キーワードはパートナーシップ。官民連携で推進する田村市の地域経営とは。

田村市長 本田 仁一氏(中)
ジェイアール東日本企画 ソーシャルビジネス開発局 担当局長 田邉 敬詞(左)
ジェイアール東日本企画 ソーシャルビジネス開発局 與田 雅晴(右)

2018年3月21日、jekiは福島県田村市、(株)ワールドインテック福島、アカデミア・コンソーシアムふくしまとともに、総務省補助事業である「ふるさとテレワーク推進事業」の採択先となり、福島県田村市に福島県内ではじめて廃校であった小学校を利活用し、テレワークセンター「terrace ishimori(テラス石森)」を開設しました。

さらに、田村市とjekiは地域創生・地域活性化における「包括連携協定」を締結。
内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部が掲げる第一期総合戦略が2019年に最終年度を迎える中、今後の田村市の地域経営をどのように考えるのか。そして、『民間』との連携をどのように推進していくのか。jekiソーシャルビジネス開発局員が田村市長 本田 仁一氏に聞きました。

與田
まずは「田村市ってこんな市なんだ」ということから、お話しいただけますか。

本田
田村市は坂上田村麻呂の伝説に満ちあふれた場所です。
福島県の中通りに位置し、郡山市から30〜40分ですね。合併して13年目になりますが、合併時の人口は4万3,000人で、いまは3万8,000人を切るぐらいですから、5,000人減った。毎年500人ぐらい減っているということです。

田村市には「何もない」。これまで、そういう言われ方をしてきたし、市民のなかにもそういう思いがあるかも知れません。けれども、ない、ない、ない、と言っていても何も始まらないので、あるものを見つけ出して磨くしかないだろうと。まあ、新しいものがつくれれば、それはそれでいいのですが。

例えば、あぶくま洞という鍾乳洞があって、30〜40年ぐらい前、この鍾乳洞が見つかった頃は年間100万人の観光客に来ていただいてとても賑わっていました。ところが震災前までにその数は30万人に減って、震災があって数万人にまで減ってしまいました。いまは約20万人まで回復し、震災前の30万人が目標でいますけれど、なかなか難しいですね。鍾乳洞ですから開発されていないところもあるわけで、そこを新しく発掘しようということで、平成30年度はそういう準備もしたいと思っています。

国が旗をふる地方創生は全国に同じメニューを示すもので、制度として財源などを利用できる部分はありますが、結局は「田村市としてどういうことができるか」が重要だと考えています。

與田
人口が減少している中で、行政として課題があるかと思うのですが、田村市では行政の施策としてどういったところを推進していくのでしょうか。

本田
子育てや教育にしっかり力を入れていきます。「子育てをするなら、教育をするなら田村市がいい」。そう言っていただけるような環境をつくりたい、という思いでいます。

例えば、いま建物が古くなった市立保育所があり、待機児童が少し発生しているので、新たに建て替えないといけない。そこで、この機会に民間の保育事業者に来ていただくことを考えています。民間のサービス力で「今度できた保育所は、なかなか魅力があるね」と言われるような保育所にしていきたいのです。民間に託すことで、運営面で市の負担軽減にもつながります。

ただし、それを実現していくためには財源が必要です。行政がしっかりと新たな投資に向けられる余裕を持っていないとできない。そういう意味での大改革は財政基盤の安定化であり、新年度(平成30年度)の第一の仕事だなと感じています。

そのためには、まず職員が市の財政について問題意識を持つ必要があります。私が「こうしたい」と言っても職員が問題意識を共有していないと何も始まりません。ですから私は職員を対象に3回に分けて、田村市の財政について共有する機会を持ちました。今後も、なんでも課題は共有していこうと思っています。

與田
市長が自ら3回に分けて?

本田
財政課が説明したのですが、私がまず冒頭で「こんな状況です」と話をしました。

與田
それは素晴らしいですね!

本田
また、私が市長になってから、各課の職員20人と1時間半ぐらいずつ意見交換をやりました。そこで、みなさんが田村市のために、こういうことをやった方がいいと思ったらやっていいのだと話しました。それが職員の仕事なのだから、私の指示をいちいち待っている必要はないと。それで気さくに話せる市長だと感じてくれた職員も結構いるのではないでしょうか。そういうことは一通りやってきました。新年度からの人事異動もあったので、改めて今年度はどういう目標でやるかというところから始めたいと思いますけれど。

田邉
市長は今後の行政運営、地域経営において、民間の活用を非常に重要視されているのですね。

本田
相対的に見て、発想という点では、やはり専業でやっている民間の方々にはかなわないところがあります。ですから、そういうところでは積極的に民間の力を活用させていただきたいと考えています。

田邉
その意味においては我々も同じ考えでして、今回、総務省の補助事業としてテレワークセンター「terrace ishimori」を開設しました。

都市部と地方の接合点となるテレワーク拠点を整備することで、ICTやIoTを活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方(テレワーク)を市内で推進し、都市部から地方への仕事の流れを創りだし、子育てや介護のため従来の勤務形態では働くことが困難であった層の雇用創出や人材誘致、起業支援を行っていくわけですが、その他に市長がこの施設に期待する部分をお伺いできますか。

