【MDL総力取材】
『ラブライブ!サンシャイン!!』聖地巡礼フィールドワークから、聖地巡礼インサイトを考えてみた(前編)

私たちMOVE Design Lab(MDL)は、移動減少社会において芽生えつつある「新しい移動(MOVE)」の兆しをウォッチし、その可能性を探っています。 今回、私たちは新しい移動の一つの形である「聖地巡礼」に注目、そのリアルと巡礼者のインサイトを探るべく現地のフィールドワークを行いました。
潜入したのはアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の聖地・静岡県沼津市。ここでいま開催されている体験型ゲーム・イベント【リアル脱出ゲーム×ラブライブ!サンシャイン!!「孤島の水族館からの脱出」】およびその周辺スポットを観察し、聖地巡礼の実態に迫りました。

既にお気づきの通り、本記事における「聖地巡礼」は本来の宗教的な行為としての巡礼ではなく、アニメやドラマ、小説、ゲームなどのコンテンツの舞台あるいはゆかりの地に、ファンが実際に足を運ぶ行為のことを指します。こうした行為は以前からあるものの、昨今のコンテンツビジネスの興隆にネットの普及も後押しし、地方自治体を巻き込んだものが登場するなど大きな広がりを見せています。

そもそもなぜ私たちMDLが聖地巡礼MOVEに注目するのか。理由の一つとして聖地巡礼が個人の趣味に基づいた移動であることが挙げられます。というのも、移動しなくていい時代において、できればなくしたい必要悪の移動は今後減少する一方で、好きで移動する趣味系の移動は今後大きな可能性があると考えているからです。その背景にあるニーズやインサイトを探ることは、これからの移動を考える上で大きな意味があると考えています。

前置きが長くなりました。 今回、私たちが観察したスポットは静岡県沼津市を中心とする周辺一帯です。

はじめに「①沼津駅周辺」、次にイベント会場のある「②淡島」、さらに作品のメインの聖地である「③内浦エリア」を経て、伊豆箱根鉄道駿豆線「④伊豆長岡駅」へ。4つのスポットを巡りました(観察日は4月14日の土曜日、天気は曇り、時々小雨)。
前編である今回は「①沼津駅周辺」と「②淡島」についてレポートします。

【①沼津駅周辺 ~駅前はラブライブ!色に~】

東京から新幹線と在来線を乗り継いで1時間ほど。JR沼津駅に降り立ったとき、駅前で早速出迎えてくれたのはバスロータリーに停まる『ラブライブ!サンシャイン!!』のフルラッピングバスでした。

『ラブライブ!』は名前をきいたことがあるだけの私も、このバスを見て少し心揺さぶられたのは、爆発的人気で社会現象にもなった同作品の力であることは言うまでもありません。
『ラブライブ!サンシャイン!!』は、アイドルグループを結成する9人の女子高生の物語を描いた大ヒットアニメ『ラブライブ!』の第2弾にあたるもので、2015年のスタート以来、熱狂的なファンがいることで知られています。
そして、この『ラブライブ!サンシャイン!!』(以下、「ラブライブ!」と表記)の舞台がここ沼津。アニメの中では沼津に実在するスポットが所々に描かれています。

バスだけではありません。駅広告、コンビニの店頭、飲食店、バス停、そして駅前商店街のアーケードのフラッグ。視界に入るそこかしこにラブライブ!が見られます。それは沼津駅ジャックと言っても言い過ぎではないレベルです。沼津駅前がまるごとラブライブ!推しの状況に、完全にラブライブ!にロックオンされているような感覚を覚えました。
印象的だったのは、街をあげてラブライブ!を盛り上げていること。駅前にはラブライブ!のコンセプトカフェ、店のシャッターにもラブライブ!、所々にあるラブライブ!のスタンプのスポット、偶然入った居酒屋にはラブライブ!のポスターが飾られていました。街中がそれぞれのやり方でラブライブ!を推している様子は、地元出身のスポーツ選手や有名人を、街をあげて応援しているのに近いものを感じました。

