若者のリアルから2018年の移動トレンドを占う、20代インタビューレポート(後編)

変わりゆく生活者の移動の実態を考察し、“新しい移動”について構想するプロジェクト、Move Design Lab(MDL)は、これからの“新しい移動(MOVE)”の兆しを捉えるべく、大学生6人に対するインタビューを実施しました。
前編では外出率の低下が顕在化している20代が、外出を控える理由と、外出のきっかけを聞いてみたところ、スマホがファーストプレイス化を進めると同時に、移動を生み出すトリガーにもなっていることがわかりました。後編では、スマホ以外に外出のきっかけになっているものを探りながら、これからの移動トレンドを考えてみます。


新しい移動(MOVE)の兆し

自分がこだわりがあったり、自分らしさが出ていると思う外出行動はありますか?

男性D ライブやフェスには一人で行きます。マイナーなバンドが好きなので、一人で行く方が楽しめます。誘った友達がそのバンドに興味がなかったら、気を使いますので。あとは、これも趣味の世界ですが、全国の競馬場に行きたいと思っていて、この前も大阪の競馬場に行きました。

好きな競馬はリアルで見たい?

男性D そうですね。生で見ると迫力が違いますね。

女性A 私はダイビングをやっていたこともあって、一年中海に行きます。旅行も海のある場所に行きますし、落ち込んだらどうしても海を見たくなって一人で行ったこともありますね。あとは、旅行ではありませんが、古着屋めぐりやアンティーク展にも一人で出かけます。好きなので。

女性B 一人で海外旅行も行けます。気分転換になりますから。

一人でいることに精神的苦痛は感じない?

女性A 苦痛は感じないです。

男性C 僕は休みがあったらキャンプに行きたいですね。一人でもいいですし、友達とでもいいです。自転車で旅をしていたときは、部活の仲間とキャンプで過ごしていたんですよ。ここ2年間も、年越しは寒い山でキャンプをして、日の出を見てきました。誰もやらないことをやっていこうと。

女性E 私はフィンランドが好きで、フェイスブックでグループを探して、コンタクトをとって一緒に行きました。

ネットで知り合って、旅行に行くの?

女性E メールで何度かやりとりをして、大丈夫な人とわかってから、複数の人とオフ会をして会いました。それで人間関係も広がって、一緒に旅行に行って、いまも続いていますね。

そういう人たちと会うときは怖くなかった?

女性E 怖いです。そのときは18歳だったので。でも怖い気持ちよりも、フィンランドが好きな気持ちが勝ちました。

皆さんは一人でディズニーランドに行きますか?

全員 行かないです。

女性A でもディズニーが好きな人は、一人で行っています。

一人で焼き肉は?

男性C 行ったことないです。

女性A 行こうと思えば行けるけど、行ったことない。

一人カラオケは?

全員 行ったことあります。よく行きます。

カラオケに一人で行くのは割と普通なんですね。趣味とか自分のこだわりがあるものは、やはり実際に行って、体験したいと思うんですね。皆さんのこだわりに、移動が紐付いているという感じでしょうか。では、ここ最近で、外出に絡んで流行ったもの、例えばお店やスポット、アプリ等はありますか?

男性D 「ポケモンGO」をものすごくやっていました。いまはやっていません。

女性F 流れに乗ってダウンロードしました。「ポケモンGO」はユーザーがすごくアクティブになりますよね。ゲームが大好きなサークルの先輩が、家から全く出ないような人だったのに、「ポケモンGO」にはまった瞬間、すごく外出するようになって驚きました。

女性E リアルとバーチャルといえば、私は入っていませんが、バイト先の仲間がグループを作って、ソーシャルゲームをしています。バイトが終わったあと、家でソーシャルゲームをしながらゲームの中で会話しているんですね。休日もそうです。それでバイトに来ると、また前日の対戦について話して盛り上がって、家に帰ったらまた一緒にゲームをするんです(笑)。

男性C 僕は「君の名は。」の糸守湖のモデルになった諏訪湖を見に行きました。湖を見渡せる丘の上の公園から見ると、映画で描かれた景色でした。

女性E 私はスタジオジブリの映画「耳をすませば」の舞台になった、聖蹟桜ヶ丘に行きました。

聖地に行くのは、写真を撮るのが目的ですか?

