いよいよ新館オープン!「てっぱく」の新たなチャレンジ!鉄道博物館の過去、現在、未来。(後編) 鉄道博物館館長 宮城利久氏×筑波伸夫(ジェイアール東日本企画)

▲写真左より、鉄道博物館館長 宮城利久氏、ジェイアール東日本企画 筑波伸夫

鉄道博物館がテーマの対談、後編は、新館だけではない、新しくなった展示物やサービス、そして鉄道ファンと鉄道愛を共有する場所としての鉄道博物館について。前編に続き鉄道博物館館長である宮城利久氏と、元大宮駅長でありジェイアール東日本企画常務取締役の筑波伸夫の対談でお届けします。

筑波
さて、鉄道博物館は昨年1年をかけての大幅リニューアルを進め、新館オープンがいよいよ今週に迫っています。この大がかりなリニューアルはどういった経緯で?

▲新館1階には400系新幹線とE5系新幹線(モックアップ)を展示

宮城
2017年は開館10周年で、つまりJR発足30周年の節目にあたる年でもあるわけですよ。そういうことで2016年から順次計画を進めていました。1年かけて本館大幅リニューアルと新館建設に入ったわけですね。
開館初年である2007年の来場者は、半年間で100万人を超えました。翌年の2008年がピークで140万人、その後、毎年80万人前後のお客さまにご来館いただき、昨年3月に900万人を突破しました。その後から、より多くの皆さまにご利用いただける施設へということで本館のリニューアルを本格的にスタートしたわけです。
昨年4月にお子さまが遊べるスペースとして「キッズプラザ」を作り、科学的に鉄道の動く仕組みを紹介する施設も「科学ステーション」と名を変えて生まれ変わりました。それを皮切りに7月には「鉄道ジオラマ」をリニューアルオープン、あわせて「鉄道文化ギャラリー」と、2階に新たに「トレインレストラン日本食堂」を作りました。「トレインレストラン日本食堂」では、食堂車の雰囲気の中で、着席したままフルサービスでお食事を楽しんでいただけます。

筑波
鉄道ジオラマに関しては鉄道ファンの方々をはじめ関心が高いようで、皆さんから「ジオラマはすごい!」とおっしゃっていただけます。

▲観客席との仕切りガラスを撤去したことで、更に臨場感あふれるようになった鉄道ジオラマ

宮城
これについては、かなり力を入れました。前年の9月から約10カ月お休みをいただき、ゼロからジオラマを作り直したんです。展示の規模自体は従来とあまり変わらないんですが、一番大きく変わったのは、客席とジオラマの間のガラスの仕切りをなくしたこと。実際に模型の走行音も聞けますし、従来以上に臨場感を持って鉄道の走行をご覧いただけるようになっています。
また、このジオラマはエリアごとに「首都圏の通勤輸送」「都市間輸送」「新幹線」「ローカル線」といったコンセプトをもって作ってあります。新幹線エリアでいいますと、はやぶさとこまち、E5系とE6系が盛岡駅で行う自動分併の風景を再現していますが、これは人気があるので大型モニターでもお見せできるようにしてあります。
もうひとつ、ジオラマの中に2000体ものフィギュア(人の模型)があるのですが、その半分は、一般のお客さまが作られたものを飾っています。リニューアルのためのお休みの期間にご来場いただいた方に作っていただいたものです。ですから、ご自身で作ったフィギュアを探すのも楽しいと思いますよ。