本田
施設の運営を担う一般社団法人Switchのみなさんは田村市出身の若い方々なので、彼らの新しい発想に期待しています。施設を起点として田村市でいろいろな仕事をやっている人たちを結びつけるビジネスマッチング的なコーディネートもしてもらえれば、魅力ある事業になっていくと思います。

たまたま昨日、田村市の農業について意見を出しあい行動することを目的につくった若手農業者団体のメンバーと懇談する機会がありました。いろいろ意見交換すると、彼らは農作物を作ることにはそれなりの技術をもっているのですが、やはり「売る」という感覚がやや足りないと感じました。売るためにはどうしたらいいかという経営的な視点、そして利益の追求、そうした感覚ですね。その点、Switchのみなさんはそういう感覚をもっていそうだなと。一度意見交換をしてみて、彼らが作ったものの販路をSwitchが見つけてくれるとか、そういう連携もあるんじゃないかと。

そういう意味で、運営のSwitchのほかに実際にテラス石森に入ってくれる企業もありますから、単にそこ(テラス石森)で働くということだけではなく、いろいろな産業や地域の魅力づくりの連携に繋がっていく、そういうテレワークセンターになってくれればいいと思います。市役所の職員も立ち寄って、お互いにやりとりをして、いいものにつくり上げていきたいし、市としても良い影響を受けたいと思っています。

田邉
私どもも引き続きいろいろと協力させていただきます。さて、先ほど少し触れましたけれど、先日、包括連携協定という形で、弊社と田村市さんとで締結させていただきました。今後、緊密に連携しながら共創・協働による取り組みを推進し、田村市の一層の活性化と市民サービスの向上等を図ることを目指しますが、弊社、またはJR東日本グループに期待されることをぜひお伺いできれば。

本田
JR東日本グループということで、こちらが期待しすぎているところもあります。JR東日本グループだから何かやってくれるんじゃないか、田村市のために何か考えてくれるぞ、というふうに。でも、そのような考え方ではなかなかうまくいかないと思っています。私たちからもいろいろな提案をさせていただいて、それに対するみなさんの反応を見て、また、みなさんからもご提案をいただいて、お互いが納得したものを実際に進めていきたいと思います。

これまで、こういう中山間地域は、やはり最初にお話ししたように何もないとか、どうしていいかわからないとか、それでずっと来てしまっているのではないでしょうか。これから田村市は「失敗を恐れるな、まずやれ」「やった結果、失敗してもそれは仕方がない」と、そういう役所にしていきたいと思っています。

田邉
こういう言い方は語弊があるかもしれませんが、我々は「よそ者」なので、逆に、「よそ者」だからこそ、田村市のよさを発見できると思っています。こちらの住民の方が当たり前だと思っている田村市の持ついろいろなモノ、コトも、我々にとってみれば魅力的なものに映ると思っています。

本田
本当に、よろしくお願いします。

対談を終えて
包括連携協定は、言葉を変えれば”地域経営パートナーシップ協定”であり、その名のとおり今後jekiは、田村市の地域経営の黒子となって支援および伴走をしていきたいと考えています。そのためには、市長の言葉にもあったとおり、どちらかが受け身の姿勢になるのではなく、両者がパートナーとして地域振興を推進していくことが重要だと感じます。

具体的に新年度からはテレワークセンター「terrace ishimori(テラス石森)」にて、都市部から企業誘致や創業起業の支援を行える体制を整え、地域産業を支える若者・女性等へ多様な働き方の機会が提供できるようにしていきたいと考えています。

地域の方々がやる気になればなるほど、弊社も真正面から課題解決に取り組み、問題から逃げずに完遂していかなければなりません。本当の意味でのパートナーシップはこのようにあるべきだと考えます。

(写真)柳沼 宏樹(スタジオ・カタソネ) ※「terrace ishimori」外観全景を除く

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日本各地で様々な地域創生プロジェクトが立ち上がっている昨今。
そのプロジェクトに携わっているエキスパートが、“NOW(今)”の地域創生に必要な視点を語ります。

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  • 田邉 敬詞

    営業本部 ソーシャルビジネス開発局 担当局長 兼 ソーシャルイノベーション室長
    1993年jeki入社。一般クライアント、JR東日本の広告営業、交通媒体など、様々な部署を経て、2016年にソーシャルビジネス開発局着任。主に中央省庁の案件を担当し、jekiソーシャルビジネスの事業拡大に向けたイノベーション事業を手掛ける。

  • 與田 雅晴

    営業本部 ソーシャルビジネス開発局 ソーシャルイノベーション室
    自身でソーシャルイノベーション領域の法人を設立し、様々な社会課題に取り組んだ後、2015年jeki入社。以来、行政事業における新分野の開拓、行政との協業・共創による地域課題の解決を行う。