女性E 写真も撮りますけど、写真を撮るために行くわけではないんですよ。うまく言えませんけど、「わあ、来た」という感動を求めてというか。そこに行くことが目的ですね。

写真を撮って、Instagramにアップしない?

女性E いまは旅行をしてもアップしないですね。昔は頻繁にアップしていましたけど。

Instagramの更新頻度は以前に比べて減っていますか?

女性F 最近はあまり更新しませんね。毎日コンスタントに更新している子も結構いますが、最近は投稿するというより、24時間で消えるストーリーに写真をとりあえずアップする子が多い気がします。

女性E その場で楽しまなきゃ駄目だよねという風潮がだんだん出てきています。Instagramのためだけに来て、写真を撮る人がいると、冷ややかな空気になる感じが周りにはありますね。

女性F フォトジェニックという言葉もネタになっていますね。全然それらしくないところで「めっちゃフォトジェニックだわー」と言って写真を撮るとか。

SNS自体を以前ほどやらなくなっている?

女性B Twitterはすごく見ますし、呟きますけど、やっぱり人と会いたいですね。会って喋りたいです。

ネットでやりとりするのと、実際に会ってお喋りするのは、違いますか?

女性B 基本的にいつもネットで喋っていますけど、Twitterで話していたら電話します。それで盛り上がったら「今度会おう」となります。

ネット上で話す内容と、実際に会って話す内容は違いますか?

女性B 違いますね。TwitterやLINEで話せないディープなことは、直接会って話します。

男性C 僕はSNSはやりません。僕は寂しがり屋ですけど、SNSをやればやるほど寂しくなる気がします。SNSでつながるよりは、人に会う場面を作りたいです。人に会うためなら、交通費は気にならないですね。

インターネットやSNSが浸透したことで、逆にリアルな体験やコミュニケーションを求めて行動する気持ちが生まれている面もあるんですね。2018年の移動のキーワードは、「趣味」、「リアルとバーチャルの融合」、「リアル回帰」といったところでしょうか。
皆さん、いろいろとお話を聞かせていただき、ありがとうございました。



編集後記

インタビューをしてみて、改めてインターネットやSNS、そしてスマートフォンの普及が移動に与える影響の強さを感じました。ファーストプレイス化を進行させて移動の脅威となるスマホは、若者において移動を生み出す契機となっています。

スマホ一つで得られる情報が急激に増加している一方で、だからこそ、リアルの価値が高まっている流れも感じました。

MDLでは、これからの移動のトレンドとして、二つの“新しい移動(MOVE)”に着目しました。

一つは、自分の趣味に関連して積極的に一人で出かける外出行動です。インタビューでは、趣味の領域は人によって多種多様であり、周りに一切気兼ねせずに自分の趣味を満喫できる一人での外出にとても積極的であること、また、移動に対して高いコスパ意識を持っている一方で、自分の趣味の領域に関してはその意識がかなり薄れることがわかりました。

もう一つは、インドアで楽しまれていたコンテンツがアウトドアで新たな楽しみ方をされている動きです。「ポケモンGO」の大ヒットやアニメや映画などの聖地巡礼の定着から顕在化してきているこの動きは、家に引きこもりがちになっている若者さえもアクティブにさせる強さのあるもののようです。

