳業 営業本部 マーケティング部 係長 岡本秀幸氏
写真左:ジェイアール東日本企画 第2営業局第1部 部長代理 横山勉

小さくとも強みを持つ「強小カンパニー」を標榜する赤城乳業。主力商品のひとつ「ガリガリ君」は、期間限定フレーバーを発売するたびに話題を集めてきた。1978年に誕生した「BLACK」は「ガリガリ君」よりも長い歴史を持つロングセラー商品だ。昨年の誕生40周年キャンペーンに引き続き、今年はラグビーのニュージーランド代表「オールブラックス」とのコラボレーションを実施する。

発売から41年 ロングセラーでリピーターも多い「BLACK」

横山:赤城乳業では、マーケティング部の歴史は比較的浅いと聞いています。

岡本:当社にはロングセラー商品がたくさんありますが、それをブランドとして生かしきれていないという課題がありました。営業担当が個別にキャンペーンを仕掛けることなどはあったのですが、それでは部分最適の施策になり社内でも不都合が生まれてしまいます。そこで、2004年にマーケティング担当を置くことになったのです。のちにマーケティング室という組織になり、2013年からはマーケティング部として活動しています。
 マーケティング部は商品企画から営業まで、幅広く関わっています。特徴的なところで言うと、PRもマーケティング部で担当。ですからキャンペーンを打つ前段階、プレスリリースを出すところから戦略的にプロモーションを考えています。
 マーケティング部が最初に注力した商品は、「ガリガリ君」でした。会社の軸となるブランドですし、マーケティング担当を置いた2004年当時、そのブランド力が生かされていないと感じていたからです。その取り組みを「ガツン、とみかん」「BLACK」と広げてきた感じです。


横山:「ガリガリ君リッチ コーンポタージュ味」をはじめとする商品開発やプロモーションなど、独自性の高い施策はマーケティング部ができたから、生まれたものなのでしょうか。

岡本:必ずしもそういうわけではありません。当社では「異端であれ」という企業精神を掲げていて、「強小カンパニー」を標榜するように、大手企業が多く存在するアイスの市場で、常に他社と同じ土俵で戦うのではなく、独自性を意識した戦略をとってきました。これは部署の有無に関わらず創業者の時代から受け継がれている精神だと思います。

横山:「BLACK」は「ガリガリ君」よりも長い歴史を持つ商品です。なぜ今、「BLACK」にフォーカスしているのでしょうか。

岡本:「BLACK」の誕生は1978年で今年41年目を迎えます。ロングセラーなこともあり、非常にリピート顧客の多い商品です。「BLACK」もチョコレート味ながらもさっぱりしたあと味で比較的ユーザーの年齢層は高めになっています。
 スーパーやコンビニはリピート率を重視していることもあり、ブランド強化の意味も含め2013年にテレビCMを放映しました。これが「BLACK」に力を入れ始めた最初の施策です。しりあがり寿さんがデザインしたキャラクターがラッキィ池田さんの振り付けで踊るアニメーションが好評で、ギャラクシー賞やACC賞シルバー/ブロンズなどの広告賞も受賞しました。
 それ以降は定期的にキャンペーンを行っています。以前はブランド全体の売上規模が10億円程度で、東日本を中心に認知度も高かったのですが、それを全国に拡大しようと考えました。まずは関西をターゲットにプロモーションをしたのが2013年の施策でした。
さらに昨年は40周年と言うこともあり、ブランドとしても久々に大規模に展開しました。既存のファンの方々への感謝を表現するために、ブランドのオリジナルグッズが当たるプレゼントなど、「らしさ」を感じてもらえるものになったと思います。新規顧客の獲得という点では課題もありましたが、リピート率は高く、一定の成果があったと考えています。