筑波
車両ステーションも印象が変わりましたね。

▲鉄道博物館本館1階にある「車両ステーション」

宮城
「車両ステーション」は今年4月に大幅リニューアルをしました。当館では廃車になった歴史ある車両を静態保存しているので、よく言えば静かな空間でしたけれども、躍動感がなくて、あまり動きがない。そこを見直したいということで、映像系を取り入れリニューアルいたしました。従来は1日2回の転車台くらいしか動きのある展示がなかったのですが、お見せするものができた格好です。
映像系のポイントは4点ありまして、ひとつは壁面を大画面のパノラマシアターにして当館の展示車両を紹介したり、昔の蒸気機関車の検修風景や走行風景を流したりしています。2つ目は気動車の中でローカル線の雰囲気を楽しめるような車窓映像を流しています。3つ目は新幹線200系の前でARスコープ(拡張現実)の技術を使って、目の前の新幹線が動き出して雪の中を走破する情景を見られるようにしました。
そして4つ目は「ハニフ1形式客車」。元々は日本初の鉄道線を走った「デ963形式電車」で、後に客車に改造されました。これにプロジェクションマッピングを施し、昔の通勤風景を、四季を通じて映し出すような仕掛けです。
このほか、車両ステーションにはJR貨物の展示スペースがあるのですが、そこもリニューアルいたしました。コンテナを切ったようなかたちのところに展示物を配置し、見せ方を工夫しています。

筑波
そうしたリニューアルの集大成が、間近に迫った7月5日の新館オープンということですね。

▲新館1階「仕事ステーション」

宮城
車両ステーションの先に4階建ての新館が完成、展示面積は約1.3倍に広がりました。博物館といっても、ただ見ていただくだけでは印象に残りづらい。そこで新館の企画にあたっては「体験」に注力しました。
新館の誕生で、鉄道博物館は展示ゾーンを「ステーション」と名付け、新館には3つのステーションを設けました。

まず、鉄道の仕事を紹介するコーナーを「仕事ステーション」という形で新館の1階・2階に設けました。ここにはE5シミュレータをはじめ体験展示を新たに12台設置、さまざまなプログラムが体験できます。

▲新幹線の運転体験ができる「E5シミュレータ」

2つ目は「歴史ステーション」。これは鉄道についてもう少し細かく、社会的、技術的側面で、6つの時代に区切ってご紹介するというものです。明治前期、明治後期から大正、昭和前期、昭和中期、昭和後期、平成と、それぞれの時代ごとの鉄道への期待と、それに応えた当時の技術者たちの熱い思いを伝える、今までにない歴史展示を実現しました。

3つ目は未来をみんなで語ろうというコンセプトでつくった「未来ステーション」。ここでは自分のアバター(分身)を作ってアニメーションの中に入り込み、未来の鉄道について疑似体験することができます。来場者の皆さんが参加して、鉄道の未来を一緒につくりあげていくという、新しい試みです。

そして新館の4階には「ビューレストラン」と展望スペース「トレインテラス」を設けました。この「ビューレストラン」では、隣接する線路を走る新幹線を眺めながら食事が楽しめるので、鉄道ファンだけでなく幅広い層の方々にご満足いただけるのではないでしょうか。

筑波
ちょっと、さわりだけでも案内していただけますか。

▲実際の券売機、自動改札機がある仕事ステーションの「南てっぱく駅」

宮城
ここを「南てっぱく駅」としまして、券売機できっぷを発券していただき、自動改札機を抜けると各体験展示を楽しめるというふうにしました。新館の顔になる1階フロアには、E5系(モックアップ)と400系、2両の新幹線が展示してあります。この2両には実際に手で触れることができるんですよ。
仕事ステーションの真ん中には動く模型とマルチ映像で、鉄道を支えるそれぞれの仕事が連携し、24時間途切れることなく鉄道システムを支えていることがひと目でわかる仕組みになっています。奥へ行くと、指令、運行管理の仕事を体験することができるコーナー。
あとは、実際にお越しになっていただいてのお楽しみということで(笑)。

筑波
そうですね。お話を伺っているだけで、とても楽しみになってきました。鉄道に初めて出会ったときのワクワク感が思い出されるというか。新しく生まれ変わった鉄道博物館、一人でも多くの方に楽しんでいただけるといいですね。
今日はどうもありがとうございました。

話題の現場から

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  • 伸夫筑波
    筑波 伸夫 常務取締役営業本部副本部長・JR局長

    1955年生まれ。1981年日本国有鉄道入社。1987年よりJR東日本。
    2001年大宮支社営業部販売課長、2008年新潟支社営業部長、
    2011年本社営業部次長を経て、2013年から2015年まで大宮駅長を務める。
    2015年ジェイアール東日本企画取締役JR局長、2016年より現職。