駅前の商店街のアーケードには9名のメンバーのフラッグが並び、商店街を賑やかしています。
しばらく観察していると、フラッグを写真に収めている巡礼者を何名か見かけました。駅前から商店街の一帯がファンにとってのフォトスポットさながらの状況になっています。
私たちが観察したのが土曜の早朝だったため、人はまだまばらでしたが、このフラッグが商店街の流動を少なからず変えていることは間違いありません。 先ほどの写真を撮り終えた巡礼者がカフェでひと息ついていました。商店街にも少なからぬ良い影響を与えていることがうかがえます。

【②淡島 ~イベント参加者から読み解く巡礼者~】

沼津駅から南へ、満員のバスに揺られること30分ほど。【リアル脱出ゲーム×ラブライブ!サンシャイン!!「孤島の水族館からの脱出」】の会場のあわしまマリンパークに到着しました。
「リアル脱出ゲーム」は、株式会社SCRAPが企画・運営する人気の体験型ゲーム・イベント。さまざまな謎を解き明かし、リアルな場所から脱出を目指すこのイベントは全国のさまざまな場所で開催されています。そのリアル脱出ゲームと、ラブライブ!サンシャイン!!がコラボしたのが、【リアル脱出ゲーム×ラブライブ!サンシャイン!!「孤島の水族館からの脱出」】。あわしまマリンパークにて3月19日から6月3日の期間限定で開催されています。

私たちが到着した昼前には既に大勢の参加者で賑わっていました。私たちも専用の謎解きキットを手に、フェリーで淡島へ渡り、いざ謎解きにチャレンジ。同時にイベント参加者を観察しました。以下は主なファインディングスです。

1.メインは若い男性グループ
参加者の大部分は20代と思われる若い男性グループで占められていました。高校生、大学生あるいは若めの社会人が、2〜3名で参加している光景がよく見られました。
推しメンバーのシャツやバッグを身にまとう人もいれば、ぱっと見は分かりませんがキーホルダーなどをつけている人もいるなど、聖地巡礼のドレスコードは人それぞれのようです。

2.「ソロMOVER」も
わいわい謎解きをしているグループの一方で、存在感を放っていたのが一人で参加している“おひとり様”。
一人の謎解きは心細いのでは?と思いきや、真剣な表情で黙々と難問に挑んでいる姿が印象的でした。
私たちMDLではかねてより「ソロMOVE」(一人の時間を消費するための移動)に注目しており、MOVEを今後増やしていく上でソロMOVERへのケアが重要だと考えています。その点、この謎解きイベントは一人でも十分に楽しめる内容だと感じました。

3.カップル(?)
男女での参加もあちこちで見かけました。印象的だったのは、恋人や夫婦といったカップルではなく、付き合ってはいない友人関係と思しき男女の組み合わせが何組もいたことです。
彼らにとって「男女の友情は成立するか」という命題はとっくに時代遅れなのでしょう。趣味が同じであれば同性か異性かはそれほど関係がないようです。こうした感覚は男女の趣味が徐々に近づいていくことで自然と定着の向きが見られますが、ここにも新しい移動のヒントが眠っているように思います。

4.中年男性、外国人もちらほら
これはラブライブ!自体の特徴でもありますが、40、50代と思われる男性や、外国の方も何名か見かけました。特に外国の方は日本在住かどうかは確認できなかったものの、いずれにしてもここ沼津までよくたどり着いたなぁと思いました。聖地の磁力は国境をも超えるのでしょう。

5.グッズ売り場は大盛況
グッズ売り場はイベントのオリジナルグッズ(※一部会場限定)欲しさに長蛇の列ができていました。中には限定グッズ目当てにやって来たファンもいたようです。私たちが脱出を終えたころには既に多くのグッズがsold outになっている人気ぶりでした。
その場に行かないと手に入らない限定グッズは、MOVEを生み出す強力なトリガー。聖地巡礼MOVEの大きな動因としても機能しているようです。

6.自撮りよりモノ撮り
自らを撮影するというよりは、むしろポスターや船、あるいはイベントの造形物などの撮影に徹しているように見えました。
作品の物語と自分との線引きがそこにはあるように感じます。一般的な観光客に見られる思い出作りとは異なる、聖地巡礼特有のインサイトがあるのかもしれません。