ラグビーワールドカップで「BLACK」と「ガリガリ君」の対決も

横山:今回のラグビーニュージーランド代表、オールブラックスとのコラボレーションはどういった経緯で実現したのでしょうか。


岡本:「ガリガリ君」も含め、コラボレーション企画は数多く実施してきました。そうした経験から、ライセンスの世界は非常に狭いと感じていて、キャラクターやスポーツなど、15年近くやっていると、だいたいのところとは接点がある。
 今回はラグビーとのコラボレーションですが、元は2010年のサッカーのFIFAワールドカップ南アフリカ大会のときにサッカー日本代表「SAMURAI BLUE」とのコラボレーションで成功した経験が背景にあります。このとき期間限定で発売した「ガリガリ君ソーダ SAMURAI BLUE」は、日本代表の活躍に猛暑も重なって販売を伸ばし、生産が追いつかないという状況も生まれました。
 スポーツとのコラボレーションは、私たちの商品が売れるだけではなく、互いの課題を解決することにもつながります。サッカーの場合はコアなファン層が30代〜50代男性で、より広い世代に性別を問わず応援してもらいたいという意向がありました。コラボによって私たちのファンと融合することで、お互いに間口を広げることができたと感じています。
 オールブラックスについても、ラグビーやオールブラックスと接点のない人に「BLACK」を通じてラグビーワールドカップ2019日本大会やオールブラックスを認知してもらうきっかけになると考えています。私たちとしても、リピート率は高いものの、高齢のユーザーが中心となっている「BLACK」の購買層を広げることを期待しています。
 私たちの調査では「BLACK」を買っている人よりもオールブラックスを知っている人の方が10倍近く多いことがわかっているので、今回のコラボで「BLACK」を知ってもらうことを狙っています。「BLACK」のリピート率は「ガリガリ君」以上とポテンシャルのある商品なので、期待しています。
 パッケージについては、かっこいい雰囲気になるようデザインを工夫しました。オールブラックスのイメージは、彼らの象徴でもある「シルバー・ファーン」やプレーヤーのシルエットで表現しています。デザイナーからは「食品なのに真っ黒なのはどうなのか」と言われましたが、商品とオールブラックスのカラーを訴求することを重視しました。

横山:今回のコラボを進める上で、ハードルになったことはありますか。

岡本:相手とのコミュニケーションが基本的に英語だったので、意思疎通の面で苦労はしました。また、パッケージのデザインなど、監修や確認は広告会社を挟みながら、海外とのやりとりになるので、時間的な問題もありました。生産は自社工場に加えて、OEMも含まれているので生産計画に合わせるために社内外の協力を得ながら進めました。


横山:「ガリガリ君」も日本ラグビー協会とのコラボ商品が出ています。以前はサッカー協会とのコラボの実績もありますが、スポーツとの取り組みに可能性を感じているのでしょうか。

岡本:ハマったときの爆発力、その可能性は大きいですね。私たちのビジネスは夏が暑いと勝ち、そうでなければ負けというゼロか100かの世界なので、スポーツの勝敗に通じるものがあるのではないかと思っています。
 ワールドカップなどの大きなイベントでは、流通も店頭に関連した売り場をつくりたいと思うでしょうし、そこで貢献できる商品があれば営業面でも意味はあります。
 今回、実はオールブラックスがグループBを1位でノックアウトラウンドに進み、日本代表が同じくグループAを2位で勝ち進むとオールブラックス対日本代表の対戦になります。そこで大会期間中に「BLACK」と「ガリガリ君」で売り上げの面でも山をつくることができればとも考えています。