いずれも、テクノロジーの進歩とSNS疲れも含んだリアルな価値の再認識の流れから、今後さらに活発になってくるMOVEだと認識しています。

・・・と編集後記を綴ったところ、社内の20代前半のメンバーから、「え?どこが新しいんですか!?別に普通の行動ですよね??」と言われてしまいました。彼曰く、「人と違う趣味を持つことが許容されるようになったり、その趣味がフックになっている一人外出や聖地巡礼は、自分たちよりも数年上の世代が作ってきたもので、自分にとっては“新しい”という感覚が持てない」ということでした。

時代の変化にいち早く気がつき、無理することなくその変化を受け入れて、トレンドを牽引していくのは、いまも若者であり、彼らの間で最近「普通」になったことは、これから社会全体の「普通」になっていくのだと思います。

MDLでは今後、若者の移動行動にまつわるリアルを継続的に押さえつつ、MOVEの現場を実際にウォッチするなど定性的なアプローチからも、新たな移動および移動体験の創出につながる活動をしていきたいと思います。

Move Design Lab

Move Design Lab

Move Design Labは生活者の「移動行動」を探求し、”新しい移動“を創発していくことをミッションに始動したプロジェクトチーム。その取り組みをシリーズで紹介していきます。

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  • 五明 泉

    Move Design Lab チーフプロデューサー/ Move Design Lab代表
    1991年jeki入社。営業局配属後、通信、精密機器、加工食品、菓子のAEを歴任、「ポケットモンスター」アニメ化プロジェクトにも参画。2014年営業局長を経て2016年よりコミュニケーション・プランニング局長。

  • 中里 栄悠

    Move Design Lab ストラテジック・プランナー/プロデューサー
    2004年jeki入社。営業局、駅消費研究センター、アカウントプロデュース局を経て、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。シニア・ストラテジック・プランナーとして、メーカー、サービス、小売など幅広い企業のコミュニケーション戦略立案に携わる。

  • 彦谷 牧子

    Move Design Lab データアナリスト/ ストラテジック・プランナー
    リサーチ・コンサルティング会社を経て、2009年jeki入社。JR東日本保有データの分析・活用業務に従事した後、2014年よりコミュニケーション・プランニング局に所属。化粧品、トイレタリー、通信機器等幅広いクライアントのコミュニケーション戦略をはじめとしたプランニングを担当。

  • 市川 祥史

    Move Design Lab リサーチプランナー/ データアナリスト
    市場調査会社にて、企業のマーケティング課題の解決に従事。2017年jeki入社。コミュニケーションプランニング局配属。交通広告・キャンペーンの効果測定を中心に、クライアントの課題発見・解決を支援する。

  • 古山 萌美

    Move Design Lab コミュニケーション・プランナー/デザイナー
    2016年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。商業施設の戦略提案他、食品、文房具メーカーなどのプランニングを担当。

  • 手塚 友哉

    Move Design Lab コミュニケーション・プランナー
    2017年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局に配属。主に移動者を中心とするメディアプランニングを担当。

  • 宮本 守

    Move Design Lab メディアイノベーター
    1997年jeki入社。媒体局配属後、交通広告のプランニング、バイイングを担当。デジタルサイネージの広告表現手法の開発や効果測定にも携わる。現在は、交通媒体本部にて広告商品の企画・販売・運営に従事しつつ、デジタル連携など新たな取り組みにもチャレンジしている。

  • 加藤 肇

    Move Design Lab 駅消費アナリスト/コンサルタント
    1999年jeki入社。コミュニケーション・プランニング局で鉄道や商業施設関連のプランニングに従事した後、2009年より駅消費研究センター長。現在は、駅利用者を中心とした生活者のインサイトや消費行動の研究に取り組んでいる。

  • 松本 阿礼

    Move Design Lab 駅消費アナリスト
    2009年jeki入社。プランニング局で駅の商業開発調査、営業局で駅ビルのコミュニケーションプランニングなどに従事した後、2015年より駅消費研究センターに所属。現在は、駅利用者を中心とした行動実態、インサイトに関する調査研究や、駅商業のコンセプト提案に取り組んでいる。