 ファインディングスは以上です。
総括は後編に譲りますが、聖地にいる巡礼者は熱狂というよりはむしろ落ち着いてその場を楽しんでいる印象を受けました。もっとも、それは私たちの観察上の話であって、心の中では自分の愛するコンテンツの舞台にいる喜びを感じていたのではないか、と思います。そう思うのは、後編で紹介する「③内浦エリア」の巡礼者を見たからです。

さて、今回紹介した【リアル脱出ゲーム×ラブライブ!サンシャイン!!「孤島の水族館からの脱出」】は、ラブライブ!サンシャイン!!の知識がない私でも十分に楽しめる内容でした。
ラブライブ!ファンの方はもちろん、リアル脱出ゲームに興味のある方も、聖地での極上の謎解きをぜひお楽しみください。 ※イベントは6月3日まで。詳細は公式サイトまでhttp://realdgame.jp/lovelive_sunshine/

(後編へ続く)

「リアル脱出ゲーム」は株式会社SCRAPの登録商標です。
©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

Move Design Lab

Move Design Labは生活者の「移動行動」を探求し、”新しい移動“を創発していくことをミッションに始動したプロジェクトチーム。その取り組みをシリーズで紹介していきます。

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  • Gomei.Izumi
    五明 泉 Move Design Lab チーフプロデューサー/ Move Design Lab代表

    1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。

  • Nakazato.Eiyu
    中里 栄悠 Move Design Lab ストラテジック・プランナー/プロデューサー

    2004年jeki入社。営業局、駅消費研究センター、アカウントプロデュース局を経て、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。シニア・ストラテジック・プランナーとして、メーカー、サービス、小売など幅広い企業のコミュニケーション戦略立案に携わる。

  • 彦谷 牧子
    彦谷 牧子 Move Design Lab データアナリスト/ ストラテジック・プランナー

    リサーチ・コンサルティング会社を経て、2009年jeki入社。JR東日本保有データの分析・活用業務に従事した後、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。化粧品、トイレタリー、通信機器等幅広いクライアントのコミュニケーション戦略をはじめとしたプランニングを担当。

  • Ichikawa.Yoshifumi
    市川 祥史 Move Design Lab リサーチプランナー/ データアナリスト

    市場調査会社にて、企業のマーケティング課題の解決に従事。2017年jeki入社。コミュニケーションプランニング局配属。交通広告・キャンペーンの効果測定を中心に、クライアントの課題発見・解決を支援する。

  • koyama.moemi
    古山 萌美 Move Design Lab コミュニケーション・プランナー/デザイナー

    2016年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。商業施設の戦略提案他、食品、文房具メーカーなどのプランニングを担当。

  • 手塚 友哉
    手塚 友哉 Move Design Lab コミュニケーション・プランナー

    2017年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。主に移動者を中心とするメディアプランニングを担当。

  • 宮本 守
    宮本 守 Move Design Lab メディアイノベーター

    1997年jeki入社。媒体局配属後、交通広告のプランニング、バイイングを担当。デジタルサイネージの広告表現手法の開発や効果測定にも携わる。現在は、交通媒体本部にて広告商品の企画・販売・運営に従事しつつ、デジタル連携など新たな取り組みにもチャレンジしている。

  • 肇加藤
    加藤 肇 Move Design Lab 駅消費アナリスト/コンサルタント

    1999年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局で鉄道や商業施設関連のプランニングに従事した後、2009年より駅消費研究センター長。現在は、駅利用者を中心とした生活者のインサイトや消費行動の研究に取り組んでいる。

  • 阿礼松本
    松本 阿礼 Move Design Lab 駅消費アナリスト

    2009年jeki入社。プランニング局で駅の商業開発調査、営業局で駅ビルのコミュニケーションプランニングなどに従事した後、2015年より駅消費研究センターに所属。現在は、駅利用者を中心とした行動実態、インサイトに関する調査研究や、駅商業のコンセプト提案に取り組んでいる。