横山:まさにアイスの需要期の夏を迎えます。「BLACK」ブランド以外も含めての取り組みについて教えてください。

あえての拡散は狙わない、あざとさはお客さまに見抜かれる

岡本:希望小売価格が70円のアイスは「BLACK」と「ガリガリ君」くらいで競合商品は多くありません。夏の販売が中心の「ガリガリ君」と異なり、「BLACK」はアイスキャンデーで通年食べてもらえるものと考えています。そこで抹茶やミント、ストロベリーなどのラインナップを広げて喫食機会を増やすことを狙いました。昨シーズンは一定の成果があったと見ています。
 「ガリガリ君」では日本コカ・コーラとのコラボレーションで炭酸水と合わせるような従来とは異なる食シーンの提案を行いました。昨年、消費者調査をしたところライトユーザーはパッケージに描かれている「ガリガリ君」のキャラクターが恥ずかしいという意見がありました。そこで高価格帯の「大人」シリーズではパッケージで「ガリガリ君」を小さくしたところ、ソーダ味を買っていない人の購入が伸びたので、うまくいっていると考えています。
 今年の4月に発売した「大人なガリガリ君ゴールデンパイン」は非常に好調で、現在販売中の「ガリガリ君 梨」は夏の風物詩的に人気もあるので、新たに大人なシリーズにもラインナップに加えて、間口を広げることにつながればと思っています。

横山:「コーンポタージュ」などはソーシャルメディアによる販売拡大効果もあったと思います。拡散しやすい商品開発や発信の手法などは意識しているのでしょうか。

岡本:基本的には意識していません。これまでの拡散もお客さまが自発的に、自然発生的に起こったものです。たまたまソーシャルメディアと親和性があるだけだと考えています。むしろ私たちがそこを狙って何かをすると、あざとさがお客さまに見抜かれてしまうのではないでしょうか。

横山:「BLACK」のコラボは比較的珍しいと思います。今後もコラボは定期的に行われるのでしょうか。また、少子高齢化が進み、人口減少フェーズに入ることは多くの企業にとって課題となっています。赤城乳業さんとしての展望はいかがでしょうか。

岡本:もちろん効果の検証は必要ですが、今回のコラボで成果が認められれば継続することになると思います。「BLACK」自体には伸び代があると考えているので、成長力に期待しています。
また会社としては、海外展開による販売拡大を進めています。国内の人口が増えないのであれば、国外に市場を求めていくことが非常に重要になるからです。
 現在はタイのバンコクを中心に販売しています。2016年に現地法人を立ち上げ、これからというところです。タイでも、現在Jリーグのコンサドーレ札幌に所属しているチャナティップ選手とのタイアップで認知獲得を目指しています。タイを足がかりに、東南アジア圏で軸をつくりたいと考えています。


【対談を終えて】

 「あそびましょ。」これは赤城乳業さんの企業スローガンです。
 社員のみなさま一人ひとりが、真剣に“遊び心”を追求し、同じマインドを持つことで、商品作りから販売戦略まで一気通貫し、「ガリガリ君」や「BLACK」のような強いブランドが、築き上げられているのだと思いました。
 高価格帯のアイスや定番ブランドが多いアイス市場の中で、「BLACK」は、70円という価格設定やネーミングなど商品全体にしっかりと「あそびましょ。」が入っており、更にプロモーションにおいても、ラグビーワールドカップを勝ち上がると、日本代表とコラボした「ガリガリ君」と対戦するかも!?というコネタの設定も、全ては真剣な“遊び心”から生まれ、ファンの獲得ができているのでは、と感じました。
私も、今回の夢の対決を期待しつつ、赤城乳業さんの「あそびましょ。」がつまった新商品やプロモーションを楽しみにしています。

jeki × 宣伝会議 共同取材シリーズ

昨今の市場環境やコミュニケーション環境の変化のなか、成長を遂げる・ヒットを生むその底流には何があるのか。その一端を探るべく、jekiは宣伝会議マーケティング研究室と一緒に、ヒットコンテンツ・躍進企業のキーマンの意識に流れる「顧客視点・顧客志向」を紐解いていきます。

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  • 横山 勉
    横山 勉 第2営業局第1部 部長代理

    2017年jeki入社。 食品・家電をはじめとする各種メーカー、金融、教育関連などを経験。 PR、CM、プロモーションなど幅広く業務に